ノンテクニカルサマリー

特定技能外国人雇用の客観的効果と主観的評価

執筆者 橋本 由紀(上席研究員(政策エコノミスト))
研究プロジェクト 総合的EBPM研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

政策評価プログラム(第六期:2024〜2028年度)
「総合的EBPM研究」プロジェクト

人口減少が進む日本では、外国人労働者が不可欠な労働力として定着しつつあり、その就労実態や影響への関心が高まっている。本研究では、特定技能外国人を雇用する製造業事業所へのアンケート調査と、「法人企業統計調査」および「賃金構造基本統計調査」を用いて、外国人雇用事業所・企業の特徴を3つの観点から分析した。

第一の分析では、外国人雇用企業を「特定技能外国人・技能実習生のみ雇用企業」、「高技能人材のみ雇用企業」、両者を雇用する「併用企業」の3類型に分け、外国人を雇用しない企業と労働生産性や賃金率などを比較した。その結果、特定技能外国人や技能実習生は、労働分配率が高く、労働生産性(一人当付加価値額)や日本人従業員の賃金が低い企業に雇用される傾向がみられた(図1)。

第二の分析では、イベントスタディの手法を用いて、特定技能外国人や技能実習生を雇用した企業について雇用後の変化を検証した。分析の結果、一人当たり賃金は低下したものの、売上高、労働分配率、一人当たり付加価値額(労働生産性)の変化には、外国人を雇用しない企業との有意な差はみられなかった(図2)。

両分析の結果は、特定技能外国人や技能実習生の雇用が、企業内での日本人と外国人の分離(segregation)よりも、低賃金・労働集約的な企業への集中(sorting)によって特徴づけられることを示している。すなわち、外国人雇用企業の相対的な低生産性は、外国人雇用の結果ではなく、雇用前からの企業間の差を反映していると考えられる。また、企業内では、従来日本人が従事していた職務の一部を外国人が担うようになり、労働者構成を変えつつ売上高や生産性を維持していたことがうかがえる。

第三の分析では、特定技能外国人の人的資源管理(HRM)と、事業所の満足度などの主観的評価との関係を検討した。受入れルートによって事業所を3グループ(自社での技能実習修了人材のみを雇用する「自社育成グループ」、転職者か評価試験合格者のみを雇用する「他グループ」、自社育成人材と転職・試験合格者をともに雇用する「併用グループ」)に分類し、技能実習生から継続して雇用する自社育成グループと他の2グループについて、外国人雇用への満足度や、日本人と同等以上の活躍などの受入れ効果を比較した。

分析の結果、人材育成を重視する自社育成グループでは、正社員に近いキャリアパスや処遇を提供し、事業者の満足度も高かった。一方、人手不足の解消を重視する他グループでは、日本語学習や生活支援、昇給が限定的で、職務限定的な非正規労働者に近い活用がみられた。両者の中間に位置する併用グループでは、技能実習修了者の転職の多さに対応して支援を拡充する一方、人材育成に最も苦慮し、満足度も低かった。

現在の特定技能制度では、受入れルートによる人材育成の差は想定されていない。だが、本研究の結果は、労働力確保を重視する受入れが拡大し、育成就労制度を経ずに転職者や試験合格者を採用する企業が増えれば、制度が想定する育成機能が十分に発揮されない懸念を含意する。また、育成企業が費用に見合う便益を得られず育成投資を縮小すれば、技能形成が過少となり、労働市場全体の技能水準を押し下げかねない。こうした受入れルート間の支援・育成の差を踏まえた制度設計も重要と考えられる。

近年、日本の社会生活を支えるエッセンシャルワーカーとして働く外国人労働者も増えている。日本人の労働力人口が減少するなか、外国人労働への企業の需要の高まりは、当面続くと考えられる。人手不足に対応するための受入れの必要性があるとはいえ、特定技能外国人や技能実習生を雇用する企業や事業所では、日本人の賃金も相対的に低い。労働需給の基本的なモデルが示すように、外国人受入れの拡大による労働供給制約の緩和は、賃上げを抑制する方向に作用しうる。外国人の部分労働市場だけでなく、日本の労働市場全体を視野に入れ、外国人雇用が生産性や企業内の分配構造に及ぼす影響まで勘案することも必要であろう。

図1 外国人を雇用しない企業を基準とした企業業績・分配の推定結果
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図1 外国人を雇用しない企業を基準とした企業業績・分配の推定結果
図2 イベントスタディ分析の結果
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図2 イベントスタディ分析の結果