2005年度主要政策研究課題

II. アジア経済統合の深化と新たな世界の経常収支不均衡

米国の膨大な対外赤字とアジアの巨額な外貨準備蓄積の持続可能性を検討する。その下で、アジア統合の深化と両立する貿易、為替、構造調整政策を設計する。

(1) アジアの産業内垂直分業ネットワークと世界の三角貿易構造

9. 日本企業の国際化研究会

代表フェロー

概要

1980年代半ば以降、日本企業の直接投資による海外進出が活発化した。日本企業による直接投資は日本企業の行動パターンに大きな変化をもたらしただけではなく、日本経済および日本企業が大量に進出した東アジア経済にも大きな影響を与えた。東アジア地域における自由貿易協定(経済連携協定)の締結が進んでいることを踏まえると、日本企業の国際化は今後も活発化していくことが予想される。
本研究では、経済産業省の企業活動基本調査、海外事業活動基本調査等のミクロデータを用いて、日本企業の海外活動の実態を明らかにするとともにその日本経済とアジア経済への影響を分析する。本研究の成果は今後の日本及び東アジア諸国の貿易・投資政策および国内政策を立案するうえで有益な情報を提供する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

10. 東アジア及び東南アジア地域における製品アーキテクチャのモジュール化と貿易構造の変化についての実証分析

代表フェロー

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

(2) 世界的貿易不均衡の是正に向けたアジアにおける調整政策のあり方

11. 中国の金融サービス貿易の自由化と資本規制の有効性

代表フェロー

概要

中国は、WTO加盟によって金融部門を外国との競争に開放しつつある。銀行業務の性質上、外国銀行の取引は、中国の資本移動のパターン、そしてその結果としての中国の資本管理の有効性に直接影響を与えるだろう。それどころか、外国銀行の参入は現行の資本管理体制の有効性を低め、資本勘定の交換性が事実上実現されることになるという印象が一般化しつつある。
このプロジェクトは、こうした問題を政策的観点から研究することをめざしている。第一に、金融サービス貿易の自由化と、それがホスト国における国内の金融自由化及び資本管理に与える影響の関係について、中国のケーススタディという形で検討する。第二に、中国と香港の資産利回りについての金利裁定の条件を検証することによって中国の現在の資本管理体制の有効性を実証的に分析する。この研究の実証分析から得られた知見が、地域の経済的統合が進むという状況下における中国の外国為替制度の将来の調整や制度設計に光をあてることを期待している。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

(3) 国内金融制度の発達と整合的な為替レート体制のあり方

12. アジアの最適為替制度

代表フェロー

概要

アジアが持続可能な成長プロセスを維持し、コストの高い危機を再発させないためには、アジアの通貨制度を改革して、より弾力的な管理されたフロート制に移行することが望ましい。しかし、具体的にどのような参照値をもとに為替政策を運営することがよいのか、アジア各国同士はどのように、為替政策で、協調、協力すべきなのか、などについては、いろいろな研究や提言が出されてはいるものの、いまだ研究者、政策担当者の間で合意には至っていないのが現状である。
当研究プロジェクトでは、将来的には共通通貨バスケットを長期的に望ましい選択肢と位置づけ、バスケット移行までの金融為替政策運営、望ましいバスケット制の形態を探るという、政策に直結する研究を行うことを目指している。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

13. 東アジア経済における通貨切り上げの影響に関する計量分析

代表フェロー

概要

このプロジェクトは、新しいグローバルな不均衡の解決に東アジアが果たす役割を探求するものである。米国の大幅な経常収支赤字・対外借り入れと東アジア通貨当局によるそのファイナンスは今後ともサステイナブルとはいえない。このプロジェクトでは、こうした不均衡を是正する上で、特に通貨調整の役割に注目し、それが経常収支および東アジアの生産ネットワークに与える影響を計量分析により検証する。
また、米国および東アジアにおける貯蓄投資バランスに影響する財政等の支出面の変化が対外バランスに与える影響も分析する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

(4) 世界貿易と環境問題

14. 多角的貿易体制の現状と展望

代表フェロー

概要

世界貿易機関(WTO)の新ラウンド停滞は、保護主義の勃興と、地域主義の台頭の反面、多角的貿易体制の維持・強化に対する各国の意欲が減退したかのごとく捉えられる。本プロジェクトは、このような多角的貿易体制の持続可能性が低下した現状を明らかにし、更に新たな多角的貿易体制像の構築に向けて中長期的に日本がなし得る貢献を念頭に置きつつ、WTOの各種政策的課題について考察する。
具体的には、まず総論的に、多角的貿易体制の置かれた現状と課題を国際経済学、国際政治学、および国際法学の3つの社会科学の方法論から分析・提示する。続く各論的検討として、地域経済統合とWTOのインターフェイス、市民社会のWTO参加、日本の通商政策決定過程、紛争解決手続の履行問題、途上国の一層のWTOシステムへの参加問題等を議論し、問題解決の「処方箋」と我が国のラウンド参加への方向性を示す。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

RIETIディスカッションペーパー

RIETI政策シンポジウム

15. 貿易と環境

代表フェロー

概要

貿易の利益と環境の利益をどのように調和していくかは、国際通商上の大きな問題である。しかし、これまでWTO交渉でルール・メイキングの議論を長年やってきたにもかかわらずほとんど成果をあげておらず、本来政治的・立法的解決が望ましいにもかかわらず紛争 処理手続きにより司法的解決が図られているのが現状である。
このため、貿易と環境に関する論点・課題の整理・分析を行うとともに、新たなルール設定に関する提言を行う。分析・研究方法としては、まず経済学的にどのような措置が望ましいかを検討した後、それを実現するためにはWTO上どのような解釈を採ればよいのか、解釈で対応できない時どのような立法措置(交渉上の提案)を採るべきかを法学的な観点から議論する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

16. 貿易と農業(食品の安全性)

代表フェロー

概要

牛海綿状脳症(BSE)の発生後、国民・消費者の食品の安全性に対する関心は高まっている。WTO・SPS協定は食品や動植物の検疫措置が国際貿易を意図的に制限する目的で運用されないようにすること等をねらいとしているが、貿易の利益が生命・健康といった利益に優先しているという批判が先進国の消費者からなされている。
本プロジェクトでは、食品の安全性について、どのような食品の輸入規制が保護貿易の隠れ蓑なのかまたは合理性があるのか(消費者需要の違いによる合理的な各国規制の差、検疫措置を産業保護として活用する意図)を分析するとともに、貿易への影響を最小にしつつ各国の経済厚生水準を最大化するための貿易ルールの改善を提言する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

(5) アジアにおける適切な自由貿易協定(FTA)等のあり方

17. 地域経済統合への法的アプローチ

代表フェロー

概要

90年代後半からの地域経済統合(FTA、EPA、関税同盟)の隆盛には刮目すべきものがあり、この現象は社会科学各分野において高い関心を呼び起こしているが、その法的側面の分析については一般に立ち後れている。地域経済統合もまたWTO同様に膨大な法律文書によって行われ、また、GATT24条に根拠をもつ通商「協定」である。よって、その具体的な制度設計、そして完成後の運用においては、法的分析が政策ツールの中心とならなければならない。
このような問題意識のもと、本プロジェクトはこれまでの主要な地域経済統合の分野別の制度比較を行い、地域経済統合の法的制度設計の類型化とその特質を明らかにする。このことにより、統合の法的規律のあり方としていかなる選択肢がありうるのか、そしてそれらが実効的な経済統合にいかに役立つかを提示する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

18. FTA、EPAの評価に関するプロジェクト

代表フェロー

概要

世界大での地域主義の活発化、日本のFTA・EPA締結の動きの本格化、WTOドーハラウンドの停滞等といった最近の通商問題を考えるとき、可能な限り質の高いFTA・EPAを締結することをめざすことは極めて重要な課題である。そのため、(1)WTOとの整合性の問題、(2)原産地規則(rules of origin: ROO)に端的にみられるように、FTA・EPAが乱立し協定ごとに異なる規則が適用され、規則が複雑に絡み合った状態に陥る(スパゲッティボウル現象)問題、(3)分野により自由化の対象範囲・程度が大きく異なるという coverage と depthの問題などFTA・EPAの抱える主要な問題点に即して、体系的かつ相互比較可能な指標を用いて、既存のFTA・EPAの質を評価し、それに基づきより良い協定の締結・改定に向けた政策提言を行うことをめざす。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

(6) 開発国家の評価と新しいガバナンスのあり方

19. アセアン諸国の民主主義体制下におけるテクノクラシー

代表フェロー

概要

東南アジア、特にタイ、フィリピン、インドネシアではかつての権威主義的開発体制が過去のものとなり、またマレーシアにおいてもマハティール首相の退陣、バダウィ首相の登場とともにソフトな権威主義体制への移行がはじまっている。こうしたなか、かつて開発主義体制下においてマクロ経済政策、経済開発政策を領導したテクノクラシーも、民主化と1997?98年の経済危機を契機として、大きく変容しつつある。それはタイにおける四省庁体制の崩壊、フィリピンにおける議会優位の予算編成プロセスの成立、スハルト体制崩壊以来のインドネシアにおける国家計画・予算編成体制の変容に見る通りである。
本プロジェクトは、これに鑑み、
(1)アセアン諸国におけるテクノクラシーの変容の実態を明らかにし、
(2)民主体制下におけるテクノクラシー「強化」(empowerment)の方策を考える
ことを目的とする。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー