1 はじめに
日本の中小企業の海外展開は、総じて極めて小さい。だが、なかには例外もある。社長さんが新しいもの好き、外国が好き、商社経験者が社長に就く場合など、社長の行動に大きく左右される。社長自らが外国で営業マンとして飛び回るケースなどは、外国販売比率がぐんと高くなる。
しかし、中小企業の社長さんの多くは、職人上がり、技術者経験者が多く、外国市場にほとんど関心を示さない。そうした場合には、外国市場にはほとんど進出することがない。
日本は中小企業が全企業の99.7%を占め、働く人の割合をみると約70%の人が従業員1,000人未満の規模の企業で働いていて、日本は「中小企業の国」であると言える。この多くの中小企業が、がんばって、海外に積極的に進出し、外国から付加価値を稼げば、今の日本が抱えている経済問題、例えば、デフレスパイラル、低賃金や生産性の低迷、失われた30年、国の財政赤字などの問題は、そのほとんどが解決するといわれている。そのくらい中小企業の存在が日本経済に占める比重は大きい。
本稿では、ドイツと比較しながら、なぜ日本の中小企業は海外展開が少ないのか、海外展開を増やすためにはどうすればいいのか、を探っていく。

ハーマン・サイモン『グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業』(2012年、原著2009年)に取り上げられている隠れたチャンピオン企業1,307社の売上高の平均は約400億円、従業員数平均は2,000人、売上高合計が50兆円超ほど。これら隠れたチャンピオンの輸出比率は推定6割以上とされる。輸出額は約30兆円程度であり、これは日本の自動車・同部品の輸出額(14兆円)の約2倍に相当する。
出典)「隠れたチャンピオン」の輸出に関する分析、吉村(三菱総合研究所)
2 ドイツと比較した日本の中小企業の海外展開の特徴
2-(1)難波、福本、藤本(2013)による研究
立命館アジア太平洋大学次世代事業構想センター(APU-NEXT)の難波、福本、藤本は、ドイツの隠れたチャンピオンと日本のGNT(Global Niche Top)との海外展開に関する行動比較を行った(2013年)。
ドイツ国内に立地する隠れたチャンピオン4社を訪問調査、日本の九州に立地するGNTの7社と国際化行動を比較した。
日本企業の事例から、GNTに至るまでのプロセスの仮説は以下の通りである。
すなわち、まずは国内市場で販売する。国内で試行錯誤を繰り返し、製品の検証や向上を図り、より完成度の高い製品に改良していく。国内市場が飽和すると、これ以上、国内市場に拘っていては、成長が見込めないので、この段階で海外に出ていく決心をする。下記の図表2の①の段階である。
だが、海外市場はよく分からない未知の世界なので、地元のよく見知った中小商社に頼んで、海外進出を手伝ってもらう。
まずは、海外の展示会への出展から始める。海外の展示会も、地元の商社に手伝ってもらう。何度か出展していると、外国の顧客がついたり、取引先ができる。この段階で、中小企業は自ら、それらの企業と直接取引をするようになり、やがて外国での販売量を拡大していく。
海外の展示会への出展も慣れてくると、地元の商社に依存せず、次第に自社の力だけで出展するようになる。下記の図の②の段階である。
APU-NEXTの難波、福本、藤本は、ドイツ国内に立地する隠れたチャンピオン4社および日本の九州に立地するGNTの7社を訪問調査し、②の段階に至るまで何年を要したのかを調べ、日独比較した。
日本のGNTは、まず地元の中小商社に依頼して海外進出するが、慣れるに従って自社で直接取引するようになる。創業からここに至るまで平均54年を要している。日本企業は、「石橋を叩いて渡る」という言葉通り、慎重に海外事業を進めるため、GNTに育つまで長期間を要する。
ドイツの隠れたチャンピオン4社の平均は13年、短いケースでは4~5年。最初から一気に外国で商品を売り出す。日本の中小企業のように、まず国内市場で販売し、国内市場を固めてから外国に進出するというまどろっこしいことをしない。
最初から海外向けの製品を開発し、最初から一斉に海外でも売り出す。創業当初から海外展開を前提として行動しており、外国に進出するスピードが速い。



筆者は、ドイツのやり方が正しくて、日本のやり方が間違っているなどとは言わない。日本の中小企業の海外展開を増やすために、ドイツのようなやり方を日本の中小企業に強いるようなことをしても失敗すると思う。
日本の中小企業の中で海外展開に成功している企業は「石橋を叩いて渡る」方式でうまくやってきた。その方式が、日本人、そして日本企業に合っているのだと思う。
多くの日本の中小企業は、国内販売だけで閉じている。①の段階で終わっているのだ。そこから海外展開、すなわち②の段階に向けて如何に引っ張っていくか、ということを考えるべきだと思う。
(以下、続く)