IoT/インダストリー4.0が与えるインパクト

第73回「近畿経済産業局による中小企業のIoT導入支援に関する事業について」

岩本 晃一 上席研究員(特任)/日本生産性本部

近畿経済産業局次世代産業・情報政策課においては、中小企業のIoT導入支援に関する事業を実施している。同課の説明によれば、事業の具体的な内容は以下の通り。

1.はじめに

「未来投資戦略2017 - Society 5.0の実現に向けた改革 -」 (注1)(平成29年6月9日閣議決定)では、「大企業で機器間・企業内のデータ連携は進みつつあるが、工場や企業の枠を超えたデータ連携はこれからの段階である。多くの中小企業では機器間・企業内のデータ連携が進んでいない」という現状課題認識のもと、中小企業においても、企業内および、企業の枠を超えたデータ連携に取り組む必要性について述べている。他方、RIETIの「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会」で議論されてきたように、中小企業の現場におけるIoT導入は簡単には進まないのが実態であり、中小企業にとって有意義なIoT導入につなげるためには、中小企業に寄り添った、そして中小企業のニーズおよび実態に即した支援が極めて重要である。

2.中小企業のIoT導入促進のための主な施策

このような中、経済産業省では、第四次産業革命に挑戦する中堅・中小製造業への支援施策を、企業が有する課題およびニーズのステージに応じて展開している(表1)。

表1:IoT導入促進のための主な施策(経済産業省)
課題・ニーズ 主な支援施策
①何ができるか、どんな効果があるのか知りたい ・先進事例集、IoT自己診断/費用対効果算定ツール
②何をすればいいか相談したい ・スマートものづくり応援隊
・ロボットシステムインテグレータ(ロボットSIer)
③手軽に低コストで使えるツールを知りたい ・スマートものづくり応援ツール
④IoT等への投資を資金面で支援してほしい ・ものづくり・商業サービス経営力向上支援事業
・新連携支援事業、サポイン事業
・省エネ補助金における「ものづくりIoT」への支援
・サービス等生産性向上IT導入支援事業
・コネクティッド・インダストリーズ税制
・日本政策金融公庫「IoT活用融資」
・第4次産業革命スキル習得講座認定制度
⑤IoT等の活用に取り組む企業とネットワークを作りたい ・ロボット革命イニシアティブ協議会「中堅中小企業アクショングループ」
・IoT推進ラボ・地方版IoT推進ラボ
(出典)経済産業省「第四次産業革命に挑戦する中堅・中小製造企業への支援施策」(平成30年3月)(注2

3.近畿経済産業局の取り組み

中小企業がIoTを自社にとって有意義に導入することができるようにするためには、国の予算措置による支援施策のみならず、地域のITベンダーや支援機関などと連携した問題解決や、中小企業に深く入り込み伴走型で行う地域ならではの支援が考えられる。そして、地方経済産業局においては、地域の関係機関と連携した事業など、全国的な支援施策の執行にとどまらない各地域の実態に即した取り組みを行っているところが多い。たとえば、近畿経済産業局では、地域のIT関連団体、産業支援機関、地方自治体、近畿総合通信局などとのネットワークを構築し、IoT等活用を目指す中小企業が有する課題およびニーズにできるだけ幅広く対応できるように努めており、以下では、こうした近畿経済産業局の取り組みのうち3つをピックアップして紹介する。

(1)関西ものづくりIoT推進連絡会議(プラットフォーム事業)
関西のIT関連団体、電気計測機器関連団体、電子機器・電子部品関連団体など17団体が集まり、昨年8月に本連絡会議を設立(事務局:近畿経済産業局)(図1)。情報関連企業を中心に、企業間の相互連携を進めるとともに、近畿総合通信局や地方版IoT推進ラボなどの他機関とも連携し、地域の中小企業や自治体などの課題に対するIoTによるソリューション創出を促進する。
具体的には、①セミナー開催などによるIoT活用事例や支援施策の情報発信、②各種展示会での共同でのIoT関連イベントの実施、③IT関連団体とものづくり関連団体の連携によるソリューション創出のためのマッチング、④関西におけるConnected Industriesの未来像にかかるアイデアソンの実施など、各機関とのシナジー効果が見込まれる取り組みを実施。

図1:関西ものづくりIoT推進連絡会議の概要
図1:関西ものづくりIoT推進連絡会議の概要
(出典)近畿経済産業局作成

(2)IoT等導入による中堅・中小製造業の複数社間データ連携の創出モデル事業
中堅・中小企業複数社間でのIoT等によるデータ連携プロジェクト創出を促進するメソッドの検討および有効性の実証を行うため、昨年10月から本年2月にかけて、具体的な案件形成を目指したモデルケースを通じた実態調査を実施。
具体的には、関西においてビジネスを展開する中堅・中小企業のグループのうち、IoT等を活用した複数社間でのデータ連携に関心を有する兵庫および大阪の2グループを対象とし、各グループ内でテーマを設定する形でIoT等によるデータ連携や関連する事項などについて議論し、具体的なプロジェクト創出にあたり克服すべき課題や今後の展開方針などについて検討を行った(図2)。結果として、現時点ではIoTによる複数社間データ連携プロジェクトは立ち上がっていないが、自社内でのIoT化ニーズの気づきや情報共有化への関心など、その芽はいくつか生まれていることから、事業として立ち上がるよう関係者でフォローを行うとともに、新たなプロジェクト形成に向けた取り組みを推進する。

図2:実態調査の概要
図2:実態調査の概要
(出典)近畿経済産業局作成

(3)IoT等導入による中堅・中小製造業の個社内での課題解決支援事業
中小製造業がIoT導入について相談できる「スマートものづくり応援隊」拠点を整備。スクールでの研修で、現場カイゼンおよびIoT関連ノウハウなどを企業OB等が受講し「スマートものづくり応援隊」として養成し、中小企業の製造現場にIT、IoTベンダーとものづくりOBによるチームを派遣し、中小企業の現場が抱える課題に向き合いソリューションを提供する取り組み。具体的には、特にIoT利活用をメインターゲットとした関西のスマートものづくり応援隊拠点と連携し、これまで関西の中小企業数十社に対する相談・課題解決提案を行ってきており、今後こうした活動をさらに広げていくとともに、活動成果をユースケースの構築につなげていく(図3)。

図3:関西スマートものづくり応援隊事業の概要
図3:関西スマートものづくり応援隊事業の概要
(出典)近畿経済産業局作成

4.まとめ

第四次産業革命の波の中、中小企業にとってもIoT等導入による自社内あるいは他社とのデータ連携を通じた生産性向上の取り組みの必要性が、今後ますます増えていくと言われている。他方で、地域の中小企業の現場においては、IoT導入は簡単に進むものではないという実態がある。このギャップを埋めないままに、無理に中小企業のIoT導入を進めることは、中小企業にとって必ずしも有益な結果とはならない可能性がある。したがって、地域において中小企業のIoT導入支援を推進する支援機関は、中小企業が直面している課題およびニーズに向き合い、それを1つ1つ解決していく体制が必要であり、その意味では、1本の大きなホームラン(大成功事例の創出)を狙うのではなく、産業支援機関やITベンダーなどと連携し、1本でも多くのヒット(着実な取り組み事例の創出)を狙うアプローチが大事といえるだろう。

2018年4月27日掲載

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