中国経済新論:中国の経済改革

地域格差是正へ国内版FTA、雁行形態、ODA推進を

関志雄
経済産業研究所

本文は、日本経済研究センターの中国研究会と中国の清華大学国情研究センターによる共同研究報告書『中国研究報告書 「持続可能な成長方式へ転換急ぐ中国」』に掲載されたものである。転載にあたっては日本経済研究センターの許可を頂いている。

はじめに

中国では、計画経済の時代の平等主義に伴う弊害を打破すべく、鄧小平が1970年代末に「先富論」を旗印として、平等よりも効率を優先させる改革開放政策を推し進めた。四半世紀あまり経った今、総じて国民生活は改善されてきたが、広がる地域格差に象徴されるように、所得の両極分化が進んでしまった。本来、「先富論」は「一部の人、一部の地域が先に豊かになることによって、最終的に共に豊かになる」ことを目指すものであり、中国における「先富」から「共富」への政策転換の機はすでに熟している(BOX1)。地域格差の是正は「全面的な小康(ゆとりのある)社会」の構築を目指す胡錦濤・温家宝政権にとって重要課題である。

それに向けて、2005年10月に開催された中国共産党第16期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で承認された「第11次5カ年規画に関する党中央の提案」(以下、「提案」と省略。第10次まで5カ年計画であったが、第11次からガイドライン的性格の強い「規画」に変更)では、「引き続き西部開発を推し進め、東北などの古い工業基地を振興させ、中部の崛起(勃興)を促進し、東部地域の先導的な発展を励ます」ことに加え、「東部、中部、西部間の連携や、優位の補完、相互促進、共同発展という新しい局面を形成させる」という方針が盛り込まれている。具体的には、ヒト、モノ、カネの自由な移動が保証される統一市場の確立(国内版FTA)、比較優位に沿った形での分業体制の構築(国内版雁行形態)、中央による予算を通じた地方間の財政移転(国内版ODA)の3つがその柱となっている。

また、中国と比べると、日本における地域格差は遥かに小さい。日本がどのように地域格差を抑えながら経済発展を遂げたのか、という経験は中国にとって大いに参考になるはずである。

1.地域格差の現状と帰結

中国における地域格差は、主に東部と中西部、都市部と農村部の格差を反映している。その規模があまりにも大きいため、社会と政治の安定を脅かしているだけでなく、消費拡大の制約にもなっている。

1.1 許容範囲を超えた地域格差

中国における地域格差は世界の中でも際立って大きい。31の省・直轄市・自治区(日本の都道府県に相当)を2004年の1人当たり国内総生産(GDP)順で並べてみると、もっとも高い上海は5167ドルに達しているのに対して、もっとも低い貴州は492ドルに留まり、その格差は10倍を超えている(図1)。

図1 中国各省の1人当たりGDPの比較(2004年)
図1 中国各省の1人当たりGDPの比較(2004年)
注)東部○、中部▲、西部◇
資料)『中国統計年鑑』より作成。

地域格差の拡大は、自然的・地理的な要因、歴史的・文化的な要因、経済的基礎と市場潜在力の相違といった客観的な理由に加え、経済体制や政策の選択と発展戦略をも反映している。特に、先に対外開放地域に指定され、外資流入の恩恵を受けている東部地域は、より高い成長率と所得水準に達している。実際、2004年の数字では、東部(人口5億4100万人)の1人当たりGDPを100とした場合、中部(同4億5400万人)は52.0、西部(同2億9900万人)は39.6と低くなっている(表1)。

表1 拡大する東部と中西部との所得(1人当たりGDP)格差
表1 拡大する東部と中西部との所得(1人当たりGDP)格差
注)カッコ内の数字は当該年の東部の数字を100としたときの各地区の額を示している。東部・中部・西部の分類については、図1参照。
資料)『中国統計年鑑』より作成。

中国におけるあまりにも大きい地域間の格差については、清華大学公共管理学院国情研究センター主任である胡鞍鋼教授が、「1つの中国」には「4つの世界」が存在していると表現している(『かくて中国はアメリカを追い抜く』、PHP研究所)。すなわち、購買力平価による所得水準が先進国のレベルに近づいている北京、上海、深?といった第1の世界(全国人口の2.2%)、世界の平均所得を上回る広東、江蘇、浙江といった第2の世界(人口の22%)、そして発展途上国のレベルにとどまる中部の省に代表される第3の世界(人口の26%)、さらに貧困地域に当たる貴州、チベットなどの中西部の省に代表される第4の世界(人口の約半分)が同時に存在しているのである。

こうした「4つの世界」の間では、人々の所得だけでなく、教育の水準と健康状態といった面においても大きな格差が存在している。1人当たり所得や、識字率、平均寿命などを総合した人間開発指数を基準に中国を世界各国と比較すると、調査対象である177カ国のうち85位とほぼ真ん中にランクされる。しかし、省別に見ていくと中国の中でもっとも経済発展の進んでいる上海と北京はそれぞれ、ポルトガル(同27位)とアルゼンチン(同34位)の水準に達しているのに対して、もっとも遅れている貴州省は、ナミビア(同125位)並みの水準に留まっている。その中間に位置づけられる広東省はマレーシア(同61位)並みにランクされているなど、国内での格差は大きい(図2)。

図2 人間開発指数から見た中国の地域格差
図2 人間開発指数から見た中国の地域格差
注)( )内は世界177カ国の中の順位
出所)UNDP, Human Development Report 2005
1.2 都市と農村の二重構造を反映した地域格差

中国では、農村の生活水準が都市部と比べて遥かに低く、農業就業者の比重の高い地域ほど1人当たりGDPが低いという傾向も顕著になっており、地域格差の問題は農業、農村、農民からなる「三農」問題と同じコインの両面の関係にあることがうかがえる(図3)。

図3 農業就業者比重に反比例する各省の1人当たりGDP
図3 農業就業者比重に反比例する各省の1人当たりGDP
資料)『中国統計年鑑』より作成。

「三農」問題を解決するために、中国政府は農民に対する租税減免と補助金支給による所得増に加えて、インフラ整備や公共サービスの向上を中心とする「新農村建設」に乗り出している。しかし、最終的には、余剰な労働力となった農民を都市部に移住させ、工業やサービス部門に再就職させなければならないだろう。農村部から都市部へ大規模な労働力の移動はすでに起こっている。しかし、戸籍などの制約から出稼ぎの「農民工」は多くの差別を受けており、都市部において貧困層を形成している。このように、従来の三農問題は、「農民工問題」が加わることにより、「四農」問題へと変貌してきた。

中国社会では建国以来、都市部対農村部という厳格な二元構造が存在し、そのため、今日になっても農民の社会における地位は低く、戸籍に縛られて移動の自由を厳しく制限されている。中国の憲法の規定によれば、公民は高齢、病気あるいは労働能力喪失といった状況下で、国と社会から援助を受ける権利がある。国は、公民がこのような権利を享受できるように、社会保障、社会救済および医療・衛生事業を整備する。しかし、実際には農民は「身分」上の制約から、国が提供する基本的な公共サービスを享受できていない。

農業戸籍しか認められない農民は、勝手に都市に転居することはできず、都市で就職先を見つけても、国内版ビザとも言うべき「暫住」の資格しか得られない。その数は、当局に登録されているだけで8673万人に上る(2005年6月)が、農民工は都市の戸籍を持っていないために、雇用の機会が厳しく制限され、低賃金と長時間勤務といった劣悪な労働条件を強いられている。また、多くの名目で税金や費用が徴収されるにもかかわらず、「暫住」の身分では医療や子供の義務教育をはじめとする都市住民が享受している公共サービスを受けることができず、失業しても失業保障の対象にはならない。さらに、都市部で生まれた自分の子供も農業戸籍のままになっており、都市の戸籍が与えられない。

このように、農民は、農村に残っても、都市部に移住しても「非」国民待遇しか受けていない。戸籍によって人口移動を制限することは、労働力という資源の有効な配分の妨げになるだけでなく、中国が自ら署名している国連の「世界人権宣言」で訴えている「すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する」という条項にも明らかに違反している。

農民の不満が爆発すれば、中国の社会と政治の安定が揺らぐことになる。2005年秋に、フランス各地で現地社会から疎外されている移民による暴動が起こった。中国でも、都市部で働いている農民工が外国人労働者以下の待遇しか受けていないことを考えれば、同じような事態が起こっても不思議ではない。

また、広がる貧富の格差は、消費の拡大を制約する要因になっている。市場経済化が進む中、国有企業のリストラ・民営化や人民公社の解体で社会保障機能が低下しているにもかかわらず、代替システムが構築されていない。このため、国民は将来の不確実性に備えるために、消費を抑え貯蓄に励まざるを得ない。なかでも、所得格差が拡大しているため、人口の大半を占める農民の所得が伸び悩み、消費全体が盛り上がりに欠けている。実際、中国のGDPに占める民間消費の割合は、農村と都市間の所得格差の拡大と連動する形で低下傾向をたどっている(図4)。2004年には41.9%となり、日本をはじめとする先進工業国の60%程度とは比べるべくもなく、アジアでも最低水準にとどまっている。

図4 拡大する所得格差で低迷する民間消費
図4 拡大する所得格差で低迷する民間消費
注)都市は1人当たり可処分所得、農村は1人当たり純収入。
資料)中国統計摘要2005より作成

2.地域格差を是正するための方策

地域格差を是正するためには、統一した国内市場(国内版FTA)、地域間の比較優位に基づく分業体制の構築(国内版雁行形態)、そして、中央財政を通じた先発地域から後発地域への財政移転(国内版ODA)を進めなければならない。国内版FTAはヒト、モノ、カネの移動の妨げとなる規制を緩和することを通じて、市場メカニズムを最大限に活かすことを目指すのに対して、国内版ODAの実現は、市場の失敗を是正するために政府の所得再分配機能を強化することになる。国内版雁行形態の形成は、政府による後発地域へのインフラ投資が民間投資の呼び水となることを期待している(図5)。このように、地域格差を是正するためには、市場または政府のどちらか一方だけでなく、双方の力を合わせることが必要である。

図5 国内版FTA、国内版雁行形態、国内版ODAの関係
図5 国内版FTA、国内版雁行形態、国内版ODAの関係
出所)筆者作成
2.1 国内版FTA

市場の拡大による経済活性化を狙って、中国は近隣諸国と自由貿易協定(FTA)を締結することを目指している。FTAによる効果は加盟国(地域)間の相互依存度が高く補完関係が強いほど大きいとされている。このような条件を満たしているのは、中国と近隣諸国よりも中国国内の各地域である。しかし、中国では地域間の障壁がいまだに残っており、統一したマーケットにはなっていない。中国経済がさらなる発展を遂げるためには、外国とのFTAよりも先に国内の各地域からなるFTAを精力的に推し進めなければならない。すでに中国における国内版FTAというべき「汎珠江デルタ経済圏」構想が動き出している(BOX2)。このような動きは、資源の有効利用だけでなく、地域格差の是正にも寄与するだろう。

分権化に伴う地域間の競争は、改革開放以来の中国における経済発展の原動力になっている半面、「諸侯経済」という表現に象徴されるように、地域保護主義という副作用をもたらしている。地域保護主義の動きは各地方政府が自らの利益を極大化しようとして採った政策によるものだが、中国経済に資源の浪費や地域格差の拡大など、多くの深刻な問題をもたらしている。

地域保護主義とは、特定の地域において地方政府が行政手段を使って、製品や生産要素の移動に対して制限を加えることである。具体的には、移出制限型と移入制限型の2つのタイプに分類される。前者は、農産物原料、エネルギーなどの資源の域外への流出を制限することで、後者は、工業製品と労働者の域内への流入を制限し、地元の生産者と労働者を保護しようとすることである。近年、保護の対象は、資源の外部への流出を阻止することから、外部からの製品の流入を止めることにシフトしている。その手法として、国際貿易の「関税」に当たる各種の明示された料金に加え、数量制限や認証といった「非関税障壁」もよく見られる。また、各省が地元の自動車産業を育成するために、他の地方の車や輸入車の車両登録費や税金を引き上げたり、タクシー会社に地元車を強制的に使用させたりすることはその典型例である。

自由貿易の下では、参加者は「交換の利益」と「特化の利益」を得る。消費者はより安い製品を外国から輸入することができ、一方で資本と労働といった生産要素が比較優位部門にシフトするにつれ、資源配分が改善されることにより効率が高められる。これは、国際貿易に限る話ではなく、国内貿易にもそのまま当てはまる。国内の統一した財市場が成立すれば、それぞれの地域が自分の(比較優位を持つ)得意分野に特化し、他の地域との貿易を通じて全体の資源配分の効率が高まるのである。これに対して、現在の中国のように市場が分割されたままでは、各地域は本来、他の地域からもっと安く「輸入」できる製品まで自分で作らなければならず、比較優位と規模の経済性による分業の利益を十分に享受できていない。外国の企業にとっても、製品の販売が狭い地域に限定されることになれば、中国に進出するメリットは大幅に低下してしまう。このような状況を改めるために、ヒト、モノ、カネの流れの妨げとなる地域間の人為的障壁を取り除かなければならない。

統一した財と生産要素市場の確立は、生産効率の向上だけでなく、地域格差の改善にもつながる。

特に、戸籍制限など労働力の移動の制約になる障壁が取り除かれることになれば、労働力は賃金水準の低い中西部と農村部から工業化の進む東部と都市部へと流れるであろう。それにより賃金水準は平準化され、出稼ぎ労働者の家族への送金を合わせて考えれば、労働力の移動は地域格差を縮小させる要因になる。

こうした要請に応える形で、最近になって戸籍制度改革がついに動き出した。劉金国公安省次官は中央社会治安総合治理委員会の席で、「中国公安省は戸籍制度の改革について検討を行い、農業と非農業の戸籍の垣根を撤廃し、都市部と農村部における一本化した戸籍管理制度の確立を模索している。それと同時に、合法的な固定された住所を戸籍登録のよりどころとし、大都市や中都市に向かう戸籍移転への制限を徐々に緩めることにしている」と語り、大きな反響を呼んでいる(法制日報、2005年10月26日)。

すでに、一部の省、直轄市では戸籍制度の改革が始まっている。2003年に、湖北省は武漢市、襄樊市、黄石市をモデルケースとして、農業戸籍と非農業戸籍の区別をなくし、いずれも「湖北省住民」に一本化した。2004年に、山東省は都市部と農村部の一本化した戸籍登記制度を実施し、都市部への移籍のための費用を徴収しないことになっている。今では、山東省、遼寧省、福建省など11の省・直轄市の公安機関が都市部と農村部の戸籍一体化の登録に踏み切り、農業と非農業の戸籍の垣根の撤廃を徐々に推し進めている。

このように、世論と政府の固い決意に支持され、戸籍制度改革はすでに本格化しつつある。確かに、農民が差別を受けることなく自由に移動できるようになれば、短期的には、都市部における失業の圧力の増大と治安の悪化や、公共サービスの供給が不足するという恐れがある。しかし、これを口実に改革を拒むのではなく、条件を整えながら、実施地域の拡大を含めて改革を着実に進めていくべきであろう。それにより、農民も、都市部に移住する農民工も、都市住民と同じような権利を得る日が、そう遠くない将来に到来するだろう。

労働力の移動に加え、国際経済学の有名な「要素価格均等化定理」が示唆しているように、国内の地域間の関係においても自由貿易が行われるようになれば、生産要素の自由な移動がなくとも、両地域間の生産要素の価格は均等化する。例えば、自由貿易の下では、資本が豊富だが労働力が不足している沿海地域が資本集約財を生産し、それを資本が不足する半面、豊富な労働力を抱える中西部で生産される労働集約財と交換するという分業体制が成立する。これは、製品に「体化」された中西部の労働力が沿海部に流れる一方、製品に「体化」された東部の資本が中西部に流れることを意味するため、労働力と資本の移動と同じように、これらの生産要素の価格を平準化する力として働く。

2.2 国内版雁行形態

中国における地域格差を是正するためには、労働力の後発地域から先進地域への移転に加え、逆の方向の資金移動がそのカギとなるであろう。そのとき、アジア地域で見られた雁行形態が1つのモデルとして参考となろう。ここでいう雁行形態とは、アジア各国が工業化の発展段階に応じ、それぞれ比較優位のある工業製品を輸出するといった分業関係を維持しながら工業化の水準を高めている構図である。例えば、60年代以降、繊維をはじめとする多くの産業の中心地が、発展段階の順番に従って、日本から新興工業経済群(NIES)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、そして中国へとシフトしてきた一方で、先発国である日本では産業の中心が繊維から、化学、鉄鋼、自動車、電子・電機へと高度化してきた。先発国も後発国も、それぞれが積極的に新産業の育成と衰退産業の海外への移転を組み合わせた産業構造調整を進めていくことは、地域全体のダイナミックな発展の原動力となっている。

このように、従来、雁行形態は国単位で議論されてきたが、中国のような大国の場合は、発展段階に大きい格差が生じている東部、中部、西部という地域単位でも、そのまま当てはまるだろう(図6)。これまでの20年間、東部は労働集約型製品の生産と輸出をテコに高成長を遂げた。しかし、いずれ上海も広東省も賃金と土地の価格が上昇し、労働集約型産業の競争力を失うことになる。より安い労働力と土地を求めて、外国企業のみならず、やがては中国企業も直接投資などを通じて、生産拠点を移転せざるを得ないであろう。現に一部の中国企業は、ベトナムやインドネシアといった低賃金国に生産拠点を移転し始めている。本来、地域格差を是正しながら経済成長を持続させるためには、東部における衰退産業を海外よりも中西部に移転させるべきである。なお、「国内版雁行形態」は、その国際版と同様に、比較優位に沿った分業体制の構築を重視すると言う意味で、1960年代に戦争に備えるために中西部で行われた「三線建設」とは区別しなければならない。

図6 産業発展の雁行形態
図6 産業発展の雁行形態
出所)筆者作成

そもそも、なぜこれまで外国企業に限らず、中国企業も投資が東部に集中し、中西部では行われていないかというと、インフラがネックになっているからである。鉄道と道路の輸送力が不足しており、部品を中西部に輸送するために非常に高いコストがかかるだけでなく、製品を輸出しようと思っても採算が取れない。したがって、「国内版の雁行形態」を実現させるためには、まず政府の主導でインフラ整備を進めていかなければならない。中西部のインフラが改善されるようになれば、少なくとも労働集約型の産業に関しては、中西部が投資先として登場する日がそう遠くない将来到来し、地域間の補完関係を活かす形で工程間分業を中心とする生産ネットワークの構築も盛んになってくるであろう。こうした動きは、工業化の全国展開を促進しながら、地域格差の是正にもつながるだろう。

実際、市場と政府の力をあわせて比較優位に基づく分業体制を構築する「雁行形態」という考え方は、第11次5カ年規画の方針に反映されているように、まさに中国政府の地域政策の指導的思想になっていると言っても過言ではない。

温家宝首相は、2005年10月8日、「第11次国民経済・社会発展5カ年規画の提案に関する説明」の中で、次のように述べている。

「西部大開発を実施し、東北地区など旧工業地帯の新興をはかり、中部地区の台頭を促し、東部地区が全国に先駆けて発展することを奨励して、東・中・西が相互に作用し、相互に補完し、相互に促進し、共に発展する構造を作り上げることは、小康社会の全面建設と近代化建設の加速という全局に立った戦略配置である。『提案』は各地域の実情を踏まえ、比較優位の発揮、弱い部分の強化、釣り合いのとれた発展の要求に従って、各地域の発展方向と全体的道筋を明確にしている。さらに3つの面から地域発展戦略実施の方策を示している。第1に地域間の調和を取るための、相互に作用する仕組みを整える。市場の仕組み、協力の仕組み、互助の仕組み、支援の仕組みなどだ。国は経済政策、資金投入及び産業振興などの面で中西部地域への支援を引き続き強め、旧革命根拠地、少数民族地区、辺境地区、貧困地区の経済・社会発展を加速する。第2に異なる地域の機能位置づけを明確にする。それぞれの地域の人口、資源、環境の負担能力と発展潜在力に合わせて、最適開発、重点開発、開発制限、開発禁止を実施する。第3に健全な都市化をはかる。大中小都市と小さな町の調和の取れた発展の方針を堅持し、都市・町の総合的な負担能力を高める。漸進、土地節約、集約開発、適正分布の原則に従って、積極的かつ着実に都市化を進める。都市郡の集積効果を発揮させることを重視する」。

2.3 国内版ODA

国際社会では、先進国が開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与することを主たる目的としてODA(政府開発援助)を供与しているが、その国内版ともいうべき財政移転制度が、多くの国で採用されている。中国においても地域間の所得格差を是正するために、中央財政を通じて財源の高所得地域から低所得地域への再分配を強化してきた。

中国における現行の財政移転制度は、地方の収支不均衡問題に対処し、遅れた地域にも公共サービスを行き届けるために、1994年の分税制の実施とともに導入された。その主要なものは「税返還」、「専項転移支付」、「財力性転移支付」の3つである。

(1)税返還は、1994年の分税制の実施と2002年の法人税および所得税の共有化の際に、税が中央政府に移管された地方政府に対して、改革前の税収、さらには一定の増分を保証する仕組みである。これは基本的にもともと税収の多かった地域に税金を還付することで税制改革を円滑に行うために設けられたものであり、その恩恵を受けるのは後れた地域ではなく、豊かな地域である。
(2)専項転移支付は基本建設や社会保障、農業、教育といった分野への使途特定の移転である。日本の国庫支出金と同様、資金がプロジェクトごとに配分され、運用についてはそれぞれの所管官庁(国家発展改革委員会、社会保障省、農業省、教育省)の裁量権が大きく、透明性が低い。
(3)財力性転移支付は基本的に貧しい地区への資金移転を目的としている。その中で最大の項目である「一般性転移支付」は、資金の用途が地方政府に委ねられることや、「標準支出」「標準収入」といった算出方式を用いる点は日本の地方交付税交付金と類似している。

分税制に移行した当初は、中央政府から地方政府への財政移転の規模が小さい上に、地域格差の縮小に寄与しない「税返還」がその大半を占めていた。1995年には、2534億元の財政移転のうち税返還は1869億元(全体の約75%)に上ったが、専項転移支付は375億元、財力性転移支付はわずか21億元にとどまった。

このように、これまでの税制は地域間の格差の縮小に寄与するよりも、むしろその拡大に拍車をかけてきた。豊かな地域では、中央からの還付を含めて税収が潤沢で、積極的にインフラに投資することができる。近年、上海はまさに、この税制の分権化のメリットを活かし、高成長を遂げたのである。これに対して、財政難に直面している一部の地方政府は、支出負担を軽減するために、その責任を末端の県・郷鎮といった下級政府に転嫁しようとしている。特に、義務教育や医療衛生等の負担は大きく、郷鎮政府が財源を増やすため、様々な名目で費用・料金を徴収(「乱収費」)しており、これは農民にとっての実質的な税負担を重くしている。

この状況を改めるために、中国政府は財政改革に乗り出した。まず、1998年以降の内需拡大を目指した積極財政と、その後の「西部開発」や「東北振興」などの推進を受けて、財政移転に占める「専項転移支付」、「財力性転移支付」のウエートが高まってきた。2002年に、所得税について中央と地方の配分方法が変更されたことにより、中央が財政移転の新たな財源を確保できるようになった。1994年の分税制改革により個人所得税は地方財政収入、企業所得税はその所属により各地方または中央政府の収入とされていたが、2002年からは一部の特定業種の企業を除いてすべての個人・法人所得税収の増加の部分が、中央と地方に一定の比率で配分されるようになった。中央政府は改革による増収分は主に中西部地域への財政移転に充てている。これを反映して、2005年の予算では、中央から地方への移転総額は1兆1224億元に上り、そのうち、「専項転移支付」(3631億元)と「財力性転移支付」(3093億元)が計6724億元に達し、全体の6割を占めるようになった(図7)。

図7 地方の財政総収入推移
- 拡大する税還付以外の中央からの移転 -

図7 地方の財政総収入推移
資料)『中国統計摘要』、大西靖『中国財政・税制の現状と展望』、大蔵財務協会、2004年

こうした政府の努力にもかかわらず、今のところ地域間の財政支出の平準化という傾向はまだ見られていない。地域間の所得格差とそれに比例した財政収入の格差が引き続き拡大する中で、財政移転の強化が財政支出における格差の拡大になんとか歯止めをかけている。調和の取れた社会を実現させるためには、財政移転の規模をいっそう拡大しながら、その重心を税返還と専項転移支付から、財力性転移支付にシフトさせていかなければならない。これと同時に、移転額の算出基準の透明性と公平性を高めていく必要があろう。

3.日本の経験と教訓

中国と比べると、日本の地域格差は遥かに小さい。地域格差を抑えながら経済発展を遂げた日本の経験は、「全面的な小康社会」を目指す中国にとって、参考になるはずである。

3.1 地域格差是正への取り組み

日本では、国内版FTA、雁行形態、ODAにそれぞれに対応し、自由な労働力の移動、国土開発計画、地方交付税を中心とする財政移転制度が、地域格差の是正に大きな役割を果たしてきた。

まず日本では、資本主義の形成期に当たる明治時代に、労働力の自由な移動をはじめ国内の統一市場がすでに形成されていた。明治政府は封建的な士農工商の身分制度を廃止し、人々の結婚・職業・居住・土地売買などの自由を認めるなど、「四民平等」を実現した。1889年に発布された明治憲法では、居住移転の自由が明記されている。なお、今でも日本には戸籍制度が存在するが、本人の意思で簡単に本籍を移すことが可能で、移転の制約には全くならない。労働力の移動は、日本の地域格差を抑えるのに大きな役割を果たしている。戦後の「3大都市圏への人口の転入超過数」は、地域間の所得格差を表す「1人当たり県民所得のジニ係数」との間では高い相関関係が見られることからも分かるように、所得格差が人口移動の誘因となっている(図8)。特に地域格差が比較的に大きかった60年代の高度成長期は、人口の移動がもっとも活発であった。その一方で、このような「賃金裁定」を通じて、低所得地域から高所得地域への人口の移動は、逆に所得の平準化に寄与したのである。

図8 日本における地域格差と人口移動
- 1人当たり県民所得のジニ係数と三大都市圏への人口転入超過数の推移 -

図8 日本における地域格差と人口移動
出所)国土審議会政策部会・土地政策審議会計画部会審議総括報告「21世紀の国土計画のあり方」、2000年11月16日

また日本は、1960年代以来、公共投資を地方圏に重点的に配分することを軸に、5回にわたる全国総合開発計画を策定し、実施してきた(表2)。戦後の復興期から高度成長期にかけて、日本の公共投資は不足していた社会資本をできるだけ早急に整備することを主眼に進められた。生産性向上を第1の目標とし、地域的に見れば京浜・中京・阪神といった工業地帯を中心に社会資本の整備が図られたのである。その結果、産業が飛躍的に発展し大都市と地方との生活水準の格差が拡大する一方、過度の人口集中や公害など大都市圏における生活環境の悪化が社会問題化していった。これに対して、1962年に策定された第1次全国総合開発計画(全総)は、太平洋ベルト地帯以外の地域を「新産業都市」に、太平洋ベルト地帯の周辺を「工業整備特別地域」として指定し、政府主導で拠点を整備する形での地域開発を行った。指定した地域に対しては、国の直轄事業実施に加え、補助金や地方債、税制に関しての特例措置を講じながら、政策金融による特別融資や規制緩和などを適用して産業の誘致や振興による地域の発展を促した。その狙いは、既成の工業地帯以外の場所で開発の効果が出やすい場所を選定し、その地帯の発展を進めていくことでその地域との関連のある地域や周辺へ発展を波及させていくことであった。その後、日本の急速な発展とそれに伴う経済社会情勢の変化に対応して、全総計画の課題が総合的な生活環境の整備のように次第に広範なものとなり、地域の発展のあり方についても地域格差是正を重視したものから地域の自主・自立、個性の発揮等を重視する方向へと移ってきたが、「国土の均衡ある発展」の実現は、5回にわたる全総計画を貫く基本課題であり続けた。

表2 全国総合開発計画(概要)の比較(PDFファイル 27KB)

さらに、現在の日本においてはそれぞれの地方の間にある財政力の格差を解消するために地域間の所得再分配方式が採用され、いったん中央に集めた税金の一部を財政力の弱い地方へ多く配分することが行われている。この再配分はあらかじめ使い途を指定されている「国庫支出金」、国が事前に使い方を制限することが禁じられている「地方交付税」に分類される。地方交付税制度は、全国的に財政力の異なる多くの地方団体があるなかで、国と地方の間の財政調整を行うことによって、地方団体の財政の均衡化を図ることを目的としている。その仕組みは、地方交付税が基準財政需要額(標準的な行政サービスを行うために必要とされる額)および基準財政収入額(地方税を標準税率で課税する時に入ってくる税収の75%)という共通の基準を通じて交付されることで、たとえどの地方に住んでいてもまんべんなく最低限の水準(ナショナル・ミニマム)のサービスを享受できるだけの財政基盤が保障されることを目指している。また、日本全体としてみた場合でも、国税の一定割合を地方交付税として使うことが法律で定められ、財源が保障されている。実際、地方交付税は各地方自治体間の税収に比べた歳出格差を大きく縮める役割を果たしている。

このような政策は、人口の3大都市圏への流入に一定の歯止めをかけながら、地域格差の抑制に成功している。1人当たり県民所得で比較すると、もっとも高い東京は408万円(3万3741ドル)なのに対して、もっとも低い沖縄は203万円(1万6796ドル)と、その格差は、2対1程度に留まっている(図9)。しかも、図8からも読み取れるように、高度成長期に当たる60年代の初めから70年代の半ばまで地域格差が急速に縮小し、その後も低水準で推移している。

図9 日本の1人当たり県民所得の比較(2002年度)
図9 日本の1人当たり県民所得の比較(2002年度)
資料)内閣府「県民経済計算」、「人口推計年報」より作成
3.2 成功への代償

しかし一方で、政府主導で行われた国土開発と財政移転は、平等を強調するあまりに効率を犠牲にしていることや、その役割を終えてからも維持される傾向が強いなど、多くの弊害をもたらしている。

全総の理念は、「地域の均衡ある発展」であったため、日本では都市と地方との生活水準の格差を是正して都市圏への人口集中を抑えるため、公共投資は地方圏に重点的に配分された。高度経済成長期であれば首都圏など大都市部は相対的に豊かであり、農村部は一般に貧しかったため、公共投資による地域間の再配分は公平性の実現を考えれば一概に問題視されるものではなかった。しかし、1980年代以降には農業世帯の所得がサラリーマンの所得を上回るなど、豊かな地域と貧しい地域という関係が大きく変わったにもかかわらず、地域再分配政策の地方への傾斜配分は継続され、公共投資は景気対策や地方における雇用の維持といった社会政策的な色彩を強めていった。これは過疎地の人々によるロビー活動の成果で国による公共投資の負担が既成事実化してしまったことによる。このことが効率性よりも投資量を確保することへの関心を強めてしまい、公共投資の使途の硬直化を招き、公共投資の効率性を損なってしまった。

一方、財政面において地域の均衡的発展を支えた地方交付税制度に対しても、制度疲労が起こっている。

まず、財源保障が過度になされているため、地方の財政規律が弱まっている。国が財源を保障していることから、地方において財政赤字を発生させる主体と赤字を埋め合わせる主体がかけ離れているため、行政サービスや公共工事を拡大するインセンティブを持ってしまうのである。その中には多くの無駄な工事が含まれており、日本が「土建国家」と呼ばれるほど、地方経済は建設に大きく依存するという歪んだ産業構造になってしまった。また、企業誘致などによる増収を図っても、その分だけ地方交付税が削減されることとなり、地方公共団体にとって税収を増加させようというインセンティブが湧きにくい。その結果、赤字補填のために地方交付税がGDPを遥かに上回るペースで伸び続け、財源保障機能は国の財政状況を悪化させる要因になっている。なお、地方の財政赤字は地方債(臨時財政対策債)でもまかなわれるが、その元利償還費は将来の交付税で償還されるので、交付税の前借りといえる。

また、地域間の再分配が過剰になっており、公平性が損なわれている。実際、地方税の少ない地域であるほど、中央からの財政移転が多いだけでなく、地方税と財政移転を合わせた歳入も多いという傾向が見られる。たとえば、2003年度において、東京都の1人当たりの地方税収入は32万5000円、島根県では8万7000円である。しかし、地方譲与税および地方交付税を加えた歳入で見ると、東京都は地方交付税の不交付団体であるために、1人当たり32万6000円とあまり変わらないのに対して、島根県が34万5000円と逆転してしまう。

さらに、全国の統一性と画一性を重視する現行のシステムは、地域の自主性を制約して個性豊かな地域社会の形成を阻害している。特に地方交付税の算出において、さまざまな補正や公共投資に充てる地方債の元利償還費への補填措置といった制度があるために、中央の目的に沿うような歳出を行うようにインセンティブがゆがんでしまう。

こういった問題に対処するために2003年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」の中で国と地方の税財政改革(いわゆる三位一体改革)が盛り込まれた。三位一体改革は地方への補助金の削減、国から地方への税源委譲、そして地方交付税の見直しを同時に行うことで国と地方の行財政改革を進めていこうとするものである。その中で地方交付税の改革については、地域間の財政力格差の調整はなお必要としているものの、地方交付税の財源保障機能を縮小、そして地方財政計画の歳出を見直すことで地方交付税総額を抑えるという方針にいたっている。

日本のこのような経験が示しているように、地域格差の拡大という「市場の失敗」を是正するためには政府の関与が求められるが、この行き過ぎによって逆に「政府の失敗」がもたらされることがある。中国としても、地域政策を策定する際、政府と市場のあるべき役割分担を見据えた上で、内外環境の変化に応じて目標と手段を柔軟に調整していく必要がある。

4.本格的な地域格差是正は民主化が前提に

国内版ODAをはじめ、ここで提案された地域格差を目指す政策の多くは所得の再分配を意味し、これによって損を被る人々が反対するため、「総論賛成、各論反対」という状況に陥りやすい。特に中国の政治制度において農村部や内陸部の利益を代弁する声が非常に弱い現状では、地域格差是正策の推進力は指導部の政治・社会・経済の安定への配慮に限られている。その結果、当面、政府の地域政策は格差の拡大に歯止めをかける程度にとどまり、本格的な取り組みは民主的政治体制への移行を待たなければならないだろう。

日本企業にとって、中国は「工場」であると同時に、「市場」としての期待も高まっているが、後者を実現させるためには地域格差の是正に伴う内需の拡大が欠かせない。胡錦濤・温家宝政権の下で、効率のみならず公平をも重視する政策がようやく打ち出されているが、その本格化は政治の民主化を前提としているだけに、中国の「工場」から「市場」への転換はまだ長い歳月がかかるだろう。

BOX1:鄧小平が自ら語った「先富」から「共富」への道筋

鄧小平は、その遺言とも言うべき1992年の「南巡講話」において、「先富」から「共富」への道筋について、次のように述べた。

「社会主義の道を歩むのは、ともに豊かになることを逐次実現するためである。ともに豊かになる構想は次のようなものである。つまり、条件を備えている一部の地区が先に発展し、他の一部の地区の発展がやや遅く、先に発展した地区が後から発展する地区の発展を助けて、最後にはともに豊かになるということである。もし富めるものがますます富み、貧しいものがますます貧しくなれば、両極分解が生じるだろう。社会主義制度は両極分解を避けるべきであり、またそれが可能である。解決方法の1つは、先に豊かになった地区が利潤と税金を多く納めて貧困地区の発展を支持することである。もちろん、それを急ぎすぎたら失敗してしまう。いまは発展地区の活力を弱めてはならず、「大釜のメシ(悪平等-訳注)」を奨励してもならない。いつこの問題をとりたてて提起し、解決するか、どのような基礎の上で提起し解決するかは検討する必要がある。今世紀末にまずまずの水準に達したとき、この問題をとりたてて提起し、解決することが考えられる。その時になれば、発展地区は引き続き発展し、利潤と税金を多く納め、技術を移転するなどの方式で未発達地区を大いに支持すべきである。未発達地区はたいてい資源に恵まれており、発展の潜在力は極めて大きい。要するに、全国的範囲に考えて、われわれは必ず沿海と内陸部の貧富の格差という問題を一歩一歩スムーズに解決できる。」

(出所)「武昌、珠海、上海などでの談話の要点」(1992年1月18日~2月21日)『鄧小平文選1982-1992』テン・ブックス、1995年

BOX2:国内版FTAの第1号となった「汎珠江デルタ経済圏提携枠組み協定」

2004年6月に、広東省を中心とする9省・自治区と香港、マカオの2特別行政区の指導者が、「汎珠江デルタ経済圏提携枠組み協定」に調印した。動き出した新経済圏は、広東省、湖南省、福建省、海南省、江西省、広西チワン族自治区、雲南省、貴州省、四川省、香港・マカオ両特別行政区によって構成され、総人口は4億5600万人、広さは200万平方キロ、域内総生産(GDP)は5兆4030億元(約70兆円)に達する。

「協定」には、次の10項目の広域経済プロジェクトが盛り込まれている。
(1)道路や鉄道、航空、海運、石油パイプラインなどのインフラ整備
(2)(企業間の技術提携などによる産業活性化
(3)税金引き下げなど貿易障壁の撤廃
(4)観光・旅行分野での協力
(5)農産物貿易の拡大や品種改良など農業分野の協力
(6)労働力の移動と労働者の権利の保護
(7)教育機関における科学技術交流の活発化
(8)情報ネットワークシステムの構築
(9)環境対策活動
(10)新型肺炎(SARS)などの流行病や疫病の防止

新経済圏に属する中国南部は経済改革の進展が速く、中国内でも有数の生産基地であると同時に一大消費市場でもあり、国際金融貿易センターである香港を抱えている。これまで最大の経済圏だった上海、南京・蘇州や浙江省の杭州・寧波など15都市に広がる「長江デルタ経済圏」とともに、中国経済を牽引する両輪としての役割が期待される。

2006年5月1日掲載

2006年5月1日掲載