『未完の人民元改革』に対する書評
『中国経済経営研究』2021年第5巻第1号 書評
(露口洋介・帝京大学教授による書評より)
「本書は、人民元をめぐる幅広いテーマをわかりやすく整理して解説し、筆者のエコノミストとしての深い知識と的確な現実認識に裏打ちされた主張が示されている。今後時間がかかるにせよ、人民元為替レート改革や人民元国際化は着実に進んで行くだろう。本書は、研究者、企業家、投資家、政策担当者など、関係するすべての人々が、このような状況にどのように対応すべきかを考える際に、必読の書といえる。さらに、日本にとっては、本書で示されている人民元の未来を見据えて、円の未来がどうあるべきかを考えることが必要である。本書は、その際にも貴重な示唆を与えてくれる。」
週刊エコノミスト2020年7月14日号 書評
(田代秀敏/シグマ・キャピタル チーフエコノミストによる書評より)
「人民元の未来を展望する珠玉の論文を1冊に網羅
「『完全変動相場制』への移行は、中国にとって避けられない道である」
そう宣言する著者は、中国経済分析の第一人者として30年を超えるキャリアを持つ。
その著者が、2004年以降に「市場と政策の動向を観察しながら執筆した人民元に関する論文」を、テーマごとに有機的に配列したのが本書である。どの論文も、再読して著者の慧眼(けいがん)に改めて驚かされる。
著者が05年6月に管理変動相場制への移行を急ぐべきだと主張する論文(第2章)を発表した3週間後、中国は管理変動相場制へ移行した。
また著者が10年5月に人民元の切り上げ再開は近いと予測する論文(第3章第3節)を発表した翌月、人民元の切り上げが再開された。
正鵠(せいこく)を射たのは著者が北京にディープ・スロート(情報源)を持っているからではない。経済学の理論を用いているからである。
分析が理論的なので、中国の現状を日本の経験と擦り合わせるのも、印象論に終わらず、日本経済の分析にも貢献する内容となっている。」
21世紀中国総研 大久保 勲の人民元論壇 第60号2020年6月18日
(大久保勲/福山大学名誉教授による書評より)
「関志雄先生が『未完の人民元改革』を上梓された。この書物の構成は、関先生が2004年以降に執筆された人民元に関する数多くの論文をテーマ毎に分類し、各論文の関係が分かるように章立てし、各部の冒頭に解説を兼ねた導入文を追加しておられる。内容的には、WTO加盟後の人民元切り上げを巡る議論、「管理変動相場制」の実態、「完全変動相場制」への道、チャイナ・マネーの行方、人民元の国際化に向けての課題という五部門に分けて、まとめておられる。
関先生は30年を超える優れたエコノミストとしてのキャリアの中で、人民元に関心を持ち、経済理論を駆使して研究を続けてこられたのであり、人民元に関心のある方々にとって大変参考になる書物である。」
『中国「新常態」の経済』に対する書評
中国経済研究2016年3月号 書評
(田中修/日中産学官交流機構 特別研究員による書評より)
「中国ウオッチャーの著書にみられる1つの傾向として、いくつかの経済データをつまみ食いし、それをもとにあとは自分の見解を延々と展開するパターンがある。これは一見論旨明快で、本が出版された際には、それなりに読者を獲得するかもしれないが、10年も経てば史料的価値はほとんど無くなってしまう。大事なことは、まずそのときの指導部が経済をどのようにとらえ、どのような対策を打っていたかを明らかにしたうえで、それに対してエコノミストとしての評価を加えることである。本書は、その手順をしっかりと踏んでおり、2012年の習近平政権誕生から2015年5月頃までの指導部の経済判断・経済政策を知る貴重な史料となりうる。」...「本書は豊富な資料を駆使し、習近平指導部の経済情勢判断・経済政策を多角的にバランスよく描写・分析している。これは、関氏の実力とともに、氏が所属している野村資本市場研究所の高い調査能力を示すものでもあろう。中国経済への過度な楽観論・悲観論が多い中で、このような冷静な分析に基づく著作は重要である。」
日経ヴェリタス2015.9.27 けいざいを読み解〜く
「要人発言や中国共産党、政府から発表される文書を丁寧に拾い、さらに経済データと組み合わせ、計画がかけ声倒れになっていないかどうかを検証するスタイルを取る。テーマはイノベーションや消費、サービス産業の現状、シャドーバンキング、国有企業改革、一帯一路など幅広い。足元の中国経済の概況をつかむうえで欠かせない要素を過不足なく網羅しているうえ、要人発言や参考文献の細かな記載は、より詳しく調べたい読者のニーズにも沿うはずだ。」
日本経済新聞2015年9月7日 書評
(丸川知雄/東京大学教授による書評より)
「本書は中国経済が直面する問題に対して見通しの良い展望を与えている。」...「本書は中国の公的な政策文書を詳細に紹介しており、中国政府が当面の問題にどう対処しようとしているかを知るには有益である。」
週刊エコノミスト2015年8月11・18合併号 話題の本
「過度な悲観論や楽観論を退けながら、公式見解と実態のギャップを明らかにする手法により、中国経済のリスクの大きさがあぶり出される。」
『チャイナ・アズ・ナンバーワン』に対する書評
月刊資本市場2009年11月(No.291)号 書評
(大橋英夫/専修大学経済学部教授による書評より)
「現代中国の経済分析で知られる関志雄氏の最新刊である。...本書は、この一冊で中国経済の全体像を見渡せるように、実に見事な構成がなされている。」
朝日新聞 2009年12月13日 読書
(天児慧/早稲田大学教授による書評より)
「関志雄は香港生まれの経済学者である。彼は「世界一」を具体的な数字で示した。...問題と対策の指摘も鋭い。たとえば、巨額の外貨準備は米ドル不安により膨大なリスクを抱え込むことになる。彼は外貨を特に「三農(農村・農業・農民)問題」に集中的に使い、それにより格差を緩和し、貿易不均衡が是正できる、と一石二鳥の効果を説く。また従来「漸進的改革」を進めたことで既得権益層が肥大化し、彼らの抵抗により「総論賛成、各論反対」のジレンマに陥っている。打破のためには政治改革を含む「急進的改革戦略」が必要で、そうして初めて真のナンバーワンになれると主張する。この指摘は面白い。」
サーチナ 2009年11月9日 書評
「本書に記されているのは、中国の躍進ぶりと実情を豊富な統計データを用いて描くもので、その一方で「真のナンバーワン」になるために取り組まなければならない数々の課題を明らかにする。」
日本経済新聞 2009年11月8日 読書
「中国が名目の国内総生産(GDP)で世界第2位の日本を抜くのは時間の問題。人民元がドルに対して年率2%上昇すれば2026年にも米中のGDPも逆転する......。中国が今年、自動車の生産、販売でも日米を抜き世界一になる見通しなど具体例を挙げ、こんなシナリオを提示する。1979年にエズラ・ヴォーゲル教授が出版した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の二番せんじにとどまらない中国経済の入門書といえる。」
金融財政事情 2009年10月26日号 書評
(高安健一/独協大学経済学部教授による書評より)
「本書は、建国60周年を迎えた中国経済の実像と将来像を豊富なデータを駆使して、見事に描き出している。...著者は二つの興味深い指摘をしている。一つは、中国の長年にわたる高成長を支えてきた農村からの豊富で廉価な労働力の供給がもはや期待できないこと。もう一つは中国経済が発展するほど、エネルギー・環境問題をはじめとして克服しなければならない課題が増えることである。」
週刊エコノミスト 2009年10月27日号 榊原英資の通説を疑え
(榊原英資/早稲田大学教授による書評より)
「エズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が日本で刊行されたのは1979年。...しかし、客観的に見て、今回出版された関志雄『チャイナ・アズ・ナンバーワン』のインパクトのほうが、そのときの影響よりはるかに大きいだろう。」
Fuji Sankei Business i 2009年10月3日
「国内総生産(GDP)の規模が、2010年にも日本を追い越すとされる中国。...とはいえ、これは全体での数字の話だ。中国の国民1人当たりのGDPは、まだ日本の10分の1程度にすぎない。...このことは、中国国民の生活水準が平均ではまだ途上国レベルにあることを示すが、半面で、今後も後発のメリットを生かし、先進国には実現できない成長も持続しうることを意味している。本書は、そんな中国経済の現状と展望を子細に分析している。」
アゴラ 2009年10月25日 良書悪書
(池田信夫/上武大学大学院経営管理研究科特任教授による書評より)
「本書はタイトルだけ見ると、ありがちな「中国バンザイ本」と混同されかねないが、中身は中国の光と影を客観的なデータにもとづいてバランスをとって描いたものだ。」
『中国を動かす経済学者たち』が「第3回樫山純三賞」を受賞
『中国を動かす経済学者たち』(東洋経済新報社、2007年8月)が財団法人 樫山奨学財団主催「第3回樫山純三賞」を受賞し、表彰式が2008年11月11日に東京都千代田区のホテルニューオータニで開かれた。
受賞理由
(前略)「関志雄によって著された本書は「改革開放の水先案内人」という副題が示すように、中国の情況に見合った理論を使って、有効な政策を説く「エコノミスト」の群像を描いている。1987年の「社会主義初級段階」論による多様な所得制の容認を経て、92年に「市場経済」公認され言論の自由の範囲が広がった現在、異なる理論や学説を唱える経済学者たちが「現在の中国を動かしている」ことを、豊富な情報量と確かな記述によって、説得的に示すことに著者は成功している。新自由主義者と新左派の間の論争、競争と公平という根本問題をめぐる議論など、現在の中国の経済改革の論点と各学者の主張を知ることが出来、専門家にも一般読者にも大いに参考になる書である。
著者はご自身が、中国経済分析に関する気鋭のエコノミストであり、中国経済の現段階における問題が何処にあり、何を解決しなくてはならないかを熟知しておられる。また、香港中文大学および東京大学で学んだ学問の素養の上に、市場経済が機能するための条件を弁えておられる。この著者が中国、香港、米国等で活躍する中国人経済学者たちの論考を丹念に読み、手際よく整理して紹介したのが本書であり、日本の関心層にとって、中国の直面している問題および今後の改革の方向を知るよい手引きとなろう。」(後略)
『中国を動かす経済学者たち』に対する書評
経済セミナー 2007年12月号 書評
(杜進/拓殖大学国際学部教授による書評より)
「本書は、「時代の寵児」である中国の経済学者に光を当てることで、中国における政策決定のプロセスや中国社会の変化の経路について考察している。経済学そのものの強みと限界についても、多くの示唆を含む優れた著書といえよう。」
東方 322号
(柳澤和也/神奈川大学経済学部准教授による書評より)
「本書は、経済学者でありながら同時にジャーナリストとしての役割をも積極的に担っている関志雄氏が、「政策と世形成に大きな影響力を持つ経済学者の主張を紹介することを通じて、中国経済の現状と課題を日本の読者に」伝えるために著したものである。」
週刊エコノミスト 2007年11月13日号 榊原英資の通説を疑え
(榊原英資/早稲田大学教授による書評より)
「関志雄著『中国を動かす経済学者』は経済政策に関するさまざまな議論や主要な経済学者を紹介しながら、歴史的かつ詳細に分析している。日本の経済政策に関する論議や日本の経済学者のあり方と大きく異なる中国のそれを知ることは、中国の政策動向を占ううえで、大変参考になるだろう。」
週刊エコノミスト 2007年10月30日号
(小島朋之/慶應義塾大学総合政策学部教授による書評より)
「本書は、驚異的な発展を遂げる中国経済を理論面だけでなく政策面においても先導してきた12人の経済学者たちの議論、学者たちの相関図や彼らの経歴などを簡明直截に紹介している。」
月刊資本市場 2007年10月(No.266) 書評
(小林和子/(財)日本証券経済研究所主任研究員による書評より)
「著者によれば中国の経済学は、「政治」の持つべき公平性と「経済」の持つべき効率性の連携が可能な新・政治経済学の段階にある。」
週刊ダイヤモンド 2007年9月15日号 今週の逸冊
(井上義朗/中央大学商学部教授による書評より)
「本書は時宜を得た、新しいタイプの中国経済入門といえるだろう。」
日本経済新聞 2007年8月26日 読書
(竹岡倫示/日本経済新聞アジア部長による書評より)
「本書が特に焦点を当てているのは胡鞍鋼、厲以寧、呉敬璉、林毅夫、樊網ら現代中国を代表する十二人の経済学者。その生い立ち、研究成果、政策提言、論争などを詳しく紹介しており、日本には今までにはなかった類の書だといっていいだろう。彼らが今どんな考えを持ち、どんな主張をしているのか。それを知ることは、中国の先を読むことにもつながる。」
毎日新聞 2007年9月2日 東京朝刊
(伊東光晴/京都大学名誉教授による書評より)
「この本は、私たちがほとんど知らなかった多数の中国の経済学者の考えを紹介し、中国経済の実情を伝えてくれる本である。」
『中国経済のジレンマ』に対する書評
論座 2006年4月号 書評
(国分良成/慶應義塾大学法学部教授による書評より)
「中国経済に関しては、関志雄『中国経済のジレンマ』が光っている。関氏は、中国経済が「社会主義初級段階」ではなく「資本主義初級段階」、すなわち「原始資本主義段階」にあり、目標とすべきは「社会主義高級段階」ではなく「資本主義高級段階」であると説く。このプロセスは経済面では対外開放の促進と民営化の促進、銀行改革、人民元改革など数多いが、本質的な問題は共産党の一党独裁という政治問題であり、最終的には政治改革と民主化しかありえないと明快に結論づける。しかし現実には、政治的既得権益層が経済的既得権益層でもあり、本質的な政治改革や民主化の道は依然として険しい。」
読売新聞 2005年11月20日 文庫新書
「香港生まれの気鋭の経済学者が改革開放の軌跡を検討し、2050年までに共産党による一党独裁が終焉し、台湾との平和統一がなされ、アメリカを抜いて世界1位の経済大国になっていると大胆に予想する。」
『中国経済革命最終章』に対する書評
週刊東洋経済 2005年6月18日号 Books in Review
「不思議なマルクス主義国家・中国を直視した本」
週刊エコノミスト 2005年6月28日号 Book Review
(渡辺利夫/拓殖大学学長による書評より)
「国有企業と国有銀行の二つの改革の遅滞が、因となり果となってマクロ経済の非効率性を相乗的に悪化させていく過程が、本書では誰にも理解できる平易さをもって語られる。」
朝日新聞 2005年6月26日
(青木昌彦/米スタンフォード大学名誉教授による書評より)
「二、三年ほど前、「中国脅威論」(経済的な意味での)が高まったとき、著者は中国と日本は経済的には競争と言うより、補完の関係にあると言う冷静な議論をリードした。それから中国における「政治経済的リスク」が耳目を集める時となったが、著者は今どう考えているか。十分な期待をもって本書を読んで良い。」
日本経済新聞 2005年7月10日
(中兼和津次/青山学院大学教授による書評より)
「中国経済の現状認識やそこから導かれる改革提言の多くは、幅広い調査と、また経済学の理論的知識に裏付けられているだけに説得力がある。本書は、ここ二、三年に出版された中国経済の一般向け解説書として最も優れた本だといえよう。」
週刊エコノミスト 2005年8月2日号 榊原英資の通説を疑え
(榊原英資/慶應義塾大学教授による書評より)
「政治改革にも触れて「日本の55年体制は、移行期にある中国にとって、政治改革のモデルになるかもしれない」と述べていることは興味深い。」
日経ビジネス 2005年8月1日号
(伊藤洋一/住信基礎研究所主席研究員による書評より)
「この本は中国に関する多くの疑問に丁寧に解説を加え、簡単に過去を振り返りながら、今後の方向性を見いだそうとしている。」
週刊東洋経済 2005年8月6日-13日号
特集/2005年上半期 経済・経営書ベスト100 第7位
チャイニーズ・ドラゴン 2005年12月27日
著名な経済学者であると同時に、ジャーナリストとしての才能も彷彿とさせる読み応えのある一冊だ
関志雄中文著作『做好中国自己的事』(中国商務出版社、2005年)に寄せられた樊綱先生の序文
日本において長年活躍されている関博士による、一部の日本人の「中国脅威論」に対する分析と批判をまとめた論文集である。所収論文の一部は再録であるが、一部は新たに書き起こしたものである。中国の経済問題と経済発展、アジアと世界経済の構造変化、および中国経済と他の国との関係に関心を持っている方に、ぜひこの本を推薦したい。
本書を推薦する理由は以下のとおりである。
第1に、本書は社会に流行している論調に対して、現代経済学の手法を用いてきめ細かくかつ踏み込んだ理論的、実証的分析を行った専門書である。関氏は長期にわたり、国際貿易、国際金融および経済発展などを研究してきた理論派の経済学者である。近年、「中国脅威論」がもっともらしい観点として日本社会で流行している。このような潮流に対して、関氏は学者としての社会的責任を感じながら、経済学の手法を用いて、中日両国間の貿易と経済関係に対して大量かつ詳細な計量分析を行った。分析による確かな結論に基づき、関氏は中国経済の発展が日本経済にとって「脅威」とはなっておらず、むしろこれからの経済成長(低迷状態からの脱出も含む)に対して、新たな市場とチャンスを提供していると証明した。本書に収録された論文の一部は、日本経済が谷底から脱出する前の2001?2002年ごろに発表されたものである。中国の経済発展、中日貿易および投資関係の前進、「中国要因」による日本経済の復活などの事実は関氏の分析が正しいと証明している。それゆえ、本書を読み終えた後、読者は著者の学者としての見識の高さを感じることだろう。
第2に、本書は日本人の持つ間違えた観点に焦点を当ててはいるが、中日の経済関係を研究すると同時に、中国経済体制改革や中国経済発展などの事柄についても分析と評論を行っている。それゆえ、読者は海外の学者の視点から中国経済を勉強することができる。中国の経済成長は日本企業、日本経済にとって脅威になっておらず、むしろチャンスを提供している。もし、中国経済が持続可能な成長ができなかったら、それこそが日本経済にとって脅威になるのではないか。これまで発表してきた多くの論文を見ると、中国香港に生まれ、日本において長年生活している経済学者である関氏の本当の関心事が窺える。それは、中国経済の持続可能な発展は如何にして実現されるか、体制改革の深化と経済効率の改善は可能か、マクロ経済の安定的発展を維持できるか、中国の優位性に合致する正確な発展戦略がとられるか、ということである。関氏はさまざまな面において、中国経済における現実問題に対して自らの政策提案を提示してくれた。それらの提案は現実性のある具体的なものである。
第3は、本書が研究している主な課題とは、成長している中国経済が日本経済に与える影響である。このような研究課題の意義は、中国が発展段階にある大国として、経済成長の過程において国際市場、諸外国に対してどのような影響を及ぼすか、また経済成長の過程においてどのような問題に直面するか、どのような障害にぶつかるか、ということを知ることにある。これは中国企業と政策当局にとって新しい問題である。以前は、中国の経済規模が大きくなかったため、国際市場や諸外国に対する影響も小さかった。しかし、発展が進んでいくと、これらの問題を解決しなければならなくなる。これらの問題に関しては、海外の人々も考えてはいるが、われわれ中国人がもっと考えなければならない。その際に、グローバル化を念頭に入れながら考えなければならない。これらの問題をあらかじめ考えて対応しておかないと、問題が発生したときに手遅れになってしまう。国際市場では利益の対立による摩擦は常態であり、大げさに騒ぐことはない。これに対して、あらかじめ理解と準備をせず、また摩擦を利用したり、回避したり、正確に対応したりすることもできないことこそ問題である。
関氏とは昔からの知り合いであるが、氏の堅実な理論基礎、研鑽精神および中国経済に対する強い関心には、感服させられる。氏は2000年までは、主に日本円とアジア経済貿易との関係について研究しており、その分野においての権威的な学者である(代表作『アジア通貨の一元化』〔Yen Bloc: Toward Economic Integration in Asia〕)。2001年以降、氏は中国経済と中日経済関係に研究の中心を移し、短期間に大きな成果を収めた。今日、氏はすでに日本経済界における中国経済問題の最高権威の一人であり、国際的にも中日経済関係の権威の一人となっている。また、氏が私の著書を『中国 未完の経済改革』として日本で出版してくださったことに対して深く感謝している。この本の出版に関しては、企画、構成および翻訳のすべてを関氏自らが担当してくださった。私は氏の意見に従い、すでに発表した関連論文に、日本の読者が関心を持ついくつかの新しい内容を補充した。2003年12月に岩波書店により出版され、一年も経たないうちに、毎日新聞社、アジア調査会主催、外務省などが後援する「第16回アジア太平洋賞」を受賞した。顕著な業績を成し遂げた有名な学者である関氏が、非常に多忙なスケジュールの中で、私の著作のために時間を捻出し、企画、編集、翻訳のすべてを手配してくださったことに対して、私は非常に感動を覚える。有り難いことに私達の本は日本において大きな影響を及ぼし、賞までいただいた。氏の期待に答えることができたことを嬉しく思う。
関氏は本書の最後に、「21世紀において、アジア地域の平和と安定は中日関係に懸かっており、中日両国の相互理解を深めることは非常に重要である。私は自分の研究活動を通して、両国のために微力を尽くしたい。もし、ノーベル賞にたとえるならば、私が期待しているのは経済学賞ではなく平和賞である。」と書いている。本書には、関氏のこれまでの努力と成果(私の本の翻訳をも含む)が含まれている。これらの努力は中日経済関係を健全に発展させるためであり、中国に生まれて日本の言論界に活躍しているエコノミストとしての社会的責任感の表われでもある。われわれは、良好な中日関係が中国の発展にとって非常に重要であることを知っている。本書は中日間の平和を促進することだろう。それも私が中国の読者に推薦する理由の一つなのである。
『共存共栄の日中経済』に対する書評
日本経済新聞 2005年2月27日
(白井早由里/慶應義塾大学助教授による書評より)
「中国経済を巡る議論に一石を投じる書籍である。」
週刊エコノミスト 2005年2月22日号
(渡辺利夫/拓殖大学国際開発学部教授による書評より)
「骨太の分析によって日中関係を縦横に解明し、説得的な政策提言が次々と展開される。「関流」いよいよ鮮やかなるべし、である。」
『中国 未完の経済改革』が「アジア・太平洋賞特別賞」を受賞
『中国 未完の経済改革』(樊綱著、関志雄訳、岩波書店、2003年11月)が2004年度毎日新聞社・アジア調査会主催「第16回 アジア・太平洋賞特別賞」を受賞し、表彰式が2004年11月24日に東京都千代田区の日本プレスセンターホールで開かれた。
渡辺利夫拓殖大学教授による受賞作講評より
(『アジア時報』2004年11月号)
樊綱氏は、一国の資源配分は市場メカニズムを通じてもっとも効率的に実現されるという正統派経済学の忠実な信奉者である。本書の真骨頂は、正統派経済学を低所得の開発途上国、かつ計画経済から市場経済への移行国・中国に援用して、この大国に働く理論を理路整然と説き明かしたことにある。(後略)
RIETI2003年アクセスランキング総合一位
RIETIサイト内2003年アクセスランキングで「中国経済新論」が総合一位となりました。これもひとえに応援して下さる皆様のおかげです。皆様のご期待背かぬよう、これからも日々努力していく所存ですので、今後とも温かいご声援、ご指導の程よろしくお願い申しあげます。
※詳細は経済産業研究所のページへ
『中国 未完の経済改革』に対する書評
WEDGE 2004年11月号
(畠山襄/国際経済交流財団会長による書評より)
「著者の『樊綱』は『FANGANG』と紹介された方がピンとくる読者も多いと思うが、中国語訛りの少ないきれいな英語を話す、ハーヴァード大学で学んだ気鋭の経済学者だ。この本の特徴は、現在の中国経済の発展段階を冷静かつ客観的に見据え、いわば地に足の着いた議論を展開している点にある。」
中国研究月報 2004年5月
(菊池道樹/法政大学経済学部教授による書評より)
「今日望み得る最適のコンビによる、日本人向けの中国経済論と言ってよい。」
「現代中国経済に多少なりとも関心を抱く者にとって本書は見逃すことができない書物である。」
日本経済研究センター会報 2004年7月
(木下俊彦/早稲田大学国際教養学部教授による書評より)
「中国を代表する少壮経済学者の"現実の中国"分析」
週刊エコノミスト 2004年2月17日号 榊原英資の通説を疑え
「樊綱の議論が知的にきわめて興味深いのは、一方で比較優位の原則や開放政策のメリットをオーソドックスな経済理論の枠組みから説きながら、プラグマティックな改革路線にある種の理論づけを与えつつ改革論を展開している点だ」
経済セミナー 2004年4月号
「移行の経済学に関する生きたテキストであると同時に、中国経済の現状を知り、将来を展望するための最適の書である」
朝日新聞 2004年1月11日付読書面/アジアネットワーク 書評 2004年1月
(青木昌彦/経済産業研究所所長による書評より)
「樊綱はこの世代(ポスト文革世代)の代表格の一人で、今まで彼らの生の声に触れる機会の無かった読者には、本書は新鮮な読書機会となるだろう。」
「経済改革の過程は『各利益集団が影響しあい、関係が発展、進化し、調整しあうという「ゲーム」の過程であり、単なる(政府による)戦略の実施ではない』と、中国共産党の正統的思想や厚生経済学とは異なる洞察が提示されている。」
チャイニーズドラゴン 2004年1月6日
「海外の研究者は『中国は問題を抱えている』というところで研究を終わらせても構わないが、中国の経済学者は問題解決のための処方箋を提案しなければならない」とする本書は、ポスト文革世代の経済学者の第一人者といわれ、中国を代表する経済学者である著者が「慎重的楽観論」の下に、中国経済が抱える様々な問題に対して示した処方箋。
中国の現状を『まだ問題の解決に取り組んでいる最中で、依然として大きなリスクに見舞われている』としながらも、『改革はまだ完成していないが、改革を続けていけば、完成する日も期待できる、という動態的な考え方を伝えたい』という著者は、現在の経済改革を経済発展と市場移行の段階にあるとし、さまざまな分析を行っている。
中国の政策にも通じる著者の示すこれらの分析と処方箋は、今後の中国経済を見ていく上で必読。」
2003年8月1日 実事求是欄掲載 「『中華思想』それとも『被害妄想』」に対する意見
2003年8月11日 鄒 彦紅 「今こそ歴史問題を清算し、和解を目指すべき時」
この頃、中国の京滬(北京―上海)高速鉄道建設をめぐり、日本の新幹線技術の採用に反対する声が中国のインターネット上で盛んになっています。投稿者たちはみんな反日感情を高めており、一日も早く日本を打倒しようとしています。日中が国交を回復して30年が経った今でも、一部の中国人がまだ戦争の謝罪問題などにこだわり、日本を攻撃しつづけています。
では、この反日感情は何処からきたのでしょうか。もちろんこれは中国の学校教育の内容とメディアによる宣伝とも関係しています。私たちは小さいときから社会主義の愛国教育を受けています。中国の近代史教科書には、日本が中国に対して戦争ばかりしてきたと書かれています。日本が侵略者であるイメージはあまりにも深いのでなかなか消えません。
しかし、この反日感情にはもっと深い原因があるはずです。それは、中国人の強い国に対するコンプレックスにあるのではないでしょうか。戦後、中国と日本はほぼ同じ出発点に立っていました。しかし、30年後、日本は世界の先進国の仲間入りを果たしましたが、中国は繰り返された政治運動により発展のチャンスを逃してきました。面積が日本の26倍、人口が日本の10倍もある大国の経済は日本より何十年も遅れています。中国人が納得できないのも仕方がありません。この負けず嫌いの発想に励まされ、中国経済の急激な発展が遂げられたともいえます。しかし、一部の中国人は自国の遅れを冷静に直視できず、謙虚をもって勉強していくこともできないでいるのです。自分のことを被害者と思い込んで、いつまでも相手に謝罪を求めつづけています。最近、関志雄上席研究員は「『中華思想』それとも『被害妄想』」の中でこれについて鋭く指摘しました。
中国と日本は一衣帯水の隣国です。歴史上ではいろいろなことがありました。しかし、ひたすら歴史の問題にこだわり続ければ、中日の友好関係はいつまでもかげりに覆われたままでしょう。
2003年8月4日 西川栄治
10日から中国外相が訪日しますが、中国に短期滞在の場合のビザ免除が主要なテーマになると報道されています。まだまだ一方通行ですが、日中関係は着実に新たな段階へ進行しつつあると考えられます。
中国と国交がなかった時代にLT・覚書貿易が国交正常化にあたって大きな役割を果たしたことに示されるように、かつて日本人の中には中国に対するシンパシーがありました。しかし、近年の総務省の世論調査では、中国に対し好印象を持たない日本人は好印象を持つ日本人を上回っています。
最近の日本人は中国脅威論を煽り、頑なに中華思想を信奉しています。中国脅威論の根に中華思想があるとする関上席研究員の指摘は卓見です。
新政権発足後、中国の日本観は変わりつつあります。その象徴が『戦略与管理』に掲載された馬立誠論文だと思います。日本も偏狭な考え方からもう脱しなければなりません。まずは、対中認識を早急に改めなければなりません。しかし、それを学校現場でちゃんと伝えられる教員がいないことが極めて不幸です。
『Yen Bloc』に対する書評
Pacific Affairs, Vol.76, No1, Spring 2003.
Journal of Japanese Studies, Vol.29, No1, 2003.
Journal of the Asia Pacific Economy, Vol.7, No.3, 2002.
The China Quarterly, Vol.172, 2002. に書評が掲載される
『日本人のための中国経済再入門』に対する書評・書籍紹介
日中経協ジャーナル 2003年4月号 ブック・レビュー
本書は「日本の中国経済論は感情論が目立ち、冷静な分析がかけている。日本と中国は補完関係にあり、中国の躍進は日本にとってプラスになる」という著者の思いとそれを裏付ける優れた分析力から生まれた。本書の特徴は、経済産業研究所のホームページに掲載されている著者自身が発表した論文や他の中国人研究者の分析や提言がテーマごとに整理され、それぞれコンパクトにまとめられており、極めて読みやすいことにある。読者が興味あるテーマについて拾い読みすることができ、分かりやすく、しかも面白い中国経済入門書として最適であろう。
(紹介記事の転載にあたり財団法人日中経済協会より許可を頂いている。)
読売新聞 2002年12月10日 経済本のツボ
ポイントは--
中国経済の急速な発展とともに 日本国内で高まる「中国脅威論」に、著者は異議を唱える。日本は付加価値の高いハイテク製品が主力であるのに対し、中国は労働集約的な製品に強みがあり、両国の発展段階にまだ大きな格差があると分析するからだ。
日本が、衰退産業の中国への移転と、国内での新産業の創出に取り組み、日中が「拡大均衡」を図ることで互いに利益を得られると主張している。著者は香港出身で、日本滞在も通算20年に及ぶ。「中国経済新論」というホームページでタイムリーな論評を発表しており、本著はそれらを中心にまとめた。
著者の一言--
日本人は自信喪失に陥っており、「隣の芝は青く見える」ということわざがあてはまる。一方で、中国人が自信過剰になっている面もある。日中関係を考える時には、冷静さと客観性を忘れてはならない。
(※紹介記事の転載にあたり読売新聞社より許可を頂いている。 読売新聞社の著作物について)
日経ビジネス 2002年11月4日号 新刊の森
著者が勤める経済産業研究所のホームページ上に掲載してきたコラムを中心に、日中関係や中国経済についての論文を再編集した。中国経済についての俗論や通説に再考を促す。
特に、中国がIT(情報技術)産業をテコに日本に追いつき、追い越すという"中国脅威論"に明確に異を唱える。中国の人口は日本の10倍あるが、GDP(国内総生産)はいまだ日本の4分の1に過ぎない。平均寿命、1人当たり電力消費量などの指標からも、中国は1960年頃の日本の水準にようやく達したところで、先進国への道のりは遠いことを明らかにする。
賃金の低さも、中国の強みではないとする。農村部に膨大な余剰労働力を抱える中国は、当面、労働集約型製品の競争力は維持されるが、逆にそれが生産性の向上を阻み、産業の高度化を遅らせる要因になりかねない。「工業大国」にはなり得ても、ブランド、コア技術などに付加価値を有する「工業強国」になるのは難しいと指摘する。
著者は、日本で中国脅威論が台頭するのは、「失われた10年」を経た日本人の自信喪失の表れだと言う。日本は問題の本質から目をそらさず、衰退産業の中国への移転と新産業の創出を組み合わせた「空洞化なき高度化戦略」を遂行すべきだと主張する。
(※紹介記事の転載にあたり日経BP社より許可を頂いている)
その他
日経新聞(2002年11月17日)短評「過去のコラムをまとめたものだが、「中国の躍進は日本のプラス」という著者の信念がよく伝わってくる。」、週刊ダイヤモンド(2002年12月7日号)新刊フラッシュ「中国『新経済』の実情に迫る」、 世界週報(2002年12月24日号)BOOKs「中国脅威論の虚実を冷静に分析」、経済セミナー(2003年1月号)新刊書紹介「中国脅威論を排する」、asahi.com.ニュースの本棚」などの書評・紹介がある。
日経ビジネス購読者専用サイト「日経ビジネスEXPRESS」に連載している「谷口智彦のon the Globe『地球鳥瞰』」の中で、「中国経済新論」が紹介される(2002年11月6日)
こんなに貴重な情報と分析がタダで読め、勉強させてもらっていいんだろうかといウェブサイトがある。( 中略 )時折見に行っては1つ賢くなったような気でいたら、同じように思う人が多かったと見えて今度一冊の本になった(『日本人のための中国経済再入門』東洋経済新報社)。(中略)時事に即した話題(例えば最新回は「日銀による株買取り措置―参考となる香港の経験」)を信頼の置ける落ち着いた筆致で、バランスよく分析している。また例えば6月21日付「岐路に立つ日本の自動車メーカーの対中投資」など、トヨタ自動車やホンダの皆さんにぜひとも読んでおいてほしかったと思わせる内容だ。
「中国情報局」サイトが毎週月曜日に更新している「今週のお薦め」にて副局長のお薦めとして紹介される(2002年9月16日)
中国情報局>今週のお薦め>2002年9月16日号
経済産業研究所の上席研究員「関 志雄」氏による中国経済の変貌を日本人読者に理解してもらうために立ち上げた「日本人のための中国経済再入門」ともいうべきサイト。政策論争に直接参加している中国人研究者による分析や提言を紹介している他、「中国の経済改革」、「中国と産業と企業」など中国の経済に関する情報を提供している。中国経済を正しく理解したい人にお薦め。(副局長)
アンケート集計結果
まずは、アンケートへのご協力についてお礼を申し上げます。
期間中は毎日送られてくるアンケート内容に一喜一憂の日々を送っていました。
以下、簡単な集計結果および皆様からの意見を紹介いたします。
職業について
- 1位 学者・研究者 29.6%
- 2位 学生 22.2%
- 3位 会社員18.5%
年齢について
- 1位 30代 40.7%
- 2位 20代 18.5%
- 3位 40、50代が同率の14.8%
参考になる欄
- 1位 実事求是 40.7%
- 2位 中国の経済改革 22.2%
- 3位 日中関係 14.8%
印象に残った論文・記事(トップ15)
- 中国脅威論に異議あり(関志雄 2001年9月10日)
- メイド・イン・チャイナの本当の実力(2002年4月26日)
- ハイテク集積地としての北京、上海、深センの比較(中国経済改革研究基金会国民経済研究所 2002年5月20日)
- 良い中国脅威論・悪い中国脅威論(2001年11月16日)
- 国有企業改革の現状と課題(関志雄 2001年11月5日)
- 中国の市場移行の経験と教訓(関志雄 2001年7月30日)
- 中国の台頭とIT革命で雁行形態が崩れたか(関志雄 2002年5月2日)
- 中国経済成長の真実(趙暁 2002年5月24日)
- 東アジア経済における「雁行モデル」の行方(何帆 2002年3月14日)
- 中国のGDPが米国を超える日(関志雄 2001年11月12日)
- 中国の台頭とアジア経済(関志雄 2001年7月30日)
- 日米貿易摩擦から日中貿易摩擦へ(関志雄 2002年1月15日(2002年5月9日改訂))
- 中国経済の台頭と日本(関志雄 2001年8月27日)
- 瀋陽日本領事館事件から見た日本外交の建前と本音(2002年5月17日)
- 補完しあう日中関係(2001年12月14日)
ご意見・ご感想など
日本語で書かれた経済関係の個人サイトで本サイトと比肩できるものはごく少数であり、その意味できわめて高い水準のものであると思います。(学者)
新鮮な切り口がある(報道関係)
私の常識と全く違う観点から、しかも論理的に文章が構成されており、読むと知的興奮を覚えるものが多い(会社員)
中国経済新論をご覧いただく頻度については、半数近くの方が「週に1、2度」、目的についてはご覧いただいてる方の職業を反映して「学術研究」がトップになりました。
「良い点」については「内容が客観的、実証的である」、「中国人の本音が読める」を中心にどの項目についても偏りのない評価をいただきましたが、「悪い点」については、「更新頻度が不十分」という意見が群を抜いておりました。今後の運営の課題とさせていただきます。
2002年7月19日
中国のサイト「中評網」に関志雄の個人主頁が開設される(2002年5月21日)
中国の「中評網」サイトより、関志雄上席研究員の個人ページ開設の打診を受けていたが、この度正式開設の運びとなった。このサイトには数多くの学者の「個人主頁」(個人ページ)があり、中国経済を含む多彩な論文が発表されており、読み応えは十分である。
『中国情報源2002-2003年版』(三菱総合研究所編、蒼蒼社、2002年)にて「中国経済新論」がお勧めサイトとして紹介される
中国情報の得られるニュー・メディア>日本語Webサイト>研究・学術 欄
香港出身のエコノミストで経済産業省経済産業研究所の上席研究員である関志雄氏個人の研究サイト。中国経済についての俗論に再考を迫る「日本人のための中国経済再入門」が売り。「中国の経済改革」、『世界の中の中国」などテーマ分けされた論文群は、気鋭の中国エコノミストたちの論考の翻訳で、中国経済を考えるうえで示唆に富んでいる。週刊連載の「実事求是」は、「もし中国が100人の村だったら」「なぜ日本人は英語が苦手か」などタイムリーな話題を取り上げていて、興味深い読み物になっている。本欄がおすすめする中国経済についてのベスト・サイトである。(編集部)
中国情報の探索・収集術>手っ取り早い中国経済情報収集法>四つの情報源
経済産業研究所:経済産業省所管の独立行政法人である。特に関志雄氏の「中国経済新論」のコーナーをお勧めしたい。ここには、「中国の経済改革」「中国経済学」「中国の新経済」「世界の中の中国」といったコーナーが設けられ、関氏本人をはじめ著名な中国人エコノミストの論評の日本語訳が掲載されている。(田中修/財務省財務総合政策研究所客員研究員)
日本香港協会機関誌『飛龍』第40号(2001年11月発行)香港出身のエコノミスト関志雄氏インタビュー
『中国経済に強い関心、でも脅威論は間違い』
香港出身のエコノミストとして日本で活躍する関志雄(C. H. Kwan)さんの目下の関心事は中国経済の本当の姿を分析し、日本人に伝えることだ。そのために自分のホームページ「中国経済新論」をこの9月に立ち上げたばかりである。中国の経済学者が書いた論文が毎月数本掲載される。内容は日本の新聞や「人民日報」では報道されていないことばかりだ。
「中国脅威論に異議あり」??。関さんはずばりこう言う。「日本における中国経済についての報道に疑問を感じる。この2年間で、日本人の中国経済を見る目が悲観論から脅威論に急変した。中国自身は変わっていないのに。もっと冷静になる必要がある。」
問題はメディアの中国報道だけではない。政府の今年度の「通商白書」も中国経済の台頭を大きく取り上げ、日本にとって強力なライバルになるだろうと警告した。関さんは経済産業省の経済産業研究所(独立行政法人)の上席研究員でありながら、こうした政府の見解に反論を唱えている。
日本が先頭を切り、他のアジア諸国経済がそれに続くという経済発展のいわゆる"雁行形態"が崩れた、と通商白書は指摘している。しかし、関さんは「雁行形態はまだ崩れていない。確信を持ってそう言える。これについては誰とでも戦える」と言う。「日本経済と中国経済は競合関係ではなく補完関係にある」ことを膨大なデータを使って実証的に分析した。
関さんが見るところでは、中国経済の過大評価は四つの理由による。(1)最近の伸び率ばかりに目を奪われて、もともとの水準の低さを忘れている、(2)中国には自前の技術が育っておらず、輸出入とも外資系企業に大きく依存していることを見落としている、(3)上海だけ見て中国を語ることはできない、(4)中国と日本経済は補完関係にあるのに、競合関係にあると錯覚している。
中国脅威論が盛んなのは日本だけで、欧米ではそうではない。これは日本の自信喪失の反映に他ならず、妄想であるか、自分の不振を中国のせいにし、中国をスケープゴードにしているからだ、と関さんは見ている。「80年代のアメリカにおけるジャパン・バッシングと同じで、それでは問題の解決にならない。中国が日本との歴史問題を口にするのと似ている。被害者の立場に甘えるならば、進歩はしない」と言う。日本が自信を取り戻し、問題を解決していくためには、中国に追いつかれない分野を開拓し強化していくことだ。低賃金を武器にした中国に勝てない分野は日本の衰退産業なのであり、いくらやっても勝てない。
ここのところで関さんは日本にもどかしさを強く感じている。特に人材の育成にとって不可欠な高等教育の問題だ。それは自分自身の日本での留学経験に根ざした苦言である。
関さんは1957年香港生まれ。79年に香港中文大学経済学科を卒業し、東京大学大学院経済研究科の国費留学生として来日した。中文大学では日本語も勉強した。日本に関心を持ったのは当時"ジャパン・アズ・ナンバーワン"と言われたように、日本がアジアでは唯一成功した先進国だったからだ。75年頃の夏休みに初めて中国大陸に行き、その現実にショックを受け、真面目に経済を勉強しようと思い、日本の経験が参考になるのではないかと考えた。
しかし、日本の大学には不満が募った。学生は勉強しないし、教授も真剣でない。東大で博士号課程を修了したのは86年、経済学博士号を取ったのはやっと96年だが、学位を取るのにやたらに時間がかかるし、うまくいかなければ半殺しの状態に追いやられる。日本にはアジアからの留学生でこうした"学位難民"となり中途半端な人生を強いられている人がたくさんいるという。苦労して学位をとっても、キャリアが日本内外で保証されるわけでもない。
だから優秀なアジア人学生は日本に留学したがらない。アメリカに行く。関さん自身「日本留学は割りの合う投資だと思わない。残念ながら、香港の後輩には日本は薦めない」と言う。日本人自身が日本の大学院をアメリカの大学院の予備校のように考えていることがとても情けない。
それでも関さんは日本でアジア経済の実証研究を続けてきた。東大での博士号課程修了の86年、香港上海銀行の本社経済調査部エコノミストになり、翌87年、東京の野村総合研究所に入社、経済調査主任研究員、アジア調査室室長などを経て98年経済研究部上席エコノミスト。2001年から経済産業研究所に出向している。
専門はアジア経済、特に貿易・直接投資による相互依存関係で、為替レートの効果を重視している。アジア通貨危機の何年も前から通貨バスケットに関心を払ってきた。ここ数年は中国経済に関心を強めており、中国のことは読めば読むほど面白いという。著書は『円と元から見るアジア通貨危機』(岩波書店、1998年)などいくつかあるが、アジア・太平洋賞特別賞を受賞した『円圏の経済学』(日本経済新聞社刊、1995年)のまえがきには、同書を日本人である妻の祐子さんと長女の恵美さんに捧げると記されている。
(石塚雅彦)
※記事転載にあたり先方の許可を頂いている