RIETI ポリシーディスカッション

第4回:インターネットを非合法化する個人情報保護法:ディスカッションルーム

池田 信夫
上席研究員

「インターネットを非合法化する個人情報保護法」について

匿名希望

BBLセミナー「個人情報保護法でインターネットはどうなる?」では、池田フェローの標記記事を含めて、とても興味深い問題提起を伺うことができました。ありがとうございました。

法案のドラフト作業に携われた江崎氏のお話を伺う限りでは、同法案は、インターネット時代における情報保護に関するナショナル・ミニマムのスタンダードを構築し、利用と保護のバランスをとる、稀代の名法案なのだと思わされます。

しかし池田フェロー、藤原弁護士、安延フェローによる鋭い問題提起と、各氏への江崎氏の応答を聞いたあと、次のような疑問が残りました。第1に、紹介されたような法案の意図や考え方については、多くの国民が支持すると思われるものの、それが果たして法案において十分に規定されているのかどうかについては、各方面から精査する余地があるのではないか。さらに、現法案においては、意図しない問題の発生するリスクが十分に検討されていないのではないか。池田フェローによる検索エンジンの事例ひとつとっても、現法案について、多くの観点からの検討が必ずしも尽くされていないのではないか、と思わされました。

錯綜する利害関係の中で、法案をまとめられてこられたご苦労は並大抵ではなかったのだと思います。現在の法案が通らなければ、事態は産業界にとって都合の悪い方へすすむかもしれない、というご指摘も、わかります。

しかし同法案が、他の代替案よりも優れて効率的な資源配分を行うものだというのでなければ、新たな法案によって企業の負担が増えても、コストは利用者に転嫁されるだけの話であって、そのような代案が現行の法案よりも社会的により支持されるのであれば、やむをえないかもしれません。

藤原弁護士による、公共セクターにおける一体的な情報保護やセキュリテー対策の必要性への指摘とあわせ、この問題が、まだ国民的な議論が十分に尽くされていないことを痛感させられ、拙速よりもよいのかもしれない、と、考えさせられました。

このような問題提起をRIETIにおいて行われたことに、敬意を表します。マスコミが、幅広い角度から、かつ、より深く、この問題で社会を啓蒙し、問題を提起することを願うものです。

2002年10月18日

ディスカッションルーム

2002年10月18日掲載