情報を囲い込む「知的財産戦略」は、インターネット時代には似合わない:投稿意見

池田 信夫
RIETI上席研究員

コラム「情報を囲い込む『知的財産戦略』は、インターネット時代には似合わない」について

匿名希望

ご意見に賛成です。

今の知財戦略は過去の模倣、出来の悪いコピーであり、20年前と今日との環境の変化、彼我の法的・社会的・経済的制度の相違等があまり考慮されていないように思われます。また、我が国独自の視点にも欠けていると思います。
精神活動の結果物である知的財産と独占排他権たる知的財産権とを区別して我が国のあり方を検討すべきではないかと思います。知的財産を尊重しつつ、知的財産の自由な利用、新たな創作への自由な参加等を積極的に促すことは、一企業の繁栄を超えて、我が国全体の繁栄につながると思います。

これに対し、知的財産権の行使、換金化に注力する制度は、一時的に一企業が潤うだけであり、かえって我が国全体の産業の発達は阻害され、リーガルコストがいたずらに増大するだけではないかと懸念します。
我が国の目指す知財立国とは、権利を振り回してお金を集める国家なのでしょうか。権利ではなく、知的財産の自由な利用環境を整え、新たな知的財産を次々にローコストで生み出し、自由な競争の中で繁栄を求める国家であって欲しいと思います。

知的財産戦略本部への疑問

神奈川県 会社員 尾関 勇

仰っていることはもっともで、インターネットを基本としたIT推進を進めていくのであれば、コピーという行為を行う(防止ではなく)ことを前提とした施策を打ち出していく必要があるでしょう。というか、それを押し止めるような考え方は、結局は排除されてしまうであろうと予想されます。また、日本においては訴訟社会でもありませんし、今後もアメリカのような訴訟社会になっていくことは想定しにくいです(なって欲しくもありませんが)。

ここで、素朴な疑問が湧くのですが、池田さんの様な考え方は至極真っ当なものに感じますし、また理解しづらいものでもないと思うのですが、「知的財産戦略本部」の中で携わっている方たちというのは、この様なことは考慮することが出来ないのだろうかということです。また、いろいろな提言もなされていると思われるのですが、このような計画しか作成出来ないのかということです。
安心して任せておく(今回の件を任せた覚えはありませんが)ということが出来ない人たちしか政府組織の中にはいないのかという疑問です。

コメントありがとうございます

上席研究員 池田信夫

みなさん、私の主張をご理解いただき、ありがとうございます。

おっしゃる通り、私の議論はごく常識的なもので、これから「知財強化」で米国に追いつこうという戦略は、いかにも時代遅れです。しかし、これが政府首脳や財界の経営者のコンセンサスであることも事実です。ジャーナリズムも、日経新聞などは何度も「知財強化」を求めるシリーズを組んでいます。

ところが経済産業省でも現場は、むしろ「情報家電」はオープンソースでコストを下げないと、日本の家電業界はマイクロソフトとの競争に勝てないと考えています。つまり時代の流れは、「戦略」を打ち上げた政官財界の首脳陣のお手本にしてきた米国の政策と逆になっているのです。

この首脳と現場のずれは深刻です。IT@RIETIのコラムで安延さんもいっているように、民間からみると「政府はどっちを向いているのかわからない」という感じでしょう。時代錯誤の「知財戦略」を実行に移す前に、もっと若い世代による戦略の建て直しが必要だと思います。

コラム「情報を囲い込む『知的財産戦略』は、インターネット時代には似合わない」について

匿名希望

日頃から池田氏のご意見、興味深く読ませていただいております。
「知的財産戦略」に関する「著作者の権利保護と何の関係もない国内業者の保護策」との指摘、まことに同感です。これはレコード輸入権に関するものですが、「知的財産戦略」全体のトーンを含め、著作権の名の下に、実は産業保護政策、有体にいえば独禁法の適用除外を求める動きが強まっていることが気になっております。中古ゲームソフト問題は最高裁のごく常識的な判断でけりがつきましたが、つい最近も、出版物での「貸与権」の適用を求める作家たち、といいながら恐らくはその背後で真の利益享受者たる出版社が糸を引いている運動が報道されておりました。しかもその核となっているのが、道路公団関係はいかにも市場経済の擁護者らしき言動をしている作家(評論家?)という笑えない事態です。このような問題点は同様の利害関係にあるマスコミには報道されず(公正取引委員会にもっと頑張って貰いたい所ですが)、いかに本来の著作権の概念からずれているといっても、立法によって制度が規定されてしまいます。そうなる前に論争を深めるべく、御活躍されますことを期待いたします。

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