EU・英国・豪州の国境炭素調整の制度設計比較―無秩序な乱立による混乱を避けるための方策の検討―

執筆者 柳 美樹(日本エネルギー経済研究所)/上野 貴弘(電力中央研究所)
発行日/NO. 2026年10月  26-P-023
研究プロジェクト 日本の気候変動対策の総合的研究:GX, EU国境炭素調整と米国の気候変動政策
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概要

欧州連合(EU)は2023年に世界で初めて、炭素国境調整措置(CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)を法制化した。CBAMとは、カーボンプライシングのコストを負担している国や地域が他国からの輸入品に対して税や課徴金を課したりする政策手段であり、政策が緩い国へのカーボンリーケージを防ぐことを目的としている。近年、EUに続いて英国も法制化を完了し、オーストラリアなども国境炭素調整の導入を検討していることから、本稿では、EU、英国、オーストラリアで導入済み、あるいは検討中の制度設計を比較したところ、共通項と相違点が混在していることが分かった。このうち、共通項については、「WTOルールに抵触するリスクを回避すべく同様の設計を志向している場合」「相互運用性を高めるべく、先行するEUの設計に後発国があわせる場合」「実務的な実行可能性が各国共通の制約となって共通化している場合」があった。他方、相違点については「内外無差別などの観点から国内・域内の制度と整合させた結果としてその相違が国境調整にも投射されている場合」「もともとの制度の建付けや政策決定プロセスの違いを反映している場合」などがあった。国境炭素調整の無秩序な乱立を避けるためには、制度設計の共通部分を維持・拡大し、相違点を可能な範囲で解消して、貿易制限的な側面を減じていくことが求められる。