| 執筆者 | 服部 崇(ファカルティフェロー)/毛 品喬(京都大学) |
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| 発行日/NO. | 2026年5月 26-P-006 |
| 研究プロジェクト | 東アジアにおける国際協調メカニズムに関する研究 |
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概要
本稿では、国際レジームのアウトサイダーである台湾が、1980年代後半から2020年代前半までの間、どのように国際的な気候変動規範を受容してきたかを分析する。主要な政府文書に基づき、国連気候変動枠組条約・京都議定書・コペンハーゲン合意・パリ協定という国際的な節目ごとに台湾の気候変動政策の発展過程を跡付ける。台湾は国連非加盟のため気候変動関連条約・協定の締約国となれないにもかかわらず、組織体制の整備、法律の制定・改正、綱領の策定を積み重ね、NAMAs・INDC・NDCの独自策定・公表など、国際規範との整合を意識した政策形成を一貫して行ってきた。こうした政策の展開は、李登輝・陳水扁・馬英九・蔡英文・賴清徳と政権が交代する中でも基本的な方向性を維持しており、締約国とはなれない制約のもとで国際規範を受容するという台湾固有の政策形成パターンを示している。本稿の知見は、規範受容の動因としてインサイダーとアウトサイダーとでは異なる論理が働くことを示しており、アウトサイダーにとっては社会化による内面化に代わり「戦略的正当化(strategic legitimation)」が規範受容の主要な経路となりうるという命題を提示することで、規範ライフサイクル論の射程を拡張するものとして位置づけられる。