| 執筆者 | 山口 晃(RIETI政策分析専門官(政策エコノミスト))/細井 奎吾(RIETI政策分析専門官)/福永 開(コンサルティングフェロー) |
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| 発行日/NO. | 2025年12月 25-P-020 |
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概要
近年、日本政府は賃上げを中核とする成長戦略を掲げているが、「イノベーションが賃金を押し上げるか」に関する国内エビデンスはなお乏しい。本稿は、日本の企業パネルデータに基づき、労働生産性および出願特許件数を用いてイノベーションと賃金の関係を推定する。逆方向の因果を統制するため System GMMによる動学パネル推定を採用し、さらに人件費抑制志向(Labor Cost Suppression Dummy: LCSD)との交差項により企業間での効果の異質性を検討した。主要な結果として、労働生産性が賃金に一貫して正の影響を及ぼす一方、LCSD×生産性の係数が負で有意となり、同程度の生産性上昇でも人件費抑制志向の企業では賃金への波及が弱まることが示された。これらの結果は、持続的な賃上げには、イノベーション促進と並行して企業内のレント配分設計を伴う政策対応が求められることを示唆している。