執筆者 | 福山 宏(元東京出入国在留管理局)/橋本 由紀(上席研究員(政策エコノミスト)) |
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発行日/NO. | 2025年6月 25-P-009 |
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概要
本稿は、政府が積極的に受入れを推進する高度技能人材の在留資格、すなわち「専門的・技術的分野の在留資格」と称される就労資格の政策史である。まず、「専門的・技術的分野」の範囲について在留資格該当性と基準省令の観点から論じた上で、当該分野の労働者の受入れが1990年代以降徐々に拡大した経緯を年代ごとに紹介する。そして各就労資格について、該当する活動の概要、法改正と運用変更の歴史、在留者数の変化などをまとめる。外国人の受入れに関して、専門的・技術的分野においては積極的に、それに該当しない分野においては慎重に検討するという政府の当初の理念は、各界からの要望を受けて繰り返されてきた法律並びに法務省令、告示及び内規の改正によって専門的・技術的分野の在留資格の理念型と共に変容し、突き崩されてきた過程ともいえる。諸外国でも、高度技能人材の在留要件が政権の意向を受けて転換されることは珍しくないが、日本の場合は、政治サイドからのトップダウンよりも、行政サイドが省令等の制定によって柔軟に対応し、実質的な既成事実化ののちに法令の改正に至るというボトムアップ型の変容を特徴とする。