執筆者 | 深尾 京司(理事長)/池内 健太(上席研究員(政策エコノミスト))/長谷 佳明(野村総合研究所)/Cristiano PERUGINI(University of Perugia)/Fabrizio POMPEI(University of Perugia) |
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発行日/NO. | 2025年4月 25-P-008 |
研究プロジェクト | 東アジア産業生産性 |
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概要
本研究は、AIやロボット技術の進展が日本の雇用、賃金、産業構造に及ぼす影響を実証的に分析したものである。独自に構築した職業別自動化リスク指数(Automation Risk Index: ARI)を用い、2009~2019年の産業別パネルデータと組み合わせて、情報通信技術(ICT)資本投資が労働市場に与える影響を明らかにした。分析には、労働時間・賃金・ICT資本集約度の内生性を考慮した3式の同時方程式モデルを採用した。結果として、ICT資本の増加は労働時間を減少させる一方で、賃金に対しては直接的に抑制的な効果を及ぼすことが示された。ただし、ARIが低い産業ではこうした負の影響が有意に緩和されることも確認された。さらに、労働者の属性別に分析した結果、高学歴者や若年層、男性労働者ほどイノベーションの負の影響を相対的に受けにくい傾向が見られた。本研究で得られた、自動化リスクの程度によってICT投資が労働市場にもたらす影響が異なるとの知見は、今後の労働政策や再教育政策にも資すると考えられる。