世界の食料安全保障に対する日本の貢献

執筆者 山下 一仁(上席研究員(特任))
発行日/NO. 2025年1月  25-P-004
研究プロジェクト 我が国における食料安全保障の研究
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概要

人口増加で2050年に食料危機が起きるという主張があるが、世界の穀物の実質価格は1世紀以上も低下傾向にある。人口の増加を穀物生産の増加が上回ったからである。しかし、穀物価格は短期的に高騰するときがある。所得の半分以上を食料消費に充てている途上国の人たちは、穀物価格が3倍になると買えなくなって飢餓が生じる。

アメリカ、カナダ、オーストラリア等の穀物輸出国は生産の半分以上を輸出に向けており、輸出制限を行うことはない。これに対して途上国の場合は国際価格が高騰すると国内から穀物は国外に流出し国内価格も上昇するため飢餓が生じる。途上国の輸出制限はこのような事態を防ぐためであり、国内で餓死者が出ても輸出制限をするなとは言えない。

アメリカ等が輸出国になっている小麦や大豆と異なり、米については、輸出国はインド、タイ、ベトナムという途上国であり、生産量の一部しか輸出されないという極めて不安定な市場である。日本が減反を廃止して大量の米を輸出すれば、世界の食料安全保障に大きく貢献できる。