令和コメ騒動の経済分析

執筆者 山下 一仁(上席研究員(特任))
発行日/NO. 2025年1月  25-P-002
研究プロジェクト 我が国における食料安全保障の研究
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概要

2024年スーパーの店頭からコメが消えるという騒動が起こった。猛暑による精米歩留まり低下という供給の減少やインバウンド消費などによる需要の増加などをきっかけとしたものであるが、この騒動を起こした根源的な原因として1970年から継続されているコメの減反(生産調整)政策がある。農林水産省はコメ不足を認めようとはせず、備蓄米の放出を行わなかった。

猛暑による供給減少やインバウンド消費の増加などは、全体のコメ需給からすればわずかにすぎない。それが大きな価格上昇をもたらした理由はなぜかを説明する。また、農産物の場合には価格が需給調整するはずなのに、なぜコメの端境期に量的な不足が生じることになったのかについても、説明を行う。

減反を廃止すれば輸出を行うことが可能となる。アメリカやEUなどの穀物輸出国のように輸出を行っていれば、国内で消費が増加したり生産が減少したりしても、輸出量を調整(減少)することにより、令和のコメ騒動のような事態は容易に回避することができた。にもかかわらず減反政策が農業保護の手段として使われた理由を分析するとともに、これが国民経済的には正当化できない政策であることを説明する。