執筆者 | 関根 豪政(横浜国立大学大学院) |
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発行日/NO. | 2023年10月 23-P-020 |
研究プロジェクト | 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第VI期) |
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概要
「貿易と労働」問題は長くWTOにおいて論争を引き起こしてきたが、近年、それがFTAにおいて具体的な紛争事例として顕在化する傾向が見られる。その中でEUが、韓国の労働法制を問題視して、EU・韓国FTAの枠組下で提訴したのが韓国-労働組合法事件である。この事件では専門家パネルにより、韓国労働組合法のいくつかの規定が、結社の自由についての原則を尊重することを求める協定第13.4条に違反すると認定された。他方で、韓国が一部のILO条約を批准していないことについては、批准へ向けた努力は存在するとして協定違反は否定された。本件は、貿易協定の下で提起されたものであったものの、貿易との接点が希薄と捉えられる事例であり、今後、本件で争点とされた協定第13.4条の適用機会が増えるとこの傾向は強まることを意味する。また、本件では韓国の履行が注目されたところ、良好と言える履行状況が確認されたものの、それでもEUは労働条項を強化する傾向を示すようになっている。本件はこれら労働条項の動向を把握する上で重要な事例となっている。
※【WTO等国際通商判例解説】は【WTOパネル・上級委員会報告書解説】を承継するものです。