【WTOパネル・上級委員会報告書解説㊴】コスタリカ-生鮮アボカドの輸入に関する措置(DS524)-SPS協定における適切な審査基準と加盟国の説明義務-

執筆者 邵 洪範(成均館大学)
発行日/NO. 2022年11月  22-P-029
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第VI期)
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概要

SPS協定に関するパネル及び上級委員会の解釈の集積により、SPS協定において適用されるべき適切なパネルの審査基準・審査権限の性質が徐々に明確となり、実体的義務の解釈に際して適用される解釈基準・法的基準の枠組みも具体化・定型化されてきた。特に、危険性評価に関する義務や無差別原則に関する義務の適用・解釈においては、加盟国が提示する「論証(理由づけ)」又は「正当化事由」に焦点を当てる方向で判例法理が発展してきており、加盟国が論理的・合理的な説明(科学的根拠に基づくもの)を提示できているかどうかを中心に加盟国の主張が検討・審査されている。本件は、そのような加盟国の説明義務、つまり、SPS協定でいう適切な危険性評価を行い、かつ、それに基づいてSPS措置をとる際に、論理的・合理的な説明(科学的根拠に基づくもの)を提示しなければならない加盟国の義務が改めて強調・確認された事例として評価することができる。また、本件は、これまでの事例において形成・確立されてきたSPS協定に関する審査基準の法理が踏襲・適用された事例であり、審査基準に関する法理形成の軌跡や具体的な事例におけるその適用の仕方を理解・研究するうえでの重要な先例となる。本稿では、本件のパネル報告書における法的争点を整理・概観した上で、本件で提起された主要な論点として、SPS協定に適用される審査基準の性質、ALOPの認定に関する審査基準と加盟国の特権・裁量の保障、及びSPS協定の無差別原則における法的基準と加盟国の説明義務について検討・考察する。