人工知能への信頼-リハビリテーション・ロボットを例に

執筆者 森田 玉雪(桜美林大学)/馬奈木 俊介(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2022年9月  22-P-026
研究プロジェクト 人工知能のより望ましい社会受容のための制度設計
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概要

近年のAI技術の急激な進展とともに、ロボットが人間に近い動作をしたり、人間の意図を汲むかのように動作したりすることが現実化している。それに応じて、ロボットと人間の関わりが、あたかも人間同士の関わりであるかのように変化しつつある。先行研究で紹介するように、古くから人間とロボットの信頼関係について論じられてきたものの、現時点では具体的に何をもって信頼とするのかについて具体的な指針がなく、議論が重ねられているところである。

本稿では、利用に際して複数の当事者がかかわる医療機器であるリハビリテーション・ロボットを取り上げ、その信頼について論じる。医師、療法士、ロボット開発者、患者の四者関係を踏まえ、それぞれの立場からみた信頼できるAIの要素をアンケート調査から分析した結果を報告する。結論として、患者・医師・療法士が求める「低費用」を技術者は求めていないなど、「信頼できるロボット」の要素には四者間で相違があり、また、新型コロナウイルスなどの疫病が流行している時点とそうでない平常時において、それぞれが求める要素にも違いが出ることが示された。少子高齢化に歯止めがかからず、医療分野の人手不足を補うために必要不可欠となるリハビリテーション・ロボットの今後の技術開発に際して、日本ではこのような齟齬を政策的に埋めていく必要があろう。