中国における生産要素の市場化改革―労働力・土地・資本・技術・データの流動化に向けて―

執筆者 関 志雄(コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2022年8月  22-P-020
研究プロジェクト グローバル・インテリジェンス・プロジェクト(国際秩序の変容と日本の中長期的競争力に関する研究)
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備考

初版:2022年8月
改訂版:2023年2月

概要

中国は、1970年代末から始まった計画経済から市場経済への移行過程において、財・サービスの市場化と比べて、生産要素の市場化が遅れている。その結果、生産要素の利用効率が低くなっており、問題解決のために、政府は「生産要素の市場化改革」を経済体制改革の最優先課題と位置付けている。そのマスタープランとして、2020年4月に、「中共中央・国務院のより完全な要素の市場化配分体制とメカニズムの構築に関する意見」を発表し、土地、労働力、資本といった従来の生産要素に加え、技術とデータといった新しい生産要素についても、市場化改革の方向性を示している。その狙いは、要素の流動化と市場による要素価格の決定を促すことを通じて、生産性の向上と産業の高度化を実現することである。目標の達成に向けて、企業などの経済主体の間だけでなく、所有制の間、都市部と農村部の間、地域の間、産業の間についても、生産要素の移動を妨げる要因も取り除かなければならない。それと同時に、要素配分の担い手である企業の市場参入と退出に対する規制緩和も求められる。生産要素の市場化改革を進めるに当たり、土地と国有企業を中心とした公有制による壁を乗り越えなければならない。