執筆者 | 滝澤 美帆(学習院大学)/宮川 大介(一橋大学) |
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発行日/NO. | 2022年3月 22-P-005 |
研究プロジェクト | 企業成長のエンジン:因果推論による検討 |
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概要
企業活動から見た近年の日本経済はどの様に評価されるだろうか。この問いへ正確に答えるためには、共通した手法で計測された他国のパフォーマンスとの比較が有用である。また、こうした比較に当たっては、生産性指標の推移に関する単純な比較に留まることなく、経済を構成する無数の異質な企業がどの様に成長・衰退しているのか、またこうした企業ダイナミクスの下で市場集中度やマークアップなどがどの様に推移しているかに着目した所謂「ビジネスダイナミズム」指標の多面的な検討が効果的である。こうした問題意識を踏まえて本稿では、『経済産業省企業活動基本調査』を用いて日本企業に関する生産性と各種のビジネスダイナミズム指標を計測した上で、共通する手法で計測されたEU諸国の指標(CompNet 8th Vintage Firm-Level Data)と比較する。2000年以降の期間を対象とした比較から、複数のEU諸国において継続的な生産性の改善が観察される一方で、日本における生産性の伸びが2010年代以降停滞していることが確認された。また、多くのEU諸国で観察されている市場集中度の上昇を伴う配分効率性の改善が日本においては見られないほか、日本においては資本集約度の低下も顕著であることが確認された。