執筆者 | 宮島 英昭(ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2021年12月 21-P-020 |
研究プロジェクト | 企業統治分析のフロンティア |
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概要
コロナ後の世界では、株式会社の目的をめぐる社会規範が大きく変化し、かつて株主価値の最大化を企業の目的とする米国型モデルに収斂すると展望されていた世界は、むしろステークホルダー・モデルへの傾斜を強めている。他方、日本では、アベノミクス下の企業統治改革が道半ばの中で、COVID-19のインパクトを受け、それを主導した株主至上主義が厳しい挑戦にさらされることになった。では、日本の企業統治はどこに向かうべきか。我々の理解では、今後の企業統治改革の課題は、「近視眼の罠に陥ることなく株式市場の役割を重視した改革を通じて、イノベーションと経済のダイナミクスを実現し、さらに企業が、社会の持続可能性を考慮する枠組みを創出する」ことに集約することができる。言い換えれば、今後の方向は、単純に米国型に接近することでも、かつての日本型モデルを復活させることでもなく、両者を結合したハイブリッドなモデル、日本型モデルVer2.0のデザインにある。本稿では、こうした観点から、まず安倍内閣下の企業統治改革の経済的帰結をそのビジョンに照らして簡単に確認した上で、日本型モデルVer2.0のデザインのポイントを、企業の目的(存在意義)の再定義、新たな環境下での取締役会(社外取締役)の役割、それに適合した所有構造の設計に焦点を絞って検討する。