都市集積の秩序に基づく地域政策のマクロ的視点

執筆者 森 知也 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2021年6月  21-P-012
研究プロジェクト 経済集積を基本単位とする地域経済分析経済集積の空間パターンと要因分析手法のための実証枠組の構築
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概要

本稿では、都市の(人口)規模・空間分布における秩序形成に関する自身のRIETIプロジェクトの研究成果を概観し、その政策的な意味について議論する。多くの国において都市規模分布が概ねべき乗則に従うことは長く既知の事実であったが、新たに、都市規模分布の形状が都市群の地理的配置と密接に関連することを明らかにした。国内の都市群の地理的配置は、大都市を小都市群が取り囲む「中心地パターン」が再帰的に繰り返される階層構造を持つ。各階層の大都市を中心とした都市群からなる地域に注目すると、各地域の都市規模分布は概ね共通のべき乗則に従う。「国」は国内の階層的地域構造における最上位層の地域に他ならず、国内の各地域では、国全体と概ね相似な都市の規模・地理的配置が実現している。都市規模は、産業構造・家計所得・学歴など様々な社会経済指標と強く関連するため、このような秩序の存在は現象として興味深いだけでなく、政策的にも重要な意味を持つ。どの都市が成長するか、それは椅子取りゲームであり、都市の規模・空間分布自体は維持される傾向にある。都市規模・空間分布における秩序は、地域政策において事実上の制約として認識する必要がある。