混雑管理:日本の改革への欧州の経験からの示唆

執筆者 八田 達夫 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2020年11月  20-P-028
研究プロジェクト 2020年後における電力市場設計の課題
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概要

日本の基幹送電網は、既存の原子力発電所の立地を前提として設計されている。ところが、原発の稼働率が大幅に下がり、送電網の設計時には考慮されなかった再生可能エネルギー電力が、原発の立地点からはかけ離れた地区に立地するようになったため、旧電力会社管区内(地内)での送電線混雑が発生するようになった。この地内での送電線混雑をどう解消するかという混雑管理が、政策課題となっている。

本稿では、欧州の混雑管理方式である「再給電方式」に修正を施せば、日本でも効率的な混雑管理が可能であるということを示す。具体的には、日本で効率的に送電線の混雑管理を行うためには、次の組み合わせが有効であることを示す。①再給電方式を採用する。②インバランス精算に服するすべての事業者には、混雑が発生し得る地区においても、他地区と同様に立地を許可する。③欧州では、FIP補助金は、計画値に対して支給しているが、補助率を大きく設計する場合には、本稿で提案する修正方式を採用する。