執筆者 | 関口 陽一 (上席研究員) |
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発行日/NO. | 2020年9月 20-P-021 |
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概要
本稿では、地域資源である温泉を療養に有効利用したヘルスツーリズム推進による地域経済活性化を見据え、温泉の有効利用を強化する仕組みとして、医師が患者に温泉療養を勧める拠り所となるエビデンスの蓄積・共有の方策について考察する。
温泉療養に医療保険が適用され、エビデンスに基づき温泉を療養に有効利用する仕組みが整備されたドイツ、フランスと異なり、日本は国立大学法人化の影響などにより温泉療養に関するエビデンスの蓄積・共有が難しくなっている。しかし、皮膚疾患への効能で知られる豊富温泉(北海道豊富町)は、エビデンスに基づき患者に滞在を勧める医師の影響力により、温泉利用型健康増進施設認定後に湯治客が増加し、医療費控除申請者数が最も多い。
温泉を療養に有効利用するヘルスツーリズム推進の前提として、医師が患者に温泉療養を勧める拠り所となるエビデンスの蓄積・共有を図る仕組みの強化が望まれる。研究資金を効果的に配分し、研究成果を発信する組織の役割が重要になる。全国的な組織が研究プロジェクトに対する補助金の提供と情報発信を一元的に手掛けるフランスの事例が参考になる。