【WTOパネル・上級委員会報告書解説㉘】インドネシア-野菜等園芸作物及び食肉等の輸入制限措置(D477/478)-複合的輸入措置における輸入制限効果及び正当化事由の認定、 並びに農業協定4.2条とGATT11条の関係-

執筆者 清水 茉莉 (経済産業省)
発行日/NO. 2019年12月  19-P-034
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第IV期)
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概要

本ペーパーは、勢いのある新興国であるインドネシアの保護主義的措置の代表例である輸入規制に関し、規制の複合的側面が議論されたWTODS判断について分析する。本件ではまず、①GATT第11条第1項に不整合な「輸入制限」に該当するか否かに関して、パネルは、実施細則のない個別措置についても不確実性・予測可能性を生じさせることを認め、また、多数の個別措置を構成要素とする複合的・包括的な輸入ライセンス規制全体も、相乗効果を持つ独立した措置として認定するなどして、各種措置について広く輸入制限的効果を認定し、同条不整合性を認めた(上訴されず)。判断基準に新規性がない事例判断ではあるが、保護主義的な輸入規制に対する牽制効果を期待しうる。また、②正当化事由について、パネルが、一部措置につき、GATT第20条(a)・(b)・(d)各号規定の規制目的を「達成できないわけではない(not incapable)」という程度の結びつきすら認められないとして各号該当性を否定した(上訴されず)点も、粗雑な正当化事由の主張を明示的に却下した点で意義がある。最後に、③GATT第11条と農業協定4.2条の関係について、上級委員会が、農産品に対する輸入制限措置につきGATT第11条第1項と農業協定4.2条は同一の義務を規定していること及びGATT第11条第2項(c)は農業協定4.2条違反に対して主張できないことを明確化した。