「事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査」の結果と考察

執筆者 野田 健太郎 (立教大学)/浜口 伸明 (ファカルティフェロー)/家森 信善 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2019年4月  19-P-007
研究プロジェクト 人口減少下における地域経済の安定的発展の研究
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概要

本稿は、BCPに関する企業意識調査から得られたデータを用いて、BCP導入を遅らせる企業固有の要因、情報開示やファイナンス面での取り組み、外部との連携要因、地域金融機関、産業支援機関との関係を含む地域要因を分析するものである。

分析結果によれば、第一に、BCPの策定については、「策定の予定はない」、「BCPについて知らない」の合計が過半数を占めている。さらにBCPを策定したと回答しているにもかかわらず、具体的な項目に対しては、4割弱程度しか実施されていない状況にあり、実効性の観点で課題を残している。第二に、BCPの策定と「オンリーワンのブランド力・技術力」といった企業の競争優位の要因には、つながりがあることがわかった。さらに経営者のマインドとの関係では、BCP策定企業は、リスクの予測可能性(への認識)が高く、平時の影響についてもプラスの効果を意識していることが示された。第三に、BCPが有効と考えられる要因としては、大企業は、CSR、株主からの評価、内部管理などの要因が大きいのに対して、中小企業は、補助金、金融機関からの信頼性、資金繰りなどの実利的な要因が多い。第四に、ステークホルダーからの要請や地域との連携がBCPの策定・更新につながっている結果が示され、特に中小企業においてはその影響が顕著である。第五に、ファイナンス面では、BCPの策定企業は、保険、金融機関からの融資、経営者やその親族などの資金、公的支援などの資金確保の必要性が、非策定企業に比べ低いことが示された。