日本企業の競争力強化に向けた戦略的な調査分析機能と外部知識吸収のあり方:コンペティティブ・インテリジェンスに関するインタビュー調査

執筆者 土本 一郎 (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2018年8月  18-P-015
研究プロジェクト IoTの進展とイノベーションエコシステムに関する実証研究
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概要

ビジネス環境に関する企業の「先読み」向上、競争力の強化とイノベーション実現に向けて、欧米各国、更には最近では中国で戦略的かつ体系的な調査分析機能であるコンペティティブ・インテリジェンス(CI)への注目が集まっている。CIの研究についての国際比較を行うと、日本のCI研究は欧米、更には中国に比べて遅れている。このことから、日本の産業界におけるCIの取組は海外に比べて進んでいないと推察され、グローバル市場での日本企業の競争力の先行きにとって懸念材料であると考えられる。本稿では、日本企業他9社へのインタビュー調査によって明らかとなった日本企業におけるCIの現状や課題について述べる。具体的には、①日本企業でも勝ち組企業ではCIとは認識せずにCI的な調査分析活動を行っている、②他方、そのような企業は例外的な存在で、多くの日本企業は欧米企業に比べて「先読み」能力などの重要な点で劣っている、③日本企業もその企業特性に合ったCI手法を導入することは有意義であるなどである。また、ここでは、日本でCIが低調な原因とそれを克服するための条件や方法論についても考察を行った。CIの導入の可否は一義的には企業の経営方針に基づき判断されるものであるが、日本でのCI普及の政策的意義は高いと考えられ、政府においても一定の役割を果たすことが期待される。①日本企業におけるCIの有効性の確認と産業界との対話、②大学・大学院などの高等教育機関での実践的な人材育成、③日本企業のCI能力向上に向けたプロジェクトの推進や政府系機関の活用などが考えられる。