卸売企業の事業所展開と間接貿易

執筆者 伊藤 匡 (学習院大学)/齊藤 有希子 (上席研究員)
発行日/NO. 2018年5月  18-P-010
研究プロジェクト イノベーションを生み出す地域構造と都市の進化
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概要

本稿は、日本の企業事業所データを利用して、卸売業の事業所展開と製造業の間接貿易における役割につき、特に地方経済の視点を入れつつ観測事実を提示するものである。主な発見事項として、卸売事業所の輸出確率に関して、1)地理的な要因として、本社が都市部にあるかが重要であり、事業所自身の立地の効果よりも大きい、2)地方では輸出確率の規模依存性は小さい、3)同じ企業内に輸出する他の事業所がある方が輸出確率が高い。また、卸売業と製造業と国内の取引ネットワークに関して、4)地方の製造業企業は遠くの都市部の輸出卸売企業に販売して間接輸出するが、本社間の距離に比べ、事業所間の距離は3分の1から4分の1となり、大幅に短い。上記、卸売事業所の輸出確率に関する観測事実は、インフラなど(事業所からのアクセス)より、情報(本社情報や企業内の他輸出事業所の情報)が重要であることを示唆している。また、国内取引ネットワークに関する観測事実は、都市部の輸出卸企業が地方に事業所展開し、仕入先サーチする拠点を作ることによって、サーチコストを削減していることを示唆している。