モデル企業に見るIoTによる中堅・中小企業の競争力強化

執筆者 岩本 晃一 (上席研究員)/井上 雄介 (東京大学)
発行日/NO. 2018年4月  18-P-008
研究プロジェクト IoTによる生産性革命
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概要

昨今、新聞には毎日のようにIoTに関する記事が載るほど、日本はIoTブームといえるが、残念ながら、それはほとんど大企業である。日本の中堅・中小企業の現場に新たに本格的なIoTを全面的に導入し、かつ実績が出た、という事例はまだまだ少ない。中堅・中小企業にIoT導入が進まない理由は、「よくわからない」の一言に尽きる。その壁を乗り越えるため、経済産業研究所では、「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会」を2016年4月から開催してきた。研究会では、モデル企業を取り上げ、検討の途中経過の試行錯誤のノウハウを「全て公開」することで、全国の中小企業の社長に、自社の現実の問題として実感して頂きたいと考えた。モデル企業としては、初年度(2016年度)はまず中小企業の基本形である「製造業の工場の中」をIoTの対象とし、日東電機製作所、正田製作所、ダイイチ・ファブ・テック、東京電機に参加して頂き、得られたノウハウを公開すべく、RIETI Policy Discussion Paper, 岩本晃一,波多野文(2017),『IoTによる中堅・中小企業の競争力強化 in 第4次産業革命』,2017年6月17日として発表するとともに、書籍「岩本晃一・井上雄介編著『中小企業がIoTをやってみた』日刊工業新聞社(2017)」として出版した。
2017年度は、新たにモデル企業3社(日本リファイン、しのはらプレスサービス、金属技研)を加えて、「ものづくりのサービス業」を取り上げ、ノウハウのケーススタディを積み重ねた。当研究会は、東京で行ったモデル研究会であるが、2018年度、当研究会で蓄積された運営ノウハウを活かし、いくつかの地方自治体で同様の支援がスタートする。2019年度にはさらに多くの自治体に広がり、全国展開につながっていくだろう。中小企業へのIoT導入は、米独も苦労しているが、恐らく日本が最も成功するのではないかと思われる。