IoT/AIが雇用に与える影響と社会政策 in 第4次産業革命

執筆者 岩本 晃一 (上席研究員)/波多野 文 (リサーチアシスタント / 高知工科大学)
発行日/NO. 2017年8月  17-P-029
研究プロジェクト IoTによる生産性革命
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概要

本稿は、筆者が研究プロジェクトリーダーを努める「IoTによる生産性革命」研究プロジェクトのうちテーマ4「IoTが経済社会に与える影響」の調査分析結果をとりまとめたものである。

2013年9月、オックスフォード大学のフレイ&オズボーンは、米国において10-20年内に労働人口の47%が機械に代替可能という推計結果を発表した。これを契機として世界中で、IoT/AIが導入されると雇用は将来どうなるか、という研究がブームとなった。

だが日本はそうしたブームとはほとんど無縁で、メディアがフレイ&オズボーンの数字を取り上げ、人口知能は人間の職を奪うか、といった2極対立的な議論を展開するなど、人々の不安を煽ってきた。この数字は本当か? という疑問が本調査研究の出発点である。事実に基づいた科学的で冷静な議論が必要である。

本稿の第2章では、これまで世界中で発表された文献のうち著名なものを引用し、世界の議論の動向を紹介している。数多くの調査分析から、世界の研究者の間では、ほぼコンセンサスが出来上がっていることがわかる。

第4章では、本稿のテーマとなっている課題に、国を挙げて取り組んできたドイツの動向を紹介する。ドイツでは、国全体が強い危機感を持ち、連邦政府が主導し、Arbeiten4.0プロジェクト(英;Work4.0)を実施してきたが、White Paper(2016)を発表し、一段落ついた。

第6章では、IoT/AIがビジネスの現場に本格的に導入され、かつ実績を出している日本企業の現場を訪れ、雇用がどのようになっているか、事実関係の聞き取り調査を行ってきた結果を紹介している。

今後とも、日本における「雇用の未来(Future of Job)」について、事実に基づいた精度の高い科学的議論をする必要がある。