【WTOパネル・上級委員会報告書解説⑲】米国-アルゼンチン産の動物,肉,他の動物性生産品の輸入関連措置(DS447)-輸入解禁要請に伴う審査手続の遅延とSPS協定の規律-

執筆者 石川 義道 (静岡県立大学)
発行日/NO. 2017年7月  17-P-023
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第III期)
ダウンロード/関連リンク

概要

国内で家畜伝染病が発生しても、その後にワクチン接種などを講じることで国際獣疫事務局(OIE)が当該国の全体または一部の地域について清浄と認定する場合がある。そこで輸出国は、SPS措置実施国に対して輸入解禁を要請し、それを受けて輸入国は当該措置の見直し手続(主に危険性評価)を開始することになる。しかしながら、本件のように輸入解禁要請から長期間を経過しても輸入当局が審査手続を完了させない場合(本件では要請から約12年間にわたって審査手続が継続)、その間も措置は継続してとられているため、審査手続の遅延は国際貿易に深刻な影響を与える。そこで本稿では、輸入解禁要請に伴う審査手続の遅延がSPS協定の手続規定(8条、附属書C)に加えて実体規定(2条、3条、5条、6条など)との関係でいかに規律されるかが検討される。その上で、本件パネル判断が「攻めの農林水産業」への転換を目指す我が国の農業政策にいかなる政策的暗示を含むものであるか、分析を試みる。