IT・AI技術と新しい農業経営学

執筆者 山下 一仁 (上席研究員)
発行日/NO. 2017年6月  17-P-017
研究プロジェクト グローバル化と人口減少時代における競争力ある農業を目指した農業・農政の改革
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概要

これまで農業についてバイオテクノロジーなどさまざまな先端技術の応用可能性が指摘されてきたが、農業の振興や発展に貢献することなく終わってしまった。生産技術面での可能性が追及されるのみで経済的・経営的な応用可能性が考慮されなかったことに加え、カロリーの供給源となる最も重要な穀物への適用は少なく、野菜・果樹等農業の一部分野にしか適用できないものだった。しかも、農業生産の部分的な改善にとどまり、日本農業が抱える大きな問題を解決するようなものではなかった。現在推進されているITやAI技術の農業への適用を見ると、これも過去の技術と同じような途をたどりそうな懸念がある。しかし、生産面の改良に焦点を当てたバイオテクノロジーと異なり、情報の収集・分析・活用を行うITやAI技術は農業のシステム全体を改善する可能性を持っている。特に、誰もがアクセスできるオープンなビッグデータを作ることが出来れば、農政改革の実行と相まって、日本農業を発展させる可能性も拓けていくかもしれない。これには、いかにして相互利用的なデータを収集できるか、データ分析などITやAI技術を使いこなす能力や労力を持たない農家や法人をいかにしてサポートしていくのかなどさまざまな課題があるものの、これらを解決することによって、ITやAI技術は、日本農業の発展だけではなく、食料安全保障の確保にも貢献することができるだろう。このような観点から、本稿では、オープンなビッグデータの作成とその農家レベルでの応用を実現するための具体的な政策提言を行うこととしたい。