我が国製造業の産業集積と東アジアにおける日系多国籍企業のサプライチェーン・グローバル化の経済的要因分析:食料品・電気電子・自動車産業のケース

執筆者 徳永 澄憲  (麗澤大学) /阿久根 優子  (麗澤大学) /池川 真里亜  (筑波大学) /沖山 充  (麗澤大学)
発行日/NO. 2015年11月  15-P-021
研究プロジェクト グローバル化と災害リスク下で成長を持続する日本の経済空間構造とサプライチェーンに関する研究
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概要

本稿の前半部では、1995年から2010年までの経済産業省『工業統計調査』の調査票情報を用いて、Ellison, Glaeser and Kerr(2010)に基づき、我が国製造業の集積・共集積状況を計測し、累積立地件数は年々減少傾向にあるが、弱い集積・共集積が存在することを示した。後半部では、東アジアにおける地域資源立脚型の食料品産業、グローバル型の電気電子産業、及びピラミッド型の自動車産業を対象に、東アジアにおける当該日系多国籍企業のサプライチェーンのグローバル化に関して、この地域における当該日系企業の最終財・中間財生産拠点の海外立地選択要因をNEG モデルを用いて実証的に分析した結果、伝統的な立地選択要因である賃金変数、インフラ変数、優遇措置変数とともに、NEG モデルに基づいた市場ポテンシャルやサプライヤーアクセス変数、および垂直的共集積変数が海外立地選択において重要であることが分かった。こうした実証結果から、集積の外部性を享受すべく、日本国内の産業集積度の高い業種の生産拠点や地域内の共集積度の高い生産構造を国内に残し、それ以外の業種の生産拠点では「賢い集約」を行い、イノベーションを伴う新産業クラスターの形成による地域経済の再構築が必要であり、一方、東アジアにおけるグローバルなサプライチェーンの進展において、特に、電気電子や自動車産業の最終財生産拠点の海外立地では、自国市場や周辺地域市場の大きさとともに、部品の共通化を図り、系列以外の日系企業や外国企業に部品を提供する中間財生産拠点の役割が重要であることが分かったので、メガFTAなどの締結による貿易と投資の自由化の促進と共に、日本の企業、特に今まで海外進出経験のない中小企業の進出を手助けする海外進出支援策や現地企業への技術指導の実施や賃貸工業団地の建設などの日系企業におけるサプライチェーンのグローバル化の支援が必要であろう。