執筆者 | 鈴木 將文 (名古屋大学) |
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発行日/NO. | 2011年3月 11-P-011 |
研究プロジェクト | 現代国際通商システムの総合的研究 |
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概要
中国は、WTO加盟を契機として、知的財産関係の制度を急速に整備してきた。しかし、同国における知的財産保護の実状は、なお種々の問題を抱えていることが、多数の国、機関等によって指摘されている。そのような中、2007年、米国が中国の知的財産権関連措置に関しWTO紛争解決手続による二国間協議要請(いわゆる「WTO提訴」)を行い、同事件について、2009年3月にパネル報告書が採択された。本事件は、上記のように国際的に大きな関心を集めてきた中国の知的財産制度に関して、米中二大国が争った点でも注目すべきものであるが、法的観点からは、特に、TRIPS協定の権利行使(enforcement)関係の規定について、WTOのパネルが初めて本格的な解釈を示した点で重要な意義を持つ。さらに、その具体的な内容は、我が国自身の制度について検討を迫るものも含んでいると考えられる。本稿では、同パネル報告書の内容を紹介するとともに、その意義等について検討を行う。