執筆者 | 市村 英彦 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2011年1月 11-P-005 |
研究プロジェクト | 社会保障問題の包括的解決をめざして:高齢化の新しい経済学 |
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概要
高齢化問題は世界共通の問題であり、米国、英国、欧州、韓国、などでは実態解明のため、詳細なパネルデータの構築が進んでいる。
日本は他国に先駆けて高齢化が進んでいること、また高齢者の労働力率が他の先進国より高く維持されていること、健康費などが他国より低く抑えられていることなどから、日本の労働市場、医療、介護の仕組みについて世界から注目されている。
この実態解明のため、経済産業研究所、一橋大学、東京大学が2007年より共同で行っている「くらしと健康の調査」を紹介し、何故このようなデータが必要かを概説する。
そもそも家計の所得、資産、健康、介護すること、されることの必要性、家族関係などを総合的に捉えることなしに、有効な社会保障政策は考えられない。
このようなデータがない場合には財政面に特化した議論だけが行われがちだが、財政面に限った政策評価も強い仮定のもとでなされているという実態を説明する。世界的には新たな政策の評価は構造推定分析によるが、その分析を支えるのがパネルデータである。
そもそも社会保障政策はどうして必要なのか。人々は、どのような暮らしで、どのような意思決定をされているか。不運な状況に対しての保険機能以上のものを社会保障として政府が提供すべきか。そうだとすればそれはどうしてか。人々が非合理的で自分では老後に蓄えないからか。非合理的だとして、どの程度の実証的裏付けがあるか。こういった現実および人間理解に対しての現状得られる最善の知識に基づいて社会保障政策は立案されるべきである。構造推定による分析とそれを支えるパネルデータはこのような人間行動の理解を深めていくために是非とも必要なのである。