危機管理政策の国際比較-危機対応の経済政策論に向けて

執筆者 小林 慶一郎  (上席研究員) /大澤淳  (財団法人世界平和研究所研究員) /矢尾板俊平  (三重中京大学現代法経学部講師) /菊池誉名  (前独立行政法人経済産業研究所リサーチアシスタント) /地引泰人(東京大学大学院学際情報学府情報学環博士課程)/伊藤弘太郎(中央大学大学院法学研究科博士後期課程)/小栗裕介(慶應義塾大学大学院法学研究科博士後期課程)/原田倫世(東京大学大学院医学系研究科博士課程)
発行日/NO. 2008年5月  08-P-002
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概要

本稿は、「新しいマクロ経済モデルの構築および危機時における経済政策のあり方」の研究活動の中で、収集した情報の一部に基づいて、各国各地域の危機管理のシナリオやシミュレーションの内容や公開状況の特徴を紹介するものである。また、日本の国民保護計画について、経済政策的な観点から捉えた場合に得られる示唆も明らかにするものである。

研究プロジェクトでは、伝統的な安全保障、自然災害、感染症の問題について、一般に公開されている日本、東アジア(中国、台湾、韓国)、米国、欧州(英国、ドイツ、フランス、スイス)の危機シナリオを収集し、整理を行った。危機やリスクには、自然災害、感染症、テロや軍事行動といったものから、身近な交通事故や犯罪などがある。本研究プロジェクトでは、特に、マクロ経済政策に関する新しいモデルの構築を目指すという趣旨から、交通事故や犯罪などのミクロレベルのリスクや危機ではなく、マクロ経済に大きな影響を持つと思われる自然災害、感染症、テロや軍事行動に焦点を当てている。そこで、基本的に、各国各地域の危機に対する政府の対策を整理し、比較を容易にするため、東アジア、欧米という形で、地域別に章を構成している。また、感染症に関しては、その流行は、一国の壁を越えて、グローバルな問題となる。そのため、各国間の連携と国際機関の取り組みが極めて重要になるため、感染症の問題は、特に1章を設け、グローバルな問題として情報を整理している。

また、国民保護の視点より、「情報の非対称性」や「情報の不確実性」の問題への制度的対応と人々の危機管理に関するインセンティブメカニズムの設計が必要である、という示唆が得られた。