執筆者 | 福川 信也(東北大学)/張 国益(国立中興大学) |
---|---|
研究プロジェクト | ハイテクスタートアップと急成長スタートアップにおけるアントレプレナーシップ |
ダウンロード/関連リンク |
このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
イノベーションプログラム(第六期:2024〜2028年度)
「ハイテクスタートアップと急成長スタートアップにおけるアントレプレナーシップ」プロジェクト
サイエンスパークの設立と拡大は、台湾の経済発展に重要な役割を果たしてきた。表1が示すように、サイエンスパーク入居企業の売上高および研究開発投資は台湾全体の約二割、約四割をそれぞれ占めており、その比率は上昇傾向にある。本研究は行政、財務、特許データを組み合わせ、台湾のサイエンスパーク(新竹・中部・南部)が入居企業に与える影響を投入、行動、産出の付加効果で評価した。具体的には、サイエンスパークへの移転後、入居企業が研究開発投資や学位取得者雇用を増やし、総要素生産性を改善しているかを検証した。推計においては、異なる企業が異なる時点に入居する点や立地選択におけるバイアスに対応するため、拡張逆確率重み付け法と治療時期が複数時点にわたる差分の差分モデルを使って因果推論を行った。表2が示すように、推計結果から三つの付加効果が確認された。例えば、サイエンスパーク入居後に企業の総要素生産性(イノベーション)は1.215%改善される。先行研究は半導体イノベーションのハブとして名高い、新竹サイエンスパークに注目してきたが、三つの付加効果は中部・南部サイエンスパークに限定したサンプルでも確認された。これらの結果は、大学・公的研究機関との近接立地、優遇税制、補助金、集積の外部性が入居企業の研究開発投資(投入の付加効果)、科学に基盤をおく研究開発戦略(行動の付加効果)、イノベーション(産出の付加効果)を促すことを通じて、サイエンスパークが台湾経済に経済的価値を創出していることを示している。また、推計結果は企業規模や産業による付加効果の異質性も明らかにしており、サイエンスパークの恩恵を最適化するためには入居企業の特性に応じた政策支援が重要であることを示している。

