ノンテクニカルサマリー

石油価格が日本経済と韓国経済に与える影響:株式市場の実証分析と再生可能エネルギーへの示唆

このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

マクロ経済と少子高齢化プログラム(第六期:2024〜2028年度)
「Economic Shocks, the Japanese and World Economies, and Possible Policy Responses」プロジェクト

化石燃料は、日本と韓国の最大のエネルギー供給源である。2023年、化石燃料は日本のエネルギー源の85%、韓国では79%を占めていた。最大のエネルギー源は石油であり、日本のエネルギー供給の38%、韓国のエネルギー供給の37%を石油が担っていた。日本と韓国は両国ともに、温室効果ガス排出量を削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを公約している。

両国はエネルギー安全保障の課題にも直面している。2023年、日本における原油供給の99.6%は輸入によるもので、韓国では98.9%が輸入によるものであった。図1が示すとおり、石油価格の変動は激しい。

本稿では、石油価格が業種別株式リターンにどのような影響を与えるかを分析する。Black(1987)は、業種別株価の変動は、業種別の生産高、利益、投資の変動の前兆であると報告している。従って、石油価格が業種別株式リターンにどのような影響を与えるかを調査することで、石油価格が業種別の売上高、利益、投資にどのような影響を与えるかを明らかにすることができる。

よって、本稿では、石油価格の変動に対する株式リターンの反応を分析することにより、日本と韓国において石油価格が各業種における経済活動にどのような影響を与えるかを明らかにする。本稿は、Thorbecke(2024)の分析結果および追加の政策的含意を記載するために改訂を行った。分析結果は、両国の多くの業種が石油価格変動の影響を受けることを示している。

日本についての実証結果では、グローバルレベルでの総需要ショックによる石油価格上昇は、機械、電子部品、家電製品など世界市場で競争する日本の産業に恩恵をもたらすことが示された。総需要の増加は、これらの産業が生産する財の需要を高める。他方、総需要主導の石油価格上昇は、鉄道、ホテル、レストラン、宅配サービスなど、国内市場向けの産業に悪影響を及ぼす。

また、石油供給要因が主導する石油価格上昇は、複数の日本の製造業企業に恩恵をもたらし、建設やタイヤなど、石油・エネルギーへの依存度の高い産業に悪影響を及ぼす。

韓国の実証結果では、世界的な総需要ショックによる石油価格上昇は、鉄鋼、造船、商用車など世界市場で競争する韓国の産業に恩恵をもたらすことが示された。さらに、総需要要因であれ供給要因であれ、石油価格が上昇した場合、航空会社、薬、食料品店、生活必需品、食糧生産者、産業用輸送機械、化粧品に悪影響を及ぼすことが分かった。

2025年、日本は、2013年比で温室効果ガスの排出量を2035年までに63%、2040年までに73%削減する計画を承認した。同計画には、太陽光エネルギー源を2023年の9.8%から2040年には22-29%に高め、原子力エネルギー源を8.5%から20%に高め、化石燃料エネルギー源を80%超から30-40%まで削減することが含まれている。韓国は、2018年比で温室効果ガスの排出量を2030年までに40%削減することを計画している。石油価格の変動は非常に多くの企業に影響を与えるため、日本と韓国は化石燃料から再生可能エネルギーへの転換において目標をより高く設定すべきである。風力発電、水力発電、太陽光発電を改善させる技術に投資することで、日本と韓国が自国の気候目標を達成しやすくなるだけでなく、企業に対する石油価格変動の影響度合いが低まる。日本と韓国が講じ得る措置として次のようなものがある。

  1. i)北東アジア近隣諸国との再生可能エネルギー取引を拡大させる。
  2. ii)近隣国で発電された電力の受電、蓄電、配電のためのインフラを強化する。
  3. iii)ペロブスカイト太陽電池の研究と採用を通して、日本と韓国における太陽光発電施設の場所不足の問題を克服する。
  4. iv)航空会社に対して、カーボンフットプリントを減らすために、持続可能な航空機燃料を使用し、フライト計画を再編し、降着装置を下すタイミングを遅らせ、燃料効率の良い航空機を使用することを促す。

関税、貿易戦争、地政学的ショックにより、今後も石油市場は混乱し続ける。分析結果は、これに伴う石油価格の変動によって経済が振り回されることを示している。政府は、再生可能エネルギー源への転換を加速してこれに対応すべきである。

図1. ドバイ原油価格
図1. ドバイ原油価格
出典:セントルイス連邦準備銀行FREDデータベース
参考文献