執筆者 | 新井 恒介(慶應義塾大学)/代田 豊一郎(北海道大学)/藤原 一平(ファカルティフェロー) |
---|---|
研究プロジェクト | ⾃動化(robotization)が労働市場およびマクロ経済に与える影響について |
ダウンロード/関連リンク |
このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
マクロ経済と少子高齢化プログラム(第五期:2020〜2023年度)
「⾃動化(robotization)が労働市場およびマクロ経済に与える影響について」プロジェクト
本研究では、日本ロボット工業会が作成する「ロボット産業需給動向」と厚生労働省が作成する「賃金構造基本統計調査」を用いて、1980年から2015年の間に、日本において、ロボットの導入が促進されるにつれ、どのようなタスクが増加、ないし、減少したのかを明らかにする。
具体的には、Acemoglu and Autor (2011)による5分類タスク指標((i) 非ルーチン-分析的、(ii) 非ルーチン-対話的、(iii) 非ルーチン-マニュアル、(iv) ルーチン-認知的、(v) ルーチン-マニュアル)の日本版と賃金構造基本統計調査を用いて、それぞれの産業別に、どのタスクの労働者が増減しているか、を表す指数を作成する。そして、その指数が、ロボット産業需給動向より求められる産業別ロボット資本に、どのような影響を受けてきたのかを明らかにする。
推計の結果をみると、ロボットの普及率が高まると、ルーチン・マニュアル・タスクは減少するが、認知タスクは相対的に増加していた。すなわち、ロボット化は、同じようなタスクを行っている別の職業への移動を促したわけではなく、雇用の失われた職業とは別タイプのタスクを行っている職業を相対的に増加させたことがわかった。
以下の図(本文中のFigure 7)は、この推定結果のインプリケーションをグラフで表現したものになるが、産業用ロボットの導入が進展した、一般機械、電気機械、輸送機械では、1980年代にルーチン・マニュアル・タスクと非ルーチン・マニュアル・タスクが減少し、代わりにその他のタスクが増加したことがみてとれる。