ノンテクニカルサマリー

バブルを伴う内生的景気循環

執筆者 浅岡 慎太郎 (京都大学経済研究所)
研究プロジェクト 市場の質の法と経済学に関するエビデンスベースポリシー研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

法と経済プログラム(第四期:2016〜2019年度)
「市場の質の法と経済学に関するエビデンスベースポリシー研究」プロジェクト

背景

一般的に、日本経済も経験したようにバブル経済になると景気がよくなることがよく知られている。しかし、バブル経済になっても景気が低迷したままである場合がある。例えば、中国では、2014年以降株価や住宅価格が急上昇したがGDP成長率は2006年以降低迷したままである。一方、2006年以前では中国経済は好景気を伴うバブル経済も経験した。本研究では、この中国の例、つまり、景気の良し悪しに関わらずバブルが常に存在する場合があることを説明するマクロ経済モデルを構築する。


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分析と結果

本研究では、一般的な世代重複モデルを用い、2つの経済を分析する。1つは、若年期に銀行が家計へ貸付ができないケース、もう1つは若年期に銀行が家計へ貸付ができるケースである。また、景気変動を伴う均衡経路を導出するため、生産部門に1期間独占モデルを導入する。

主な結論は、若年期に銀行が家計へ貸付できる場合、バブルを伴いながら高い経済成長率と低い経済成長率を行き来する均衡経路が存在する。この結果は、景気に関わらずバブル経済となる中国の例に該当する。一方、銀行が家計に貸付ができない場合、このような均衡経路は存在しない。これらの結果は、若年世代にとって銀行からの借入が容易である場合、景気変動を伴うバブル経済に陥る可能性を示唆している。これは、バブル経済と若年世代に対する銀行融資制度のあり方について新たな知見をもたらす。