通商システムとガバナンスに関するサブグループ研究会

第8回研究会

概要

日時:

2013年11月28日(木)

場所:

経済産業研究所 1121国際セミナー室(経済産業省別館11階)

議題:

1)透明性に関する議論について-通商交渉、投資協定・FTA、国際的金融規制との関連
発表者:西村あさひ法律事務所 弁護士 小野 傑氏
配付資料1 [PDF:229KB] / 配付資料2 [PDF:257KB]

2)越境データ流通について
発表者:中富道隆コンサルティングフェロー
配付資料1 [PDF:154KB] / 配付資料2 [PDF:400KB] / 配付資料3 [PDF:784KB]
参考)http://www.brookings.edu/research/papers/2013/02/25-internet-data-flows-international-trade-meltzer

質疑・議論

透明性に関する議論について
  • 金融の世界は、貿易に比較して、首脳の関与も強く、また、G20を中心とした意思決定のガバナンスがしっかりしているのではないか
    (←首脳の関与は、G8でも首脳からの指示があり得るはずであり本質的な差はないように思う)。
  • WTOでは、途上国の反対で意思決定が出来ないケースが多いが、なぜ金融ではうまくいくのか
    (←金融危機(リーマン危機)がよかったのではないか。金融では、G20に危機感の共有あり)。
  • WTOについては、G7の枠組みがあったのになぜ機能しないのか。
    (←通商でも金融でも本質的に違いはないのではないか(注 G7では、貿易がテーマになることはほとんどなし。メンバーも、外務・大蔵大臣。とのコメントもあり))。
  • 通商交渉で交渉中に情報開示しないと、議会で批准が困難となるのではないか
    (←議会で批准が止まることはほとんどなし)。
  • 米国の場合には、ファストトラックの仕組みがあるので、通商協定を通過させることは困難ではない。ファストトラックがあることが前提だが。
  • 米国では、74年通商法(88年法に踏襲)で産業界の代表に通商交渉の内容へのアクセスが認められている。日本とは産業界への説明の仕方が違う。
  • 産業界は、最近の通商交渉(メガFTA)については透明性が低いと感じているが他方で、びっくりするような結論にはならないだろうという期待感を持っている。それよりも、メガFTAの結論を見越しての対応準備に強い関心あり。
  • 金融の世界の意思決定は貿易の世界にも大変に参考になる。金融・貿易の双方を比較したアプローチは極めて重要
    (←バーゼルのパブコメ手続き、市中協議書のような手続きは重要。米と欧のシステムの違いを調和する作業が続いており、日本も制度が違うので置いて行かれないように発信を続けている。(たとえばリスクリテンション問題))。
越境データ流通問題

【越境データ流通問題についての最近の議論の紹介】

  • 日本の個人情報保護法は、国内への適用だけを考えている。海外に適用されないので、海外での個人情報保護は緩い。たとえば海外支店は適用外。
  • ビッグデータなどの活用について、個人情報の保護の側面からだけ議論すると制約が大きくなる。医療データ等もっと有効に活用できるシステムが必要。
  • 日本の個人情報保護法は、個人情報の観点から整理しており、データの活用に着目した整理ではない。また、域外事業者の扱いについても議論が必要。
    来たるべき個人情報保護法の改正に向けた重要論点。
  • 医療情報については、患者からの同意に加えて医師の同意が必要なのか、医者しかデータを扱えないのかなども要議論。
  • ビッグデータについては、納得できる使い方であることが必要で要議論。
    PII(personally identifiable information)以外のデータ活用について、米欧の議論を見極めて対応の必要あり。
  • 越境データ流通の自由と国内流通の自由との議論が結びつくかどうか。もし結びつくとすると、非常に大きな議論となることは確実。日米通商原則程度のレベルにとどまる議論であればたいしたことはないが。
  • ローカライゼーション義務付けについて。米欧は域外適用の実力があるかもしれないが、通常の国は域内にデータをとどめておかないといざというときに、モノを押さえられない危機感あり。国外に持ち出されたら終わり、という感覚。ビジネスの観点からは、越境データ流通がより自由であるべきだが、政府の立場から同じことがいえるとは限らない。
    (←PIIなどデータの性格に着目した規制・議論が必要)。
  • そもそも、インターネットへの規制はない方が良いという立場の議論と、規制は当然という議論とが大きく対立しているのではないか。越境データ流通の自由は前者の議論
    (←yes。ITUドバイ会合等で鋭い対立あり。越境データ流通の自由の議論で米欧は対立することが予想されるが、それ以前に、更に大きな対立あり)。
  • 越境データ流通の問題は個人データと深く関連。他方、ビジネスデータの保護に関しては、最近、プラントの設計情報のコピーなどについて、十分な法的保護手段がないことが明らかになりつつある。不正競争防止法の適用などだけでは不十分。生産プロセスそのものに関する情報をどういう形で守るかは、日本の競争力にとって死活問題。その重要性を強調したい。
  • 越境データ流通の自由の問題については、なぜデータ流通がうまくいかないのか、その理由の分析と解決策に関心大。越境データ流通の自由の議論がどういうフレームになり、何を解決しようとしているか、各論を見て議論の方向性を見極める必要あり。