産官学連携で進める再エネ新技術開発―世界と勝負するために

開催日 2020年1月29日
スピーカー 瀬川 浩司(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻教授)
コメンテータ 東野 康明(丸紅株式会社電力・エネルギー・金属グループ管理部部長補佐)
モデレータ 安藤 晴彦(RIETI理事)
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開催案内/講演概要

気候変動への取組が議論される中、世界的に再生可能エネルギー発電の導入が進んでいる。太陽光発電においては日本メーカーの競争力低下が取り沙汰されているものの、次世代太陽電池として近年非常に有望な芽が出てきている。軽量・高効率かつ低コストで製造可能なペロブスカイト太陽電池は、従来設置できなかった建物の壁や曲面への設置を可能にし、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大が期待される。本セミナーでは、ペロブスカイト太陽電池研究の第一人者である瀬川浩司教授から、最先端の研究開発の動向と産学連携の取り組みについて説明いただき、東野康明部長代理から、自ら手がけられた世界最大のスワイハン太陽光発電事業を例に、総合商社として展開する再生可能エネルギー発電ビジネスについて解説いただいた。

議事録

研究成果実用化に向けての取り組み

瀬川浩司写真世界で温室効果ガス排出量を実質マイナスにする動きが強まっており、その実現に向け風力、地熱、太陽光などを利用した再生可能エネルギーの活用が期待されています。本日は、次世代高性能太陽光発電として注目されるペロブスカイト太陽電池の研究開発動向と将来展望についてお話しさせていただきます。

従来の太陽電池開発は、メガソーラーでも屋根置きでも「発電効率」ばかり考えてきました。これからは発電効率だけでなく、出口を見据え使用目的に応じた技術開発に取り組まなければなりません。例えば、建材一体型太陽光モジュールの場合には建材に必要な特性を考慮すべきですし、車載型であれば車の移動特性やデザインにマッチした機能を織り込まねばなりません。また、今後の成長が期待されるIoTやセンサーやフィルム型フレキシブル・デバイスに組み込むとすると、それに適応したデザインを考える必要があります。われわれの研究所室では社会環境の変化や時代の潮流を鑑みつつ、革新的低製造コスト太陽電池の研究を幅広く行っています。

一方、研究成果の実用化を進めるためには、研究のみならず社会連携や環境エネルギー政策プランニングも重要でありNEDO、JSTなどとも連携しながらさまざまな試みを行っています。2009~14年に行った内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)では、低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発を進めるかたわら、NEDOのバックアップを得ながら当研究センター内に有機系太陽電池技術研究組合(RATO)を設け、20社近くが製品化に向けて活動しました。そのうち3社がIoT向けのオフグリッドのエネルギーハーベストデバイスの開発に成功し、4社がペロブスカイト太陽電池の研究開発を進めています。

また、環境・エネルギーに関する知識の普及、この分野における人材育成の一環として、東京大学教養学部に環境エネルギー科学特別部門を設置しました。2007年の新設から5年間はNEDOの支援をいただき、これまで多彩な教育プログラムを提供してきました。加えて、新技術や研究成果を産業化につなげていくためにも、産学連携の一層の深化が重要だと考えています。東京大学の中にビルを建設し、他大学(含私立大学)や企業研究室も1つ屋根の下で共同研究に取り組む融合スタイル(集中研究室)を日本で初めて実施しました。FIRSTプロジェクトでは、この集中研究室で多数の製造メーカー、大学、研究機関と共に研究活動を行いました。

研究成果の1つに、蓄電池機能を内蔵した太陽電池の開発があります。印刷工程を利用して作製したもので、花びらが蓄電池、葉が太陽電池になっています。電気がたまると花びらが白から青に変わり、放電すると白くなるものです。これまでは電池残量が確認できずに定期的にバッテリーを交換せねばなりませんでしたが、この技術によってバッテリー残量を可視化できます。今までの太陽電池のイメージを覆すような新しいものとして、海外でもこの研究成果が取り上げられました。

最近はオフグリッドエネルギーハーベストデバイスにも力を入れています。環境発電(身の周りのわずかなエネルギーを電力に変換する発電)には、光発電、熱発電、振動発電とさまざまありますが、この中で一番安くて使いやすいのは光発電です。2014年、リコーは室内光で26%の変換効率を持つ、完全固体型色素増感太陽電池の開発に成功しています。製品化には時間がかかりましたが、1センチ角程度のチップ内部に太陽電池を6直列につなげたもので、1センチ角で4ボルト以上の電圧が得られます。リコーは、2016年には、IoT端末向けの固体型色素増感太陽電池の応用に成功し、先日、そのモジュールの量産を開始すると公表しました。基礎研究から実用化まで約10年はかかるというのが私の実感です。現在こういったものを活用しつつ、無線送電とも組み合わせて幅広い事業につなげる活動にも取り組んでいます。

世界が注目するペロブスカイト太陽電池

「ペロブスカイト」とは結晶構造の種類の1つですが、これは非常にありふれた構造です。有機金属ハライドペロブスカイトの場合、Aサイト、Bサイト、ハロゲンの3種類の元素から構成されます。その一番の特徴は、メチルアンモニウムをヨウ化鉛の骨格が取り囲み、有機と無機のハイブリッド構造で構成されている点です。ヨウ化鉛単体では発電しませんが、ここに有機分子が入ることで劇的に物性が変わります。

ペロブスカイト太陽電池の中のペロブスカイト層は光吸収力が強く、薄膜でも光を十分吸収します。わずか350ナノメートルと、1ミクロンにも満たないほどの薄さです。少ない材料で作製できるため、資源小国の日本にとってはとても好都合です。このペロブスカイトの主要元素のヨウ素は日本が世界2位の産出量ですし、自動車の鉛蓄電池1個分の鉛でペロブスカイト太陽電池1ヘクタール分になります。

太陽電池には、シリコン系、化合物半導体系の無機物を原料とする無機系、有機物を原料とする有機系があります。有機系太陽電池は有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池に大別されますが、有機薄膜太陽電池は2種類の有機材料を混ぜ合わせて作る固体で、色素増感型は電解液を使うタイプです。この両者の利点を併せ持つものがペロブスカイト太陽電池で、リコーが実装化した完全固体型色素増感太陽電池も同じタイプです。

ペロブスカイト太陽電池の研究において、2012年に大きな展開がありました。英国のヘンリー・スネイス教授が、ペロブスカイト構造を利用した太陽電池で10.9%の変換効率を出しました。一般的な太陽電池は電子が動くn型半導体と電子の穴(正孔)が動くp型半導体が積み重なり、これらの電荷キャリアが相互に移動することで電流が流れます。

ペロブスカイトは不純物を含まない半導体であるにも関わらず、正と負の両方の電荷キャリアを輸送できる両極性を有しています。つまりn型およびp型の両方の半導体として作用するわけです。光を電気に変換するには電荷を分離する必要がありますが、ペロブスカイトは単一の物質で効率よく電荷分離が行われるため、光電変換効率を高めることができます。

製造も極めて簡単で、基本的には「塗る」工程で作製できます。ガラス基盤上にスピンコート(回転塗布)し、アニール処理(ゆっくり冷やす)を施せば発電層が完成です。材料が安価で、低コストで生産可能です。このようにペロブスカイトは太陽電池として理想的といえます。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度の期間満了に備えて、コスト的に自立できる多接合型太陽電池やペロブスカイト材料を用いた技術開発プロジェクトを2014年にNEDO主導で発足しました。これは2030年までに1キロワット時あたり7円の売電価格と25%のモジュール変換効率を目標とするものです。

このペロブスカイト太陽電池プロジェクトではパナソニック、東芝、積水化学工業、アイシン精機などの企業に加え、6つの国公私立大学と2つの国立研究所が参加しました。東京大学の中に集中研を設置し、産学連携を通して日々議論を深めていきました。2016年には政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」にもペロブスカイト太陽電池実用化に向けた技術開発が組み込まれ、次世代太陽電池として国内外から注目されてきました。

2018年12月31日の日本経済新聞の1面に、世界の研究者が最も注目する最先端技術の研究テーマランキングが掲載されました。これはオランダの学術出版社エルゼビアが持つ論文データを基に閲覧数や論文シェア率を点数化してまとめたものですが、ペロブスカイト電池が世界で最も注目される研究の1位に選ばれています。

しかしながら、ペロブスカイト太陽電池の論文発表では中国が4割を占めています。中国はこういった先端技術に豊富な資本と人財を投入しています。ペロブスカイト太陽電池の研究者だけでも1万人ほどが携わっているそうで、日本は100人規模ですので、100対1で勝負しているような感覚を覚えます。日本は論文シェア率では第4位ですが、技術で勝負するため、ペロブスカイト太陽電池を太陽光発電の一丁目一番地(最優先課題)に掲げ、経済産業省のバックアップを受けながら技術開発に取り組んでいきます。

ペロブスカイト太陽電池の技術開発をめぐる状況

ペロブスカイト太陽電池の製造には膨大な材料と構造のバリエーションがあり、単純なシリコン結晶を用いたものとはまったく異なります。透明導電電極の表面処理、ナノポーラス(多孔質)構造、ペロブスカイト層の製法などなど多彩な製造方法を掛け算するとなんと4万通りを超えます。

ペロブスカイトの変換効率を上げるためには組成制御が必要です。バンドギャップや酸化ポテンシャルを調節することで効率を上げることができますが、セシウムやルビジウム等の希少金属を用いた製法が世界のトレンドとして報告されています。これらを含有することでエネルギー変換効率は向上するものの、量産するには高価なため、われわれはカリウムを使用しました。

ペロブスカイト太陽電池モジュールの作製方法ですが、まず透明導電基板にレーザーエッチングでパターンを作り、短冊に切り離します。その上に原料になる緻密層、メソポーラス層、ペロブスカイト層、ホール輸送層を積層して、全面に塗ります。その後、2回目のレーザーエッチングをかけて切り離します。最終的に金属電極を蒸着し、3回目の切り離しをするとモジュールが出来上がります。非常に簡単です。

東京大学はミニモジュールで20%を超えた変換効率を2019年に達成し、世界最高記録を樹立しました。また、パナソニックは30センチ角のモジュールを、インクジェットを用いて製作し、16%の変換効率を実現しています。同様に東芝も大きなセル面積のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発しており、さらなる大面積化に取り組んでいます。

積水化学工業は、金属箔の上にペロブスカイトを積層する技術を開発しています。住宅用途等を考えた際に延焼防止になるというメリットもあり、ロール・ツー・ロール製法で製品化し、すでに国内で実証実験を開始しています。従来の太陽電池と異なりペロブスカイト太陽電池は薄くて軽量なため、これまで設置できなかった建物外壁や曲面にも利用できます。

アイシン精機は、ペロブスカイト材料を均一に塗布するスプレー工法の技術開発に取り組んでいます。もともと日本は精細で優れた塗料技術を持っています。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)や車のボディにも太陽電池を利用することを考えると、今後そういった技術が欠かせません。このスプレー技術はおおむね300~400ナノメートルの膜厚で、大面積モジュールの均一塗布を可能にします。すでに17%の変換効率も出ています。さらに金属電極を使わず、カーボンを吹き付けて電極を作る技術も開発しており、これによって究極の低コスト太陽電池の製造が可能になります。

製造装置費用、パワーコンディショナー費用、流通コストを除いた1キロワットあたりの材料コストは、ざっくり1万円から1万6000円ほどで済むため、材料だけで考えると使用期間を短めの10年にしたとしても1キロワット時あたりのコストは2円未満と、極めて安いものです。

現在、世界でペロブスカイト太陽電池の開発競争が過熱しています。われわれの研究室所では24.9%の変換効率が出ていますが、世界ではついに25.2%の変換効率が出ています。今ペロブスカイト太陽電池より高効率なものは単結晶のシリコンしかありません。薄膜太陽電池、化合物半導体系のものよりも変換効率が高くなっています。

併せて、タンデム型太陽電池も期待されています。ペロブスカイト・オン・シリコンと呼ばれ、シリコン太陽光電池上にペロブスカイトを吹き付けてタンデム(直列)にすることで変換効率を上げることができます。現状28%ですが、35%を目指せることも分かっており、こういった技術をメガソーラー、住宅向け、車載、IoT向け等、多様な用途に活用していきたいと考えています。

産学連携で進める再エネ新技術開発

一方、このような技術開発で優れた製品を作るだけでは、大きな市場の獲得にはやはり限界があるため、パナソニックと東京大学で組織連携を行い、2050年の仮説未来からバックキャストで考えた2030年の世界をデザインする取り組みを進めています。パナソニックは電池事業のみならず、モビリティや住宅、スマートタウンプロジェクトも展開しています。そういった企業とも連携しながらさまざまな産業を起こす活動を行っているところです。

日本を取り巻く環境は厳しいですが、各製造メーカーが持つ独自の技術や強みをうまく組み合わせながら、このプラットフォームからスピンアウトして新たな事業を起こしていくことがこのコンソーシアムの基本戦略です。東京大学とパナソニックを軸に、多くの企業と共に事業戦略を練っています。

国際連携で進める再生可能エネルギー事業

コメンテータ:
アラブ首長国連邦(UAE)は民間電力開発が盛んな国ですが、初の太陽光発電事業を弊社で受注し、スワイハン地区で世界最大級のギガ・ソーラープラントの建設を進めてきました。UAEではこれまで10件の入札案件のうち5件を弊社で受注しており、弊社にとって同国市場は非常に重要な市場です。

2016年の入札には、イタリアのエネル社、フランス電力、UAEの政府系環境ファンドも含めて20社近くが参加しました。最終的に7グループに分かれての入札になりましたが、当時、弊社は大型太陽光発電の実績がほぼなく、市場からは最有力視されていませんでした。

そんな中で、中国のパネルメーカーと連携し、可能な選択肢を全て洗い出しながらひとつひとつ実行していったことが勝因につながったと思っています。共同事業者であるジンコソーラー社のパネルを使うという約束はしておらず、入札のぎりぎりまで複数のパネルメーカーと交渉を重ね、費用と性能の面から最終的に彼らのパネルを採用することにしました。

運転および保守点検においても、可能な限りの省力化、ロボット化を進め、中近東の太陽光発電で初めて人に頼らない清掃ロボットを導入して人件費を削減しています。こういった細かい積み重ねを全方位で実施し、最終的に1キロワット時あたり2.4セントの発電コストで契約しました。

日本の電力価格と比べると大きな開きがあるように見えますが、日射量が違うために固定費を割る分母が日本とアブダビではまったく異なります。事業形態としても事業者は25年をサイクルに採算を計算しますので、比較的タリフ(売電価格)を抑えることができます。

国際的シンクタンクによると、2050年には再エネ導入比率は50%まで上がると言われています。その一番の根拠は市場拡大に伴う発電コストの低減です。2018年時点からさらに2、3割コストが下がり、われわれは今後もこういった傾向は続くと見込んでいます。

質疑応答

モデレータ:

まず東野さんにいくつか質問します。入札時には最安値実現のために厳しい局面があったと伺っていますが、どのように局面打開されたのでしょうか。

東野氏:

実はこの入札の2年前に3件ほど中東でメガソーラーの入札があったのですが、弊社は完敗、これで駄目だったら撤退しようというところでした。折良く弊社が熟知し、かつ競争力もあるアブダビでの入札だったので、コストを下げることだけに注力し、採算性もぎりぎりのところで何も隠さずに札を入れたというのが実際のところです。

モデレータ:

中国企業と共同事業で取り組まれましたが、中国企業との連携の仕方について詳細を教えてください。

東野氏:

当時、ジンコソーラー社(上海企業)はすでに6ギガワット程度の太陽光パネル製造ラインを持っていました。民間発電事業にも参入したいという施策を持っており、IPP部隊をパネル事業とはまったく別に持っておりました。欧米系再エネ企業の技術職経験者やファイナンス部門でも米国銀行勤務経験のある人材を登用した国際色豊かなチームだったので、他の欧米パートナーと変わらない感覚で私は仕事をしていました。

パートナリングが成功したのも特に中国企業だからということではなく、いち早く合弁企業における目的を共有したことにあります。これは単純に競争に勝つこと、そして早急に合同のワーキングチームを作って作業の統一化を行いました。弊社をリーダーとして、明確な意思決定方針、開発目標を早期に設定できたことが彼らとのタイアップで一番成功した理由だと思います。

モデレータ:

私からは最後の質問です。ペロブスカイトが製造、建設、発電と、トータルコストでシリコン型を上回るとすれば、東野さんはお使いになられるでしょうか。

東野氏:

製品としての優秀さでかなり競争力が出ると思いますし、条件が揃えば非常に有効なオプションになるでしょう。メガソーラーは送電や需要地との地理的な問題から送電コストが発生しますが、ご紹介いただいたようなパネルであれば送電コストも大幅に抑えることができます。今われわれが抱いている次のビジョンを可能にする画期的なツールになるのではないかという印象を持ちました。

モデレータ:

太陽電池について、関係業界や行政当局を40年以上も強力にサポートされている一木修株式会社資源総合システム社長にコメントをお願いいたします。

コメント

一木社長:

東野氏が主導するスワイハン太陽光発電所プロジェクトは、100万キロワットを超える出力を有している点、1キロワット時あたり2.4セントの売電単価を提供している点、そして25年間にわたり売電を行うという点からも、再生エネルギー発電の普及に寄与しています。これを契機として、太陽光発電所の導入を検討する流れが世界に広がっています。

これまで流通していたシリコンには変換効率20%の壁がありましたが、いまや20%を超え、世界は30%を超えるモジュールの競争になっています。このペロブスカイト太陽電池を特定の素材を組み合わせることによって高い変換効率を狙うことが可能になります。ぜひ世界に負けずに、リーダーシップを発揮していってほしいと願っています。

瀬川氏:

ギガソーラーがパネル交換時期を迎える際に、35〜40%程度の変換効率をペロブスカイト・オン・シリコンで実現できれば非常に価値としては高いので、その辺りを目指してがんばっていきたいと思います。

質疑応答

Q:

瀬川先生に質問します。世界の特許出願数の動向について伺いたいのですが、やはり中国や米国が圧倒しているのでしょうか。

瀬川氏:

2016年の特許調査結果ではやはり海外が多いという印象です。しかし、最近は自社技術を守るために敢えて特許出願しない戦略を検討する企業も出てきているため、出願件数は全体的に減少傾向にあると感じています。

Q:

ペロブスカイト太陽電池の耐久性について教えてください。

瀬川氏:

耐久性は問題だと思います。本来20年、30年はもたせないといけないので、そのために有機分子のメチルアンモニウムを安定なカチオン(+イオン)に置換する、または無機に置換する手法を進めています。そうすることで従来の太陽電池と同等の耐久性が担保できます。

また、封止技術も進んでいます。特に金属箔は外部からのガス侵入を抑制できます。しかし、既存材料での耐久性となると連続光照射では8000時間で10%程度ですので、さほど耐久性が担保されているわけではありません。工業化、商品化される段階でもう一段の努力が必要と考えています。

最後に、既存の太陽光発電には廃棄処理(バックエンド)の問題がありますが、ペロブスカイト太陽電池は数ある太陽電池の中で唯一水に溶けます。洗い流せば一瞬で溶けてなくなるため、リサイクルは非常に簡単です。使用している金属やヨウ素の100%リサイクルも可能です。

モデレータ:

耐久性は、トータルコストの観点からも考える必要があるでしょう。圧倒的に安くなれば、交換して使うこともできるからです。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。