日本の地域間格差の原因はどこにあるのか

開催日 2018年10月26日
スピーカー 徳井 丞次 (RIETIファカルティフェロー/信州大学経法学部教授・広報担当副学長)
モデレータ 池内 健太 (RIETI研究員)
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RIETIでは、都道府県別・産業別に生産性を計測したR-JIPデータベースを2012年に初めて公開し、昨年は2度目となる改定版が公表された。今回のスピーカーである徳井丞次ファカルティフェローは、このR-JIPデータベースのプロジェクトでの研究成果を元に、日本の地域間格差の原因がどこにあるのかを分析し、今年8月には『日本の地域別生産性と格差 R-JIPデータベースによる産業別分析』(東京大学出版会)を編著として刊行した。本セミナーでは、同書の中でもとくにR-JIPデータベースに絡む部分を中心に、地域の人的資本や地域間サービス価格差、本社サービスの地域を跨ぐ投入に焦点を当てた分析について解説し、地域間格差の長期的趨勢や人口減少・高齢化と地域経済の関係について示唆を与えた。

議事録

R-JIPデータベースの概要

徳井丞次写真私は、都道府県別産業生産性(R-JIP)のデータベースを構築し、それを使っていろいろな分析を行う研究プロジェクトのリーダーを務めており、8月に研究成果をまとめた本を出版しました。今日は、R-JIPデータベースがカバーしている1970年以降、地域の生産性格差に何が起こってきたのかを見ていきたいと思います。

R-JIPデータベースは2012年に初めて公開されて以降、2回改定され、最近は2017年版が公開されました。今年の夏も台風や地震などで大変でしたが、例えば台風襲来があると、地域の農産物の被害額がニュースで報道されますが、あれは根拠のある推計を元に発表されているものではないと聞いています。このように地域の問題を数字で語るとき、もっとしっかりとした根拠のあるデータに基づいた議論ができるようにならなければならないという思いから、このプロジェクトを始めました。

R-JIPデータベースは、日本産業生産性(JIP)データベースの兄弟版としてできたのですが、JIPデータベースの大本の発想はKLEMS(K=資本、L=労働、E=エネルギー、M=原材料、S=サービス)に基づいており、World-KLEMSやEU-KLEMSにもデータを提供していました。生産性を正確に測るためには、KLEMSの投入を正確に測らなければならないという考え方を採用しています。この観点からすると、R-JIPデータベースは中間投入(EMS)を測れておらず、アウトプットがいきなり付加価値なので厳密にはKLEMSとはいえないのですが、資本と労働の投入についてはKLEMSの精神に沿った計測を行っており、従前の同種の地域データと比べると圧倒的に丁寧で細かいデータであると自負しています。

データベースは47都道府県、23産業に分かれています。労働と資本の測り方の特色としては、労働を人が住む場所ではなく、働いている場所で測っています。首都圏では東京周辺に住みながら東京で働く人が多いですが、その場合は東京の投入ということになります。労働投入の質を捉えるために、労働力の構成を幾つかの労働属性でクロス分類したデータを使っています。しかし、こうした詳しい都道府県別・産業別・属性別クロス分類での従業地ベースのベースは公表データにはないので、「国勢調査」のオーダーメイド集計を統計センターに依頼しています。

R-JIP2017で労働の質の推計結果が過去に遡って少し修正されているのは、そのためです。以前の推計では1990年と2000年の「国勢調査」オーダーメイド集計しか利用できず、他は簡易推計で補っていたのに対して、R-JIP2017では1980年、1985年、2010年のオーダーメイド集計を新たに利用できることになって、推計の精度が若干向上したためです。

一方、資本については投資フローから資本ストックを測り、さらに資本サービスという概念で投入を捉えています。最近は資本財を直接所有する場合だけでなく、リースという形態で使用することも増えています。資本投入を資本サービスで捉えることの利点の一つは、直接所有とリースを同等に扱えることです。資本財を自社で所有して投入している場合も、あたかも自分で自分にリースしているような計算をするのが「資本サービス」の概念です。また、この概念を使うことによって、同じ金額の資本財でも、耐用年数の短い資本財は耐用年数の長いものに比べて1年当たりより多くの「資本サービス」フローを投入していると測ることができます。

資本投入の方も、R-JIP2017で推計方法を見直しました。23産業×47都道府県×23産業と部門分類が多いとなかなか特定の県の個々の産業にまで目が届かないのですが、データベースの利用者の方々からは特定の県の特定の産業に関するお問い合わせもあって、それをきっかけに不自然なデータの動きが気になり始めることもあります。そうした場合には、他の投資データと比較したり、その背景を確認したりすることがあります。そうした結果を踏まえて投資フローのデータの推計方法を見直したのです。

資本の推計に関して最後に触れておきたいのは、「社会資本」との関係です。実はJIPデータベースとR-JIPデータベースでは、資本投入をかなり幅広く捉えています。一般的な考え方では、社会的インフラである高速道路などは「社会資本」として捉えられることが多いと思いますが、われわれのデータベースでは運輸産業の生産活動に使われる資本投入という意味で、運輸産業の資本に入っています。われわれのデータベースを利用して「社会資本」に関する分析を行う方は、このことに注意してください。

地域間格差はどう変化してきたのか

1人当たり県内総生産(GPP)の変動を見ると、日本の地域間格差は明治時代の拡大期を経て、大正時代から昭和の戦前期は大体横ばいで、戦後の高度成長期から1970年代にかけて縮まり、今は少し戻してまた横ばい傾向です。1874(明治7)年の1人当たりGPPを都道府県別で見ると、最も大きかったのは東京ではなく大阪でした。こうした長期の視野を持つことは、今現在起きていることが必ずしも永遠に続くとは限らないという視点を持って世の中を見るためには重要だと思います。

高度成長期の終わりごろに当たる1970年の労働生産性を都道府県別に見ると、トップは神奈川でした。それは労働者当たりの資本投入が大きかったからです。高度成長時代は製造業が日本を引っ張っていて、しかも重化学工業が立地している地域の労働者当たりの資本投入が大きく、神奈川県には京浜工業地帯があるため労働生産性がトップだったのです。

2010年になると、かなり様変わりして、地域間格差はだいぶ縮まりましたが、東京が飛び抜けて高くなっています。東京が飛び抜けて高い理由は、決して労働者当たりの資本投入の大きさではありません。東京に製造業がそれほどある訳ではないので、容易に想像できると思います。むしろ労働の質と全要素生産性(TFP)の高さが要因になっています。

TFPはブラックボックスのようなものなので、産業別に見てみると、東京のTFPの高さに最も貢献しているのはサービス業(民間、非営利)と卸売・小売業です。このことは、東京に立地しているこれらの産業の生産性が高いことに加え、もう1つはこれらの産業で働いている人が多いことを示しています。この2つの要素の掛け算で貢献が測られています。しかし、逆のことも言えていて、全国に比べてTFPが低い地域は、こうした産業で多くの人が働いていても、平均に比べて生産性が低いことになります。

地域間格差と人的資本

次に、労働の質の部分です。全国版のJIPデータベースでは労働の属性をかなり考慮して丁寧に測っています。従って、R-JIPデータベースでも同様にきちんと整合した測り方をしなければならないということになり、せっかく苦労して測ったので、その結果を分析することになりました。

国勢調査のデータを使って、10年間隔で詳しく地域間の労働の質の差を測っています。労働の属性は、都道府県別、産業別の他に、性別、年齢別、学歴別(就業上の地位を含む)で分けていて、就業地ベースなのでオーダーメイド集計が必要です。それから、対応する賃金データを、地域間の乖離を考慮して測っています。それらを使って質を考慮した労働投入をKLEMSの標準的な方法で測っておいて、労働時間で測った投入との差を求めれば、質の要因が出てくるという計算をしています。

そうして労働の質を測ってみると、1970年から2010年までの40年間で、地域間の労働投入の質の差はかなり縮まっています。それは実感ともかなり合っているのではないかと思います。ただし、全くなくなった訳ではありません。2010時点でも、最も高いところを1として、最も低いところが0.75程度なので、格差が2割強ほど残っていることになります。

労働の質を要因別に分解すると、1970年はいろいろな要因が利いているのですが、2010年は主に就業者の学歴差が労働の質の格差に利いています。40年前には就業する産業によっても賃金格差が大きく、地域の産業立地特性が重要な役割を果たしていました。近年はこの効果が小さくなって、学歴要因が残ったためです。となると、若年者の地域を越えた労働移動が何らかの役割を果たしているのではないかと考えられるため、高校卒業時の若者が進学などを経た後に全て地元に戻って就職した場合という仮想的なケースを考えて、これを現実と比較することによって、その効果を調べています。

地域間サービス価格差

労働の投入は、地域間の賃金差を考慮して詳しく測っているのですが、生産物の価格差を考慮に入れていないのではないかという課題が浮かび上がりました。とくに多くのサービス業で供給されるサービスは、モノの製品のように遠い所に運ばれることはないので、地域間の価格差が生じるのではないかということでこれを測って生産性比較をやり直すことにしました。

品目別のデータを基に、国際的に絶対的購買力平価を測る方法を応用して測りました。その結果が生産性比較に与える影響は、時間の関係で割愛します。もう1つ副産物として、労働生産性格差と地域間価格差には相関があることが分かりました。生産性と価格差の関係は、国際経済学ではバラッサ・サミュエルソン効果といわれ、先進国と発展途上国の間で観察されるといわれています。

日本のなかで観察された地域版のバラッサ・サミュエルソン効果が、国際経済学で説明されるものと同じ背景で成立しているのかというと、どうもそうではないようです。国際経済学でのこの効果の説明とは、先進国は発展途上国に比べて貿易財である製造業の生産性が高く、賃金はそれに引っ張られるけれども、非貿易財の生産性はたいして違わないので、それによって先進国の非貿易財を含めた平均価格が相対的に上がってしまうというものです。しかし、日本の地域間では、そうはいえません。製造業の生産性格差は地域間で縮小していき、現在も残る地域間の生産性格差の主な原因はサービス業を含む非製造業にあるからです。

国内版バラッサ・サミュエルソン効果を説明する最も有力な仮説は、地価に注目したものです。サービス業の生産性が高い地域は都市部なので、そこに経済活動が集中すれば地価が上がって、サービス価格を相対的に引き上げるというものです。この仮説については今現在分析の作業中で結果をお見せできませんが、どうもそればかりでは説明できそうにない感じになってきました。

確かに都市部の地価は高くて、そのことは無視できませんが、土地を投入するためのコストを冒頭ご説明した「資本サービス」概念で測ると、地価の比較だけでは土地投入のコストを正確に捉えられないことに気づきます。最近では都市部の地価はわずかでも上昇していますが、地方ではまだまだ地価が大きく下がり続けています。「資本サービス」概念で捉えると、価格が下がっている土地を持っているコストは大きくなります。このことに加えて、もう1つは、価格にとって重要なのは生産物一単位当たりの土地投入コストなので、都市部では「資本サービス」概念で測っても土地投入コストの総額は確かに大きいのですが、同時にサービス業の生産額もとても大きいために、生産物一単位当たりの土地投入コストが都市部で大きいとは必ずしも言えなさそうなのです。もう1つの説明としては、生産性の高いリーディング産業が地域に立地することが、地域労働市場を通じて他産業の賃金に波及している可能性が考えられます。こうした分析を現在行っているところです。

地域をまたぐ本社サービスの投入

県民経済計算を各県で担当している実務者が集まった研修で講演を担当させてもらったときに、県民経済計算の付加価値は東京とそれ以外の道府県で測り方が異なることを初めて知って驚きました。東京都以外の46道府県では、内閣府が決めたマニュアルに沿い、事業所主義を採用し、本社サービスはないものとして考えています。つまり、その事業所で生まれた生産額から中間投入を除くと付加価値を測ることができ、それが全てその事業所で生まれているという測り方をしています。

しかし、東京都の付加価値を同じ方法で計算すると、本社活動で多くの人が働いているので、営業余剰がマイナスになってしまいます。東京都はその方法に納得していないので、本社活動で生み出される付加価値(本社サービス)含めて計算しているのです。ですから、県民経済計算は47都道府県を合計しても合いません。そもそも測り方の概念が異なるのです。

そこで、東京都と同じ考え方で、全ての都道府県の付加価値を測ってみることになりました。今はSNA(国民経済計算)でも目に見えない投資、ソフトウェアや研究開発の投資もしっかり測ろうということになっていますから、本社サービスについても同様な考えからで統一してみることにしました。となると、本社事業所が他地域にあってそこから自地域に存在する生産事業所に本社サービスが投入されていると考えることになりますから、それをきちんと中間投入として引いくと、その分の本社サービス純移入の地域の付加価値は小さくなるという計算になります。

本社サービス生産と、その地域を跨いだ投入の推計は複雑ですので、途中の計算プロセスは省略して、その結果のみご紹介します。まず、各都道府県の生産活動産出のうち、本社サービスの産出が占める割合を計算すると、もちろん東京都が一番大きく、生産活動の2割程度は本社サービスを作っているという結果になります。これは他の道府県と比べて東京都の際立った特徴です。

都道府県を越えて事業所があるとき、本社サービスは都道府県を跨って投入し合っていることになります。そこで、本社サービスのネット投入(移出-移入)を測ると東京が圧倒的に大きくて、2番目の大阪とともに純投入側となっています。それ以外の道府県は全て純移入側で、本社サービスを他地域から買っていることになります。この結果を反映させて県民経済計算の付加価値を再計算したり、生産性格差分析を検証したりしました。

人口減少・高齢化と地域経済

高齢化率は、すでに今も都道府県によって全く異なっています。これは時系列で違っていて、高齢化率は昔の方が地域間で差がありました。高齢化率は当然上限があると思うので、都道府県の差はだんだん縮まっています。地域間の生産性の格差も時期によって平均は異なるものの、最近になるほど格差は縮まってきています。ただ、相関はより明瞭になっています。

ここから何がいえるかというのは難しいです。この章の著者たちもこの部分にさほど拘らずに、他の分析を進めています。つまり、高齢化と生産性の相関については、因果関係はどちらとも考えられるので、われわれのデータベースのレベルでは何ともいえないのです。ただ、高齢化率と生産性の逆相関があることには気に留めておく必要があると思います。

おわりに

地域の産業政策においてはこれまで、サービス分野はあまり重視されてこなかったというのが私の印象です。私が住んでいる地域にも自治体ごとに「工業プラン」は策定されているのですが、サービスの方はあまり聞きません。しかし、サービス分野こそ大勢の人が働いているので、この分野の生産性向上を考えなければ地域間の格差は広がる一方になるのではないかと思います。

それから、労働の質において人材の観点はとても重要です。ただ、労働の移動も考えると、人材を生みだすのが先なのか、仕事をつくるのが先なのかということがあります。その両方がそろわないと、きっとうまく回っていきません。

地域のサービス価格差については、生みだしているのは地価だけではなく、中核的な企業や産業によって、労働市場を通じて周りに波及していく効果もあるのではないかということです。また、ここでは紹介しませんでしたが第9章の分析が指摘するように、地域の中核的企業からの技術波及も重要です。

本社の立地の観点は、現在の県民経済生産では見えていないのですが、それを明示的に見えるようにすればもっと重要になってきます。それから、因果関係は難しいですが、高齢化と生産性の関係にも注目していく必要があります。

質疑応答

Q:

労働投入を働いている場所で計算するとおっしゃったのですが、東京の場合、運輸・通信業の貢献度がゼロだったと思います。運送業は県をまたがって移動していると思うので、その場合はどのようにデータを捉えているのでしょうか。バスやトラック、鉄道など県を越えて働いている人々はどこでカウントされているのでしょうか。

A:

就業地は、国勢調査に回答した勤務先の所在地になります。また、グラフでお示しした東京都のTFPへの産業別貢献度は、各産業のTFPが全国(幾何)平均から乖離している度合いに、各産業の付加価値ウェイトを掛けて計算されています。東京都のTFPへの運輸通信業の貢献度がゼロに見えるのは、そのウェイトがゼロということではなくて、この産業のTFPが全国平均を上回ってないからだと読むべきです。

Q:

東京の場合、運輸や小売、サービス業の寄与度が高く、当然そこにはものが動いているわけです。その場所に運ぶトラックや電車の貢献度がどうなっているのか分かりませんでした。

A:

運輸・通信が東京と全国平均の乖離に貢献していないことは、ご指摘いただいてあらためてなぜだろうと思いました。あくまでも全国平均と東京のTFP乖離に基づく貢献なので、大勢の人が東京でも働いているはずですが、TFPで測った生産性がそれほど高くないということだと思います。東京では、この分野で資本設備も多く使われているので、全ての生産要素の投入と考慮して残差で測られるTFPは、全国平均と比較してそれほど大きくなかったということになります。

Q:

1970年と2010年の労働生産性の地域間格差についてです。このうち、労働の質はむしろ地域間格差が縮小する方向ですが、資本装備率とTFPの地域間格差が引き続き大きく出ている感じがしました。一番大きいのはTFPになるのでしょうか。

A:

資本労働比率(資本装備率)は40年前に比べて圧倒的に小さくなっています。東京ではTFPがとても大きくて、労働の質も結構高くなっています。ただ、労働の質については、東京を除く他の地域間ではそれほど大きな違いがなくなってきているという傾向がみられます。これに対して、TFP格差が近年の地域間での労働生産性格差の大勢を決定しているように見えます。

Q:

地域間格差を議論するときに、海外や他地域への輸出や移出が非常に多い地域や、他の地域との取引が大きい地域は生産性が比較的高くなり、内に閉じてしまっている地域は生産性が低くなる傾向にあるという感じもしているのですが、そういう分析はあるのでしょうか。

A:

ご指摘の点はたいへん興味深い論点だと思いますが、今現在はそのご指摘にお応えできるだけのデータが残念ながらありません。われわれの研究プロジェクトでもそうした分析ができるように、都道府県ベースの地域間産業連関表を現在作成中です。それが出来上がれば、R-JIPデータベースの付帯表として公表することを予定していますし、そうした分析をぜひ行ってみたいと考えています。

Q:

1970年からの40年間で、労働生産性の地域格差は小さくなってきたと理解したのですが、2020年に向けて格差はより縮まるとお考えでしょうか、広がっていくとお考えでしょうか。

A:

難しいですが、直近の10年間でいえば人口減少と高齢化がどんどん進んでいるので、これがどういう影響を与えるのか注視していく必要があると考えています。先ほどは高齢化率と生産性のグラフを見ていただきましたが、人口減少率を横軸に取っても同じようなグラフになると思います。それが地域間で均一に起こっている訳ではないので、その部分は格差を広げる効果が働く可能性があるのではないかと思っています。ただ、この10年間にも景気の浮き沈みがあり、リーマンショックから何年かは地方は特に厳しかったと思いますが、それに比べれば最近はだいぶ良くなっています。その部分の効果は逆の方向に利いているので、その差し引きになると思います。

Q:

サービスの価格差の要因を分析したときに、地域の中核的産業で生産性がとても高く、賃金も高いような存在が、バラッサ・サミュエルソン効果で他の産業に波及し、全体としてのサービスや賃金の価格を引き上げているという理解でよろしいでしょうか。

A:

地域中核企業からの生産技術の波及は(このセミナーのモデレータである)池内さんが研究していて、この本の第9章でミクロデータを使った詳しい分析が行われています。本日ご紹介した私の分析(第3章)は価格の方を見ているので、どちらかというと要素価格、特に賃金に波及してサービス価格を高めているのではないかという推測になります。

Q:

この40年間で総体的労働の質の差は縮まったように見えるのですが、労働生産性の差がなお大きいのは、どのように解釈すればいいのでしょうか。

A:

他の要因も働いている可能性がありますが、この40年間でサービス経済の比重が高まり、そのサービス分野の中でも知識集約型産業が生産性の高い産業としてクローズアップされてきています。その結果、労働の質の格差はわずかでも、生産性の差により利くようになっているのではないかという解釈をしています。もしそれが正しいとしたら、差は縮まっているけれども、残っている差がより大きく利くようになっていることになります。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。