常温セラミックスコーティングによるプロセスイノベーション

開催日 2018年1月10日
スピーカー 明渡 純 (特定国立研究開発法人産業技術総合研究所先進コーティング技術研究センター長)
モデレータ 渡辺 隆史 (経済産業省産業技術環境局産業技術総合研究所室長)
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開催案内

今回のBBLセミナーでは、現在、燃えないリチウムイオン電池やフレキシブルな太陽電池等のキーテクノロジーとなる可能性が注目を集めている産総研オリジナル技術「エアロゾルデポジション(AD)法」を例に、その開発経緯や事業化の成功事例から今後のイノベーションに向けた企業連携等のあり方について議論する。

常温で強固かつ高密着なセラミックスコーティングができるAD法は、さまざまな分野で製品性能の飛躍的向上や新規製品開発に活用したいとの要望から多数の企業連携が進んでおり、採用された半導体関連事業応用ではすでにものづくり日本大賞「内閣総理大臣賞」を受賞している。

議事録

先進コーティング技術研究センターとは

コーティングは、ものづくりの基盤技術の1つだと思います。先進コーティング技術研究センターでは、新しいコーティング技術で競争力強化につなげることを目標にしています。

今日紹介する常温セラミックスコーティングは、当センター独自のコア技術であるエアロゾルデポジション(AD)法という技術によるもので、企業からの問い合わせが毎年100件以上来ています。電池の実用化やロボットの普及といった明確な軸に基づいて技術を集約している産業技術総合研究所の他のセンターとは性格が異なり、技術をワンストップで使ってもらえるような取り組みをしています。

エアロゾルデポジション(AD)法と特徴

私は今から20年ほど前、室温環境下でセラミックス膜を高速で形成できるAD法を発見しました。セラミックスは通常、粒子状のものをバインダーで固めて、炉に入れて1000〜2000℃の高温で焼結させ、硬い塊(バルク材)を作ります。粒子の状態ではセラミックス材料はもろくて割れやすいのですが、私はセラミックスの粉末を室温のガスに乗せて吹き付けると透明な膜ができることを、たまたま見つけたのです。

当時、溶射というセラミックス粒子を高温のプラズマの中を潜らせて、溶かして基材に吹付け膜を作る手法が知られてました。この手法で緻密で質の良い膜を作るには、プラズマの温度を上げ過ぎると、セラミックス材料自体が分解し、また、冷えてくっつくときに、ヒビやポアが入ってしまい駄目なので、プラズマの温度を少しずつ下げて、溶かす割合を減らせばいいと考えたのがきっかけでした。そして実験を繰り返しましたが、吹き付けた粒子がしっかり付かず、残っているコーティング物も爪で引っかくとぽろっと取れてしまいました。

ところが、その周りに黒い汚れカスが、膜よりずっとしっかり付いていたのです。最初は実験に影響すると思い、サンドペーパーで剥がしていたのですが、あるとき、それほど強く付いているのであれば、これが膜になればいいのではないか。そして、これはひょっとすると、溶けていない粒子がそのまま突き刺さって、くっつき固まっているのではないかと考えました。

でも、普通は1000℃以上で焼かないと粒子同士はくっつきません。ですから、粒子表面についている有機物などの汚れが衝突した際の摩擦熱で接着剤のようになって付いているのではないかと疑う人がほとんどでした。そこで、疑いを晴らすために実験をしました。汚れカスを電気炉に入れて10時間ほど焼いてみたのです。セラミックス粒子同士は1000℃以上でないと焼結しませんが、有機物は400〜500℃で分解されるので、粒子間に有機物のバインダー(汚れカス)が付着してくっついているのであれば、セラミックス粒子は焼結せず、有機物は焼き飛んでしまうはずなので、こすればポロリと取れるはずです。ところが、電気炉で焼いた後、ピンセットでこすっても取れませんでした。このことから、セラミックスは熱をかけなくてもくっつき、化学結合を起こすとの思いに至り、そこからいろいろな基礎研究を開始しました。その後、吹き付ける時に使うガスの種類を変えるなどすると、透明な膜が得られるよういなりました。

実は、このコーティング技術は、当初はある電子デバイスを作ろうと思ってトライしていたものでした。それが圧電セラミックスです。研究当初は、新現象を発見しようと狙っていたわけではなく、こうした応用に展開するという、全く異なる関心から、常識外れのコーティング技術が生まれ、実際にできている性能から興味を持つ人がたくさん出てきました。

ナノスケールのオーダーの構造で市販のセラミックス粉を常温で吹き付けるだけでセラミックス膜が作れることが分かり、材料科学の人たちの中には、この方法を使えば今までにない特性が出ると考える人も出てきました。特定の材料にしかこういうことが起こらないのであれば面白くありませんが、いろいろな材料で一般的に起こったのです。しかも、硬くてもろいセラミックスでも、常温で吹き付けると緻密な膜ができることを実証しました。これを常温衝撃固化現象(Room Temperature Impact Consolidation)呼んでいます。

常温でセラミックスをコーティングできる技術自体は今までなかったのですが、常温でコーティングできれば、たとえば、熱に弱い材料を硬いセラミックスで被覆することが可能です。この様にセラミックスコーティングすることで、表面にいろいろな新しい機能を付加でき、材料それ自体を丸ごと変えてしまうことなく、一部だけ変えていろいろな機能を与えることができるのです。

AD法技術の活用

この技術の成功事例はまだ少ないのですが、半導体製造装置の中には、AD法によってコーティングされた部材がキーコンポーネントになっているものもあります。TOTOとの共同研究はその一例です。半導体チップ加工の線幅はどんどん細くなっており、線を細くして集積度を上げれば、消費電力が減り、半導体の動作速度も速くなります。

しかし、今まで使われていた半導体製造装置では、細線化に大きな壁が幾つもありました。その1つが、プラズマをたいてエッチングするときに発生するごみ(パーティクル)です。これによって歩留まりが悪くなり、コストも上がり商品価値がなくなってしまいます。そこで、パーティクルを抑えるための研究が、とくに半導体装置メーカーの間で行われるようになりました。ちょうどその頃、われわれの技術がある程度使いものになってきて、そのニーズとわれわれのシーズがマッチしたのです。

パーティクルが出るのは、穴だらけになった部材の表面にプラズマが当たると、エッジに電界が集中して材料が欠けるからです。それを起こさないためには緻密に、しかも表面をつるつるにして、削れてもパーティクルを極微小にすればいいのですが、それに見合う部材の表面処理技術がなかったのです。

AD法では、普通に焼いたセラミックスと違って隙間(ポア)が全くできず、緻密な構造体になります。かつ、1個1個の結晶がものすごく小さいので、結晶がプラズマで削られて出るパーティクルは数ナノメートル(nm)以下になり、たとえ加工中のチップのパターンの上に乗っても、チップ自体はきちんと動作します。この技術は、2012〜13年ごろから市場にマッチするようになり、今では半導体製造で非常に重要な技術になりました。

大学や研究所がいう量産実用化は、企業からすれば商材に向けての量産技術ではなく、技術を確立する段階での量産技術の目途程度であり、そこから売り物にするには、特定のお客さんを相手にした要求スペックを満足させるための商品開発が必要で、大変な時間とお金と労力がかかります。TOTOの場合、社内で何回もデザインレビューのステップを踏み、商材まで持っていきました。

もう1つ実用化されているのが、色素増感型の太陽電池です。積水化学工業がAD法を使ってロール・ツー・ロール技術で量産し、販売も始めています。AD法が採用されたのは、樹脂フィルムの上に酸化チタンというセラミックス材料をポーラス(多孔構造)で密着力が高い状態でくっつけることができたからです。室温のプロセスで、熱をかけずに樹脂フィルムのフレキシブルなものの上に吹き付けて太陽電池を作りました。蛍光灯などから充電してセンサーを動かしたり、バッテリーを使っていないときにスマホを充電したりするような使い方ができます。

粒子はどうしてくっついているのか

固体の粒子を吹き付けて膜を作る技術の研究は、私が初めて行ったわけではありません。1960年代に既に、米航空宇宙局(NASA)がスペースデブリ(宇宙ごみ)の研究で行っています。宇宙空間では空気による減速がないので、秒速数百メートルから数キロメートルというものすごいスピードで浮遊しています。粒子は小さいもので数ミクロン以下、それが宇宙服などに当たると貫通するため、これを防ぐ方法を開発するためにNASAはアポロ計画の当初から、固体微粒子を高速に加速し基材に衝突させるような実験を行い、スペースデブリを研究していました。その中で、ある速度では衝突した微粒子は基材に埋没し、固着することが報告されていました。ですから、現象としては当時から知られていました。

1980年代になると、コールドスプレー(CS)法が知られるようになりました。AD法と同じで、金属の粒子をガスに乗せて勢いよく吹き付けると、金属の粒子を溶射のように溶かしていないのに、固体のままぶつかってもくっつきます。これを発見したのは、コーティング技術の専門家でもない飛行機エンジンの風洞試験をしていたロシア人です。ただ、当時行われていたのは全て金属材料の研究でした。

金属材料を吹き付けるとくっつくことが分かり、金属で使えそうな膜ができたので、彼らは次に応用の広いセラミックスを吹き付けたのですが、全然付きませんでした。彼らは、粒子が浮遊するための運動エネルギーが表面で摩擦熱に変わり、その熱で粒子が材料の表面に溶けてくっついていると考えたのです。金属よりも融点の高いセラミックスで膜を作るには、当然速い速度、大きなエネルギーで吹き付ければ、付くはずですが、大きなエネルギーでぶつけるほど基材が削れてしまいます。

たまたま私がその研究を全く知らずに、セラミックスを常温で吹き付けただけで緻密な膜ができると発表したので、彼らは驚きました。出来上がった膜を見ると、透明なレンズのようなものが表面に付きます。このようになるには、ぶつけた粒子材料が流動して、隙間を埋めていなければなりません。しかし、硬い材料で温度が上がらずに隙間を埋めるには、金属のように塑性変形する性質を持つことが必要です。材料の常識としてセラミックスにはそういう性質がありませんが、実際は持っていたのです。

何が違うかというと、実は吹き付けている粒子の大きさでした。粒子がある程度大きいと割れますが、小さい場合は衝突で大きな圧力がかかると金属のように変形し、つぶれるということを発見しました。しかも、温度は上がらず、室温と同じ状態で押しつぶされていきます。ゆっくりと圧力だけかかって温度が上がらない状態でつぶすと、きれいな単結晶微粒子になります。

セラミックスの粉をガスに乗せて吹いたら膜ができることが分かりました。しかし、実際に量産する場合、大半は割れて跳ね返ってしまうし、同じ材料でもメーカーが違うと、よく付くものと付かないものがあります。それが分からないと量産できません。そこで産総研で研究を重ねた結果、粒子が大き過ぎても小さ過ぎても駄目で、いろいろと調べていくと、上記の様に、その間に粒子の破砕特性が変化し、膜のできる条件があることを見つけました。これは基礎研究が量産に直接的な意味を持った一例と考えています。

エネルギー分野への展開

これまで、いろいろな会社から声を掛けられて、いろいろなアプリケーションに取り組んできました。製品化まで成功したものもありますし、開発中のものでは全固体リチウムイオン電池への応用があります。全固体電池の場合、高温で焼くと電池として動かなくなるので、なるべく低い温度で材料を積み上げようとします。そのとき、材料側で工夫しても限界があるし、もともとこのプロセスは室温で100%緻密に固体の粉体を固められるので、電池に使えるとしていろいろなところからオファーをもらいました。

トヨタ自動車とも共同研究をしていて、全固体電池の場合、塗工した電池よりもバインダーがない分、パフォーマンスが非常に上がることも分かりました。しかし、全固体のセラミックスの構造でできた電解質は、金属リチウムが粒界の間をすり抜けてショートしてしまうという指摘があったので、われわれは対策として電解質を単結晶にし、その表面にAD法で電極材料を吹き付け、デントライトが生じないようにすることを実証しました。単結晶なので自動車の電池には使えませんが、IoTや医療デバイスなど高額になってもいい分野や、小さくてもいい電池であれば実用性があると思います。

また、最近いろいろなところから共同研究などの相談を受けているのが、ADカラーハード・コートです。ADの場合、とくに樹脂の上に硬いセラミックスを付けられるので、傷が付きやすい樹脂の性質をコーティングでカバーできることが期待されます。

どこに使えるかというと、携帯電話のボディーです。次世代のスマホの筐体は、金属では電波をシールドしてしまうので駄目なのです。海外の大手携帯電話メーカーは、全てをプラスチックにしたいと考えていますが、ガラスの板は落下すれば割れますし、プラスチックであれば割れませんが、傷付きやすく質感が出ません。そこで、セラミックスコーティングと樹脂の組み合わせで対処しようという話が来て、その開発を現在行っています。

サプライチェーンの課題

こういう研究をしていると、いろいろなニーズ情報をいろいろな企業から頂きます。しかし、材料やプロセスの研究は市場から見れば非常に遠い川上の技術であり、出口の情報がなかなかもらえません。出口の情報に疎いまま、いろいろな研究開発をすると、同じ努力をしてもまるっきり外れた方向に行ってしまいます。すぐ下流の材料メーカーであれば部材・部品メーカーから情報をもらえますが、その情報も正確でなかったりします。

ですから、われわれのようなスタンスから研究開発を進めるときに、もう少し風通しよくしようと考えています。オープンイノベーションといわれて久しいのですが、実際にはオープンでない部分が多く、それによって海外と競争したときのゴールに到達するまでのスピード感に差が出ていると実感しています。

新しい技術を導入して何かを開発することになったとき、企業はビジネスとしての市場性やインパクトを当然考えます。それがセットメーカーあたりだと、非常に明確に自分たちでリーディングしてB to Cの動きでやっていけると思いますが、川上に行くほど、その辺の情報の関係性が見えないため、いろいろな方向に向いてしまって、時間ばかりかかってしまうことがよくあります。

この部分をつなげるために、われわれは戦略を考えています。イギリスの製造業では、コーティングは出口のマーケットに非常にレバレッジ効果がある戦略的な要素技術だと捉えています。われわれは、いろいろな企業からの問い合わせが全く減らないことを見ても、それは正しいと感じていて、そうした戦略の道筋を立てています。

今の会社同士の付き合いの構造は、昔の垂直統合や水平統合と違ってネットワーク統合になっています。その中では情報を共有して、お互いのベネフィットをシェアすることが重要で、そのためにはかなりオープンマインドでなければなりません。

そうした考えから、われわれは先進コーティングアライアンスというコンソーシアムをつくりました。日本ファインセラミックス協会(JFCA)と産総研が協定を結んで組織しており、材料・部材、装置、プロセスメーカーに集まってもらい、バリューチェーンを統合的に見渡しながら、当センターのコーティング技術の実用化を図っています。AD法だけでは足りない部分もあって、このコンソーシアムに入ってきた企業が持っている独自技術と組み合わせながら、さまざまなユーザー企業とも協力し、ハードコートを実用レベルに持っていこうとしています。

研究フェーズの認識の相違

研究フェーズがわれわれ大学・国研と企業とで異なるというのは、この10〜15年感じていることです。われわれは技術を作ることで、できたつもりでいますが、企業はそこから商品にしなければならないので、商品として技術を作る話は次のフェーズなのです。

そこは、お互いのフェーズが分かっていれば、もう少しスムーズに動かせると感じています。信頼関係をつくることが全てだと思うのですが、企業の方とお付き合いするときに一番意識しているのは、われわれの成果は比較的、世界初というものが多いので、すぐ使えるものではないことがほとんどだということです。有効に使ってもらうために、われわれもリスクへの意識を高めていかないと、企業は相手にしてくれません。

われわれは、企業名を聞いたら企業全体がそのつもりで来ていると思いがちですが、相談に来ている人の部署に目を向けることで、企業が求めるものと自分たちの技術との距離感が分かります。企業が求めているものを予測しながらコミュニケーションを取ることが、現実的に求められていると感じます。

最近はとくに、事業部の方が来ることが多くなり、現場で困っていることや、彼らが次の商材として求めているものは何かという生の情報を聞けるようになりました。研究を進める中で、だいぶ様子が変わってきた印象があります。

産総研では技術の橋渡しをしていますが、産学連携は人対人なので、自分たちが持っているものとの相性がいい相手を見つけ、信頼関係を作ることが大切です。それから、今は時代のスピードが速いので、企業の現場の人が頑張っていても、経営判断的に継続させてもらえない現状も難しさの1つになっていると感じます。

TOTOとの共同研究も、初めてTOTOの人が当センターに来てから利益が出るまでに、17年かかりました。ですから、1人のプレーヤーで最初から最後までやるわけではないと思います。その点では、研究者もコミュニティの枠を広げて、いろいろな人にバトンを渡していくことが大事かもしれません。

質疑応答

Q:

こうした技術の権利はどう確保されていくのでしょうか。

A:

たまたま私の場合は運が良くて、まだ特許が生きていて、産総研にも知財収入が入っています。でも、ものすごくまれなケースかもしれません。特許というのは大体切れるころに世の中が動くようになります。その点では、最初の発見に近い基本特許でロイヤリティを取れるのは、非常に希有なケースだと思います。

逆にそれを意識するあまり、オープンにせずに抱え込んでしまうと、誰も協力してくれませんし、情報もくれませんから塩漬けになってしまいます。私が思うに、実際はいろいろな人の知恵が入ってこないと、商材、製品はできないのです。その過程で細かい特許がたくさん生まれて、商品になるころには最初の基本特許がどんどん切れて、次の段階にある応用特許が基本特許のようになっていくのです。そういう意味では、最初から基本特許をてこにして特許収益を取ろうと考えるのは、あまり現実的ではありません。

むしろあまり特許に縛られずに、オープンにするべきです。要は、目指しているものを共有して、お互いが協力しないとできないものかどうかを明確にして、共同研究・開発をしていかなければならないのです。

技術開発では、近い分野をやっている者同士で集まりたがる傾向がありますが、それは必ずトラブルの元になります。われわれコーティングの分野では、コーティングの技術を全く持っていないところとお付き合いした方が、いろいろな情報をオープンにもらえると感じています。

Q:

日本のR&D投資がなかなか企業の生産性に結び付かないといわれているのですが、実際にそう感じますか。どうすれば日本全体の生産性が上がると思いますか。

A:

今まで300社ほどとお付き合いしましたが、我々の様な基礎的な研究で、生産性に結び付くと感じるのは1割ぐらいです。自らが情報を欲しければ、こちらも情報を出さないともらえません。では、出すかというと出さないという状態は、何回も経験しています。

私の考えは、情報を出したとしてもその先を研究すればいいのです。いろいろなことを伝えると勝手に特許を書かれてしまうと言う人がいますが、書いてもらえばいいのです。エンジニア同士の付き合いでいえば、前向きにガツガツとやっていこうとするマインドが強いかどうかで上下関係が決まると思います。

それから、せっかく見つけた知恵や発明だから、何とかこれを使いたいと発明した側は必ず思うでしょうが、それをむしろ他人に使ってもらって、さらに情報を得て、その上に自分の知恵を積み上げていくマインドを持つことが、日本人は苦手だという印象があります。

お付き合いしてみて、会社として利益を上げることを明確に考えているところは、情報やベネフィットのシェアに対して非常に積極的です。しかし、商品のレベルで何をしようとしているのかが不明瞭だったりすると、特許を買ってくればいいかどうかという判断になりません。そこの部分は、商品を開発して役に立てるところまで持っていこうとするマインドとは、ちょっと違うと思うときはあります。

私も学生時代、アルバイトでベンチャー企業の製品開発をしていたとき、情報をお客さんと共有しきれないためにエンジニアがひどく苦しみ、結局はお客さんと情報交流していくと、自分たちが次に何を作ると意味があるのかが見えてきて、開発のスピードがとても上がったという経験があります。そのとき、特許の話は全く出てこないのです。特許をどれぐらい考えるかというのは、ビジネスと絡んでくることであり、技術だけで判断できないので一概にはいえませんが、今のようなことを含めて考えるといいと思います。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。