2017年版ものづくり白書-IoT社会における製造業の課題と政府の取組

開催日 2017年6月22日
スピーカー 徳増 伸二 (経済産業省大臣官房参事官(デジタル化・産業システム担当)(併)製造産業局ものづくり政策審議室長)
モデレータ 五十里 寛 (RIETI上席研究員・研究コーディネーター(研究調整担当))
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我が国のものづくり企業を巡る課題としては、大別すると付加価値の創出・獲得と人手不足が顕在化する中で、これまでの強みであった現場力の維持・向上があり、これらの課題の解決に向け、IoT等の利活用が重要となっています。本セミナーではIoTを巡る内外の現状を踏まえた上で、2017年版ものづくり白書における分析なども交えつつ、今後のIoT社会における製造業の課題や政府の取組状況などを説明いたします。

議事録

ものづくり白書とは

徳増伸二写真ものづくり白書は、ものづくり基盤技術振興基本法に基づく法定白書で、今回で17回目となります。その中で経済産業省が執筆した第1章は、第1節「我が国製造業の足下の状況認識」、第2節「産業タイプ別の第四次産業革命への対応」、第3節「我が国製造業の変革の方向性」に分かれています。

第1節 我が国製造業の足下の状況認識

過去1年を見ると、グローバル市場の不確実性が増大しており、設備投資の見通しについても、アンケートでは「不明」と答える企業が多くなっています。また、過去1年で海外に持っていた生産機能を国内に戻した企業は、約12%でした。国内に機能を戻すにはどうすればよいかという問いには、「工場労働者の確保」「高度技術者・熟練技能者の確保」という人材関連の回答が上位を占めています。

さらに、人材確保については、8割以上が何らかの課題を持っていて、そのうち2割はビジネスにも影響が出ていると答えています。とくに確保が課題となっているのは「技能人材」でした。現場力の維持・強化を図る上でも、人材確保の困難さが最大の課題となっています。

人材不足対策として企業が最も力を入れている取り組みは、「定年延長等によるベテラン人材の活用」で「女性が働きやすい環境整備」がこれに続き、人材活用制度に関わる部分の 工夫が多く行われていることがうかがえます。他方、今後については、ロボットやITなどの活用が上位を占めており、人材活用制度だけでは対応は難しく、ロボットやITなどを導入しないとなかなか対応できないだろうと多くの企業が考えています。

人材確保の取り組みと現場力の向上の相関を調べると、ベテラン人材の活用と10年前と比べた現場力の向上との間にはあまり関係はみられませんが、女性活躍の職場環境整備やロボット・ITの活用は10年前と比べた現場力向上との間に一定の関係が見られます。

また、「10年後に現場力は低下する」としている企業が今後、最も力を入れていきたい取り組みは定年延長である一方、「10年後に現場力は向上する」としている企業は、ロボットやITの導入に活路を見いだしているのが大きな特徴です。

第四次産業革命に向け、データの利活用も製造業の大きな課題の1つです。工場内で何らかのデータを収集している企業は、2015年は40.6%でしたが、2016年は66.6%に増えています。ただ、収集したデータを工場の「見える化」やトレーサビリティに活用できている企業はあまり増えていません。「可能であれば実施したい」という企業がかなり増えています。つまり、第四次産業革命が言われる中、関心が高まってデータを取得するところまではきたが、データを実際に有効に活用する段階で悩んでいる姿が浮かび上がります。

データの利活用を主導する部門には、経営者・経営戦略部門が約30%、製造部門が45%、情報システム部門が8%と、現場サイドで主導している割合が高くなっています。データ利活用の目的には、新たな付加価値の創出と生産性向上の2つがあると考えられます。現場の合理化や生産性を高める取り組みは現場サイド主導でもできますが、新たな付加価値をつけたり、ビジネスモデルを変えたりすることは現場サイドでは難しいので、経営者・経営戦略部門が主導したデータの利活用を進める必要があると思われます。その点は、製造業の自己資本利益率(ROE)が諸外国に比べて若干低いことにも現れていると思います。

また、データ収集の状況と業績の関係を見ると、データ収集を実施している企業の方が、営業利益が増加傾向である割合が高く、IoT(Internet of Things)と業績には一定の関係があると考えられます。現場力、外部経営資源の活用、ソリューション型組織見直しについても同様に、IoTの活用と一定の関係があるデータが得られています。

我が国のものづくり企業の課題は、人材不足が顕在化する中で現場力の維持・向上をどう図るか(強みの維持)、付加価値の創出・最大化をどう図るか(弱みの克服)の2点に大別されると考えており、その2つの課題解決に共通してIoTなどのデジタルツールの活用が鍵を握っています。他方で先述のとおり、データを取得するところまではきたが、具体的なデータの利活用で企業は悩んでおり、このため第2節ではものづくり企業におけるIoTやAIなどのツールの利活用の先進事例を約90集めました。また、IoTの活用度合いは、ソリューション型の組織見直しや外部経営資源を活用したアジャイル(俊敏)な経営などの取り組みと相関関係があることが示唆されており、課題解決に向けた先進ツールの利活用に際しては、組織における取組方法も必要に応じて見直していく必要があると考えられます。そうした方向性を第3節で論じています。

第2節 産業タイプ別の第四次産業革命への対応

製造業の工程は、大きく分ければサプライチェーン(製品・サービスの受発注から消費者に届くまでのプロセス)とエンジニアリングチェーン(研究開発、商品企画、製品設計など)の2つがあり、この2つのチェーンが工場で交差しながら行われており、2つのチェーンをIoTなどで電子的につなげてデータを利活用することが重要になってきています。

しかし、IoTはあくまでツールであり、導入自体が目的ではありません。いかに顧客の課題に対して最適なソリューションを効果的に届けることができるか、自社の課題解決能力を高めることができるかが重要です。そうした観点から、また、データを取る企業が増える一方で具体的なデータの活用方法に悩む企業が多くいると考えられる中、具体的にどうデータを活用すればよいかの参考にするために先進事例を多数示したのが第2節です。

具体的には産業群を最終製品、部品・部材、素材、設備の4つに分け、ソリューションごとにラベリングをして、約90の先進事例を整理・見える化しています。たとえば、対顧客のソリューションには、予知保全や遠隔保守、運用最適化、それから全く新たなビジネスモデルを考えるようなサービスがあります。さらには、それらのソリューションを通して自社の能力を高めることも期待されます。そういったことを通して生産性向上や新たな付加価値の創出を目指していかなければならないのではないかということを論じています。

具体例も挙げており、たとえば、三浦工業は産業ボイラーで国内シェアが高い会社ですが、遠隔保守や予知保全、運用最適化の観点からデータをうまく利活用しています。マツダでは、従来の開発に比べて部品の点数が増え、高度化・複雑化している上に短時間で設計開発しなければならない中、モデルベース開発という手法を用いてかなり効率化しています。IBUKIという金型の中小企業は、コンサル企業とうまく組みながらAIを活用し、金型における設計支援や予知保全、技能伝承などを行っています。

第3節 我が国製造業の変革の方向性

昨年の白書では、単にいいものをつくるだけではなく、サービス・ソリューション展開する企業を目指すべきではないかということで、「ものづくり+(プラス)企業」を提唱しました。

まさに顧客価値実現の手段が、技術革新によってモノの所有から機能の利用、顧客体験の提供に変わってきている中では、他のモノやサービス、情報と結び付けて価値拡大を図るようなサービス・ソリューション展開が重要です。その際にどのような思考、行動特性、手段があり得るか、ものづくりを巡るトレンドとして一定の仮説を置いて、事例を集めたのが第3節です。

サービス・ソリューション展開まで図るようなビジネスモデルの構築に向けては、顧客起点かつ全体最適化がとても重要で、デザイン思考やシステム思考の重要性も増します。行動特性としては、顧客ニーズへの迅速な対応という点で、アジャイルな経営、設計開発をしていくことが重要でしょうし、プラットフォームを意識したビジネスモデルをつくることも重要です。第3節では、そのための手段としてオープンイノベーションなどの外部経営資源の活用という方向性を示しながら、具体例も交えて論じています。

価値創出・最大化に向けて

価値創出・最大化の観点から、顧客起点、全体最適化のためのデザイン思考、システム思考が重要です。デザイン思考とは、顧客起点で物事を考える設計手法であり、国内でもかなり関心が高まっているのを肌で感じます。それから、システム思考の観点も極めて重要になってきています。第四次産業革命やドイツのIndustry4.0も、極論すればシステム思考、システムアプローチが本質ではないかという人が結構多いです。従来の延長線を深掘りするだけでは付加価値が生まれにくくなっている中、さまざまに異なるシステムをどう最適化するかが課題になっていると思います。

たとえば車の世界を考えると、従来型のガソリン車を深掘りしていても、簡単には付加価値が得られなくなりつつあります。他方で、無人走行を実現しようと思えば、従来の車のシステムを深掘りすることも重要ですが、交通管制系や地図情報のシステムのように全く異なるシステム系のことも考えなければなりません。

いろいろな異なるシステムの下で動いているものをうまく結び付けて、全体最適化を図ることによって付加価値が生まれることが多いという点では、全体を見て最適化することが重要ではないかと考えています。そうした人材育成プログラムは海外で始まっていますし、国内でも幾つか出てきていますが、さらに強化していく必要があると思います。

それから、俊敏な経営に向けた外部経営資源の積極活用の観点で言えば、従来からオープンイノベーションの重要性はかなり指摘されています。ただ、アンケートを見ても、オープンイノベーションの取り組みがあまり大きく変わっていない企業が多いです。

一方で、製造業におけるM&A件数は増加しており、とくに日本の製造業が海外企業を買った件数が過去最大になっています。ベンチャー企業のM&A投資がかなり増えてきている点からも、動きは着実に出てきていると感じます。とくに日本企業が、第四次産業革命に関連するようなAIやデジタル技術を持っているベンチャーに投資しているケースがかなり見受けられます。ベンチャーへの期待はかなり高まっており、実際にベンチャーでもとくに高い技術を持っている企業は、割と創業から間がなくても大企業と対等に事業を行っているケースが増えています。

面白い取組事例としては、たとえば、東京都墨田区の浜野製作所は中小企業ですが、「Garage Sumida」というベンチャーを支援するインキュベーション施設を自分たちで作り、自分達中小企業が培ってきた強いものづくり力とベンチャーの極めて優れたアイデアを結び付けることによって事業化を図るといった効果的な連携を進めています。

強い現場の維持・向上

強い現場の維持・向上の観点から、人材不足対策に取り組む事例も幾つか紹介しています。現場の人間の代替だけを意図してITやロボットを導入するのではなく、人間は人間らしい仕事をする方向で変革している先進企業が多くなっています。つまり、人間がいない現場を目指すよりも、極めて単純な作業はIT化することで労力を軽減する一方、現場で働く人はもっと付加価値が高くて人でなければできない仕事に特化する形で変革を目指しています。そういった事例を働き方改革や生産性向上の観点から進めなければならないと感じています。

また、ものづくりの現場は、工場だけではなくホワイトカラーの部分、とくに間接部門の生産性向上が大きな課題だといわれているので、こうした点も調査を進めたいと考えています。

それから、IoT活用による熟練技術のマニュアル化、データベース化と現場力との相関を調べると、大企業・中小企業を問わず、熟練技術の伝承が極めて容易になったという回答が寄せられています。また、自社の強みとする領域の特定にも、熟練技術のマニュアル化、データベース化が役立っています。こうしたマニュアル化、データベース化を図っている企業の方が、現場力において前向きな見通しを持っていることもアンケート結果から分かりました。

また、レジリエンス対応の観点から、製品・部品の調達先の状況把握について尋ねたところ、自分たちが扱っている製品について調達ルートを把握している企業は1割に過ぎず、製品・部品の購入先のみを把握している企業が約半数でした。

事業継続計画(BCP)を策定した企業は全体で3割程度でしたが、大企業は76%が策定済みで、検討中を含めると97%に達しました。一方、中小企業は策定済みが27%で、検討中を含めても63%でした。

部品調達先が多様化傾向にある中で、調達先に関してBCP対策を考慮する企業は、大企業で半数以上でしたが、中小企業は2割と低いです。さらに、自社内のBCPとの整合性を考慮している企業も、大企業に比べて中小企業は少なく、なかなか手が回っていないことがうかがえます。

熊本地震との関係でも、レジリエンス対応について聞きました。BCP対策は有効に機能したかどうかを聞いたところ、機能したと答えたのは大企業が約8割であった一方で、中小企業は約25%にとどまりました。この点からも、BCPの策定率、さらにはその実効性も含め、大企業と中小企業では大きな差があり、中小企業におけるこうした対策の強化が課題となっています。

Connected Industries

我が国の産業が目指す姿として、経産省を中心に日本として今年3月、Connected Industries(コネクテッド・インダストリーズ)という概念を発出しました。国内でも従来から第四次産業革命という言葉がありましたが、基本的には技術の変化を大きくとらえた言葉だったと思います。そうした中で、しばらく前から「Society 5.0」というコンセプトを日本は発してきました。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会を経て、これからは超スマート社会を目指すというものですが、これは社会の変化をとらえた言葉だと思います。

技術の変化である第四次産業革命を、社会の変化であるSociety 5.0につなげる過程で、産業の在り方をとらえた大きなコンセプトが必要だということで出したのがConnected Industriesです。まさに、さまざまなつながりによって新たな付加価値が創出される産業社会を目指す概念です。モノとモノがつながるIoTだけでなく、人と機械・システムがつながればいろいろな協働・共創ができるし、人の知恵が機械・システムによってさらに拡大されることも起き得ます。さらには、国境を超えて企業同士がつながることもできるし、人と人が世代を超えてつながることで技術を伝承することもできます。

その際、我が国の強みである技術力や現場力を生かしながらソリューション志向で行うことが鍵だと思いますし、人間本位の産業社会をつくり上げていくことも重要だと思います。まさに今求められているのは、さまざまな産業や組織、人、モノ、技術がつながることによって付加価値が生み出され、また大きく変わる時代だと思います。そういったつながりを通して価値創出を行い、大きく変革する産業社会をつくるために、こうしたコンセプトを掲げています。

Connected Industriesの推進に向けて、デジタルツールの利活用のための環境整備も極めて重要です。セキュリティや人材育成、データ利活用のルール整備、標準化、規制改革などを進めていく必要があります。

以上が今年の白書の概要ですが、Connected Industriesの推進に向けてさまざまな先進ツールの利活用などが重要となる中で、白書でわれわれが示した先進事例や、トレンドとして記述した内容は1つの考え方でしかありません。Connected Industriesに向けてどういった形で先進ツールを利活用すればいいのか、ビジネスを変えていけばよいのかは各社の持つリソースやポジショニングによって異なると思います。是非、各社で徹底的に議論していただければと存じます。そうした際に、白書に記載した先進事例やトレンドとして記した内容を参考にしていただければ当方としては有り難く思います。

質疑応答

Q:

災害によるサプライチェーンの断絶を回避するには製造拠点を分散すればいいのですが、それはコスト面でデメリットがあります。サプライチェーンが止まっても早く復旧すれば、レジリエンス対策としては有効だと思っている企業も多いと思いますが、今回の分析を通じて感じたことがあれば教えてください。

A:

今回の分析を通じていろいろな対策が必要だと感じていますが、大きな課題として見えてきたのが中小企業のBCPの策定率と策定したBCPが機能する割合の向上です。そうした中、地域を超えた工業組合間の広域連携など、緊急事態の際に互いに代替できるような取り決めを事前に結んでいる事例も生まれてきており、こうした取り組みは参考になると思います。

Q:

日本企業のROEが欧米と比較して低い原因は何でしょうか。

A:

仮説として考えているのは、付加価値創出・最大化を本当の意味で最大の目的として掲げていないのではないか、ものづくりありきで考えているのではないかということです。顧客価値がどこにあるかを起点としたものづくりの考え方が弱いと感じています。そうした点を変えるために、顧客起点かつ全体最適化によって付加価値をしっかり生むようなビジネスモデル、バリューチェーンを考えるべきだと思います。

Q:

ITを活用するための専門家教育が日本では大変薄く、企業ではビッグデータを集めてもどう使えばいいか分からないという状況が続きかねないような気がします。

A:

政策的にも人材育成の部分が大きな課題と感じており、とくにデジタル化という時代の変化を踏まえた人材育成に対して支援ができるようなスキームを、経産省では検討しています。リカレント教育のように、既に働いている方々に対する再教育も重要ですし、大学教育や専門学校などの教育の再構築についても検討を進めていく必要があると思います。

Q:

デジタル化対応やさらにはシステム思考、デザイン思考ができる人材の確保に向けた先進的取り組みはありますか。

A:

現在行っているものとしては、県の産業支援機関や商工会議所などと一緒に行っている「スマートものづくり応援隊」事業があります。従来の現場改善に加え、IoTやロボットの導入支援をするインストラクターを育成しています。また、デザイン思考については、各企業での取り組みがかなり増えていますし、大学でも慶應大のシステムデザイン・マネジメント研究科(SDM)があるほか、京大、東大などでもコースが組まれています。しかし、システム思考については、慶應大のSDMなどでは取り組んでいるものの、まだ増えてきていないと感じています。この部分は重要だと思っていて、取り組みをいろいろなところに広げていく必要があると思います。

Q:

実際に集めたデータを活用する段階で、いろいろなプラットフォームが必要になると思いますが、日本には比較的汎用性のあるプラットフォームはあるのでしょうか。

A:

各社いろいろと取り組んでいる中で、割と日本の特徴だと思うのは、ものづくり系のプラットフォームをつくる動きです。たとえば工作機械・ロボットの分野では、ファナックがFANUC FIELD systemというプラットフォームを仕掛けていて、自社の機器だけでなく、他社の機器も接続できるようにしてデータを利活用する仕組みをつくっています。三菱電機もFA-ITオープンプラットフォームという同じような分野でプラットフォームを構築し始めました。日本の強みを生かすという観点からすれば、そういったプラットフォームの動きがもう少し戦略的に広がるべきではないかと感じています。

Q:

各企業やグループごとに独自にソリューション起点のシステムが進化していくと、全体として非常に無駄が生じたり、川上の産業においてとくに中小企業が大きな負担を強いられたりすると思うのですが、その点についてどう考えておられますか。

A:

こういった分野で重要なのは標準化だと思っていて、標準化を図りながら重複の無駄がない形で皆さんが取り組めるようにすべく検討を進めています。

Q:

中国・香港から国内回帰する動きは今後も続いていくのでしょうか。

A:

一定程度続くと思いますが、最近は中国に進出した日本企業の工場を東南アジア諸国連合(ASEAN)へ移す動きも同時に出てきています。必ずしも中国・香港と日本の間だけでなく、もう少し別の国・地域も含めた全体最適を図る動きを企業は考えていると思います。

Q:

中国も「中国製造2025」で、第四次産業革命の波をとらえ、さらに高付加価値化を進めていこうと考えていると思います。そうした動きについてご知見を教えてください。

A:

たしかに中国、韓国、台湾はかなり関心を持っていますが、中国は現状、最先端の工作機械やロボットの分野ではまだまだ差があるといわれています。むしろ中国にはドイツ系企業が相当食い込んでおり、日本企業はドイツ系企業との関係でどこまで中国において存在感を示せるかが大きな課題だと思います。

さらには、ASEANでも同じような競争をしていかなければなりません。工作機械やロボットの分野ではアメリカは存在感があまりなく、むしろドイツと競争しています。今のところは中国をはじめとするこれらの国々との比較では日本にアドバンテージがあります。ただ、こうした国々もかなり発展が目覚ましいので、注意しておかなければならないと思います。当面は欧州企業といかにマーケットとして伍していけるかを考えなければならないというのが、大方の認識です。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。