2016年米国大統領選挙をどうみるか?

開催日 2015年11月27日
スピーカー 渡部 恒雄 (東京財団政策研究ディレクター(外交・安全保障担当)兼上席研究員)
コメンテータ 渡辺 靖 (慶應義塾大学環境情報学部教授、政策・メディア研究科委員)
モデレータ 田村 暁彦 (RIETI上席研究員/経済産業省通商政策局国際規制制度交渉官)
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開催案内/講演概要

2016年の大統領選挙の行方は全く予断を許さない。政治の「素人」で現実離れした発言を繰り返す富豪のトランプや著名外科医のカーソンが共和党候補の先頭を走り、民主党の先頭を走るヒラリー・クリントン前国務長官への支持が伸び悩み、二番手の「民主社会主義者」を自称するサンダーズの人気が衰えない。これは、保守とリベラルに二極化している米国民の既存の政治家に対する不満の表れといえる。内政では貧富の格差拡大の継続と将来の経済への不安があり、外交面では、世界秩序における米国自身の位置づけへの深刻なアイデンティティー危機がある。

2008年の選挙では、イラク開戦と米国の重い軍事負担によるブッシュ政権への不満に対して、オバマ政権が米国の選択だった。しかし2015年の世界をみると、米軍の国際関与を軽減させてきたオバマ外交が、むしろ米国の求心力を低下させたという不満も渦巻く。このような米国の現状を映し出す大統領選挙の情勢を分析し、今後の米国の行方を探る。

議事録

米国政治が保守とリベラルの二極に分化、共和党内でも分化が進む背景

渡部 恒雄写真第2次世界大戦後、米国で共和党と民主党のどちらが政権に長く就いているかというと、共和党です。民主党が国民からの支持が弱いというわけではありません。実際、議会で多数をとっている期間は民主党のほうが圧倒的に長いのです。簡単にいってしまえば、共和党は民主党に比べてまとまりがよかったので、大統領選挙で勝ってきたということでしょう。

2000年の大統領選挙は、共和党・民主党の双方に不満を残しました。ブッシュvs.ゴアの選挙は接戦となり、異例のフロリダ州リカウントをめぐる法廷闘争に発展。ブッシュの勝利で決着がつきました。

総得票数でブッシュを上回ったゴア支持者は、結果に納得できませんでした。これは、米国が18世紀後半の建国当初の交通事情を反映した選挙人団制(electoral college)を維持しているという矛盾の反映といえるでしょう。この1件が、保守とリベラルの分極化のきっかけになったエピソードだと思います。保守とリベラルのイデオロギー上の党派対立は、クリントン政権の頃から激化しましたが、クリントン大統領には、保守派でも嫌いになれない人間的魅力がありました。

イラク戦争の苦境をもたらしたブッシュ政権に対する不満が高まり、オバマ大統領が誕生したのが2008年の大統領選挙です。このときは空前のオバマブームだったため、議会も上院・下院ともに民主党が過半数を取りました。そこでオバマ政権は、リーマンショック後の米国経済を立て直すための史上最高額の景気対策を打ち出します。オバマ大統領はG20を初めて開催して国際的な政策協調を主導し、リーマンショックが世界的な金融危機を引き起こさず、米国の経済の立て直しの布石も打ちました。

次にオバマ大統領は、オバマケアと呼ばれる社会保障政策の拡充を行ったわけですが、これによって共和党の小さな政府主義者の大反発を買うことになります。米国には国民皆保険のシステムがないため、医療保険に加入できない人が6人に1人程度の割合で存在します。そこで公的医療保険を拡充するオバマケアの法案が通り、現在施行されています。

ところが、オバマケアは政府の役割を肥大させ、個人の自由を侵すものであり、米国の民主主義に反するものであると「小さな政府主義者」が反発。「ティーパーティー(茶会派)」と呼ばれる草の根運動が広がり、共和党がそれを吸収しました。ティーパーティーは共和党の中道派を予備選で攻撃して勝利し、多くの中道派の議席を奪って米国政治の二極化を進めました。

主要候補者への有権者の印象

精度では定評のある、米国コネチカット州にあるクイニピアック大学が8月20~25日に行った世論調査によると、米大統領候補に関して有権者が「最初に思いつく言葉」として、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官は「嘘つき(liar)」「不正直(dishonest」)「信頼できない(untrustworthy)」となっています。

共和党のドナルド・トランプは「傲慢(arrogant)」「大口の自信家(blowhard)」「ばか(idiot」)です。共和党のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事に対しては「ブッシュ」を挙げた人が圧倒的に多く、個人の資質よりも、父と兄の大統領を擁する「ブッシュ家」のイメージが先行しています。

トランプが誹謗中傷を繰り返すことで支持率を上昇させている状況は、有権者の既存の候補者に対する信頼の欠如や興味の低下を反映しています。ヒラリーは「嘘つき」で、ブッシュは「ただのブッシュ家の人間」と思われ、現時点で共和党候補者の支持率トップの2人がプロの政治家ではありません。トランプとトップを争うベン・カーソンは、結合双生児の分離手術の成功などで有名な元外科医です。

「外交政策におけるオバマケア」としての「イラン核合意の撤廃」も争点

分極化の一端を示す政策課題は、「外交政策におけるオバマケア」といわれているオバマ政権の行ったイランとの包括的核合意です。その最右翼は、オバマケアに対する強い反対者でもあるテッド・クルーズ上院議員といえます。彼はキューバ系で、極めて保守的な信条を持つ政治家です。

クルーズ上院議員は、「オバマ大統領がこのままイランとの核合意を進めていけば、イランの核兵器を止めるものは何もなくなる」として、取り消すべきだと述べています。これに対し、共和党大統領候補の第2回ディベートで、ジョン・ケーシック(オハイオ州知事)は、今回のイラン合意についてのクルーズ氏の政策は経験不足を示すものと指摘。自分は必ずしもオバマ政権のイラン合意を支持するものではないが、一方で現在の合意の履行を邪魔はせず、イランが合意を守らなかったときに、すかさず制裁を強化すればいいと述べています。ケーシックは一般にはそれほど人気は出ていませんが、ワシントンDCの専門家には待望論もみられます。

私は個人的に、マルコ・ルビオ大統領、ジョン・ケーシック副大統領という路線を打ち出せれば共和党に優位ではないかと思っています。ルビオはフロリダ州、ケーシックはオハイオ州ですから、選挙民の数が多いこの2州をとっておくことは重要です。

ランド・ポール上院議員はやはりティーパーティー系ですが、マルコ・ルビオ上院議員とは若干、思想が異なります。ポールの父は徹底的な反戦主義者で、かつ保守派のリバタリアンで、彼もそれを受け継いでいます。米国の政府は余計なことをしてはいけない。社会保障も最小限、外交も最小限、他国へ軍隊を送るなどもってのほかという考えを持ち、孤立主義的といえます。

つい最近の共和党候補のディベートにおいて、ルビオとポールは議論を戦わせています。ルビオは、より積極的な外交・軍事政策を打ち出し、ポールを確信犯の孤立主義者であると指摘し、米国が豊かに暮らすには貿易や投資などの国際的な経済活動が必要で、その利益を担保する国際的安定のために米軍の世界展開と軍事費が必要と主張しています。

ポールは反対に、そもそも自国がファイナンスできないような軍事費を計上していることについて、ルビオの主張はおかしいと言って政策の転換を主張しています。現在、ルビオがポールよりも人気を集めているところをみると、共和党支持者は全般的にそれほど孤立主義的ではないような気がします。

2016年大統領選挙の外交・安全保障議論の根底にあるもの

民主党2番手のバーニー・サンダース上院議員は、高齢ですが若い人に人気があります。自らを民主社会主義者といっており、会派は民主党ですが、ヒラリー・クリントン陣営では彼を民主党員とは扱っていません。偏在している社会の富をもう少しバランスをとるべきであると主張し、人気を集めています。

全米最大の労働組合AFL-CIO(米国労働総同盟・産業別組合会議)が集計した「S&P 500 Top CEOの年収と平均の非管理職の年収の差」というデータをみると、1980年は42倍でしたが1990年には85倍になりました。さらに2000年には525倍に跳ね上がり、2009年のリーマンショック後には300倍に落ち着いた後、2014年には373倍に再び上がりつつあります。つまり過去20年において米国の貧富の差は大きく広がっており、バーニー・サンダースが若い人の支持を集めているのは、その格差を社会問題として受け止めている人が多いことを示しています。サンダースは反戦主義者でもあり、米国が余計な軍事費用を負担することにも反対しています。

民主党内でも、ヒラリー・クリントン候補やバーニー・サンダース候補に不満を持つ層がジョー・バイデン副大統領の出馬を強く求めたように多極化が進んでいます。バイデンは若い頃に妻と娘を交通事故で亡くし、残った息子のうち長男も今年病気で亡くなりました。その息子が応援していたため、簡単に出馬を断念するとは言えなかったようです。東日本大震災後に、来日したバイデンが被災した仙台空港で行った際のスピーチには、庶民の心を理解するたたき上げの政治家としての真骨頂がありました。

そのバイデンが出馬を諦めたことで、ヒラリー・クリントンは有利になりました。相変わらずサンダースは強いもののヒラリー・クリントンの支持は揺るがないと思います。かたや、共和党の候補者選びの状況は混とんとしております。しかも、相変わらず人気の高いビル・クリントン元大統領は、ヒラリーにとって最強の武器といえます。再選のかかる2012年の大統領選挙でオバマを積極的に応援して、同時に改選を迎えた民主党議員たちに大きな貸しを作っていますから、オバマ支持者や現職の民主党議員のヒラリー支持は堅いはずです。

共和党と民主党、どちらが日本にとっていいのか

ヒラリー・クリントンは、外交・安保ではオバマよりもややタカ派よりのポジションを取ると思われます。米国の世論やメディアは、オバマのパワーポリティクスの本能的な理解と対応が弱いせいで中国やロシアを勢いづかせたと思っている傾向があるため、次の大統領には米国の力の要素を重視して指導力を回復してほしいと望んでいるわけです。

2010年に顕在化した中国の国際法やルールを無視した拡張的な行動に危機感を持ち、7月のクリントン国務長官のASEAN地域フォーラムでの中国を牽制する演説を契機に、米軍のアジアでのプレゼンス重視を含むアジア回帰(リバランス)政策が打ち出されています。

当時、国務次官補でクリントン国務長官とともにアジア・リバランスを主導した中道系のカート・キャンベルは、日米同盟を強く支持しています。共和党のアーミテージ元国務副長官やマイケル・グリーンと元NSCアジア上級部長とも近い関係にあり、中国への警戒感から、日米同盟重視は超党派で期待されています。選挙が終われば、民主党政権でも、現実的な観点から自由貿易政策、とくにTPPのような米国経済およびアジアの地政学戦略に有利となる政策を推進することになるでしょう。

ですから共和党政権になっても、民主党政権になっても、予測不可能なカーソン、トランプ、サンダースを除けば、日米同盟にとって大きなプラスマイナスはないと思われます。日本はどちらの党にも苦手意識を持たずに、米国との同盟関係や対外の関与を重視すべきでしょう。

外交安全保障政策について、米国人が内向きなのか、外向きなのかは大切なテーマといえます。対外関与について、ブッシュはtoo muchでオバマはtoo littleだといわれています。2008年の大統領選挙は、事実ではない理由でイラク開戦を行い、戦後の治安維持に失敗したブッシュ政権に対するNOでした。ブッシュは対外関与についてtoo muchで、やらなくてもいいイラク戦争をやって余計な負債を背負ってしまったわけです。それをやめようと言ったのがオバマでした。ですからオバマはイラクからの撤退を進め、他地域で極力、余計な軍事関与をしないようにしてきました。しかし、そのおかげでプーチンや習近平に甘くみられ、ロシアはクリミアを併合してシリアで軍事作戦を行い、中国は国際法に抵触する南シナ海の埋め立てを継続しています。つまり、オバマの対外関与がtoo littleだったことも問題だという一般有権者の認識があります。

今年の大統領選挙は、too muchかtoo littleかの簡単な選択ではなくなりました。どういう形で米国が対外関与をすべきなのかを示すのは難しく、単純な答え、あるいは逆に複雑な答えでは米国の有権者は納得しないでしょう。ただし、トランプ現象が進めば、トランプの決めのセリフ「お前はクビだ!」と単純明快に、多少乱暴なことを言っても許される雰囲気になってしまう可能性もあります。

コメンテータ:
2016年の大統領選挙は、米国の自己認識、アイデンティティの根本が問われるという意味で重要です。1つは、対外的に中国やロシアのような覇権挑戦国がいて、イスラム過激派のような非国家的存在による脅威も増大しています。米国にとっては、第2次大戦後に自分たちが主導してきたリベラルな国際秩序が大きく揺らいでおり、それを守り切れるかという問題を抱えています。

もう1つは、国内的に白人がどんどん少数派になり、女性の社会進出が不可逆的に広がっています。抵抗はあっても社会全体としては、人工妊娠中絶や同性婚、マリファナ解禁といったリベラルなトレンドがみられるようになっています。この10年における米国社会の大きな変化として、同性婚がこれだけ急速に広がったことは驚きです。ユタ州のソルトレークシティーは伝統的に保守派が強い地域ですが、最近、その市長に同性愛者が選出されています。

また米国では、格差が拡大してミドルクラスが崩壊してきています。1950年代は米国の黄金時代といわれ、対外的には自由世界の盟主であり、世界の警察官ともいわれました。国内的にはキリスト教かつ白人が中心で、ミドルクラスが基盤になっている社会が、米国の基本的な自己認識だったと思います。それが大きく揺らいでいる中で何を守り、何を諦め、次の時代にどう生きていくのかを観察するには、2016年は重要な選挙だと思っています。

50年代は、ニューディール・コンセンサスの時代ともいわれ、共和党と民主党の差があまりなかった時代です。それも完全に過去の遺物として決別してしまうのか。あるいは再び歩み寄る可能性が残されているのか。それを判断する上でも、2016年の選挙は重要です。

党派対立がとくに顕著になったのは、90年代以降だと考えられます。60年代後半から、共和党が民主党との違いを明らかにするために保守路線を打ち出し、理論武装をしたり、キャンペーンをしたりするようになりました。その背景には、60年代以降の公民権運動に対する反発があったのも事実です。

とくに90年代以降、福祉国家というものが世界的に立ち行かなくなり、冷戦崩壊後、ネオリベラルな潮流が世界の基本になっていきました。大きな政府というオプションがなくなっている中で、選挙に勝つためには両党の差異を強調しなければならず、人口妊娠中絶といったシンボリックなイシューが一種の踏み絵となり、その違いが増幅されていった面もあります。

同様に、些細な言動が大きくクローズアップされて、あたかも歩み寄れない違いであるかのようにハイライトされました。政策的に大きな違いが出せないため、「一緒にビールを飲みたいかどうか」といった政治家の人柄が大きなファクターになっていきました。

こうした党派対立に米国国民はうんざりしており、最近の世論調査では8割が政府を信用していないという結果もあります。それが今回の選挙で、共和党のアウトサイダー系でまったく政治経験のないトランプやカーソンが台頭し、民主党では独立系で社会民主主義者のサンダースといった候補に人気が集まっている1つの理由だと思います。

米国は、軍事、経済、エネルギー、イノベーション、ソフトパワーといった個別の要素は、いまだに非常に強いわけですが、ガバナンスという肝心の心臓部分がきちんと機能しているのかが、最大の不安要素といえるでしょう。資金がかかって政治参加が阻まれているということも懸念材料ですが、一番の不安材料は分極化にあるのだと思います。

それを解消するのは現実的に難しいですが、短期的にはテロといった大きな危機が起こることで、まとまることが考えられます。また、どちらかが選挙で大勝して歩み寄らざるを得なくなったとき、政治力学的に歩み寄ることがプラスになるという環境になれば、状況が変わる可能性もあります。しかし今回の選挙をみる限り分極化の構図は変わらず、両党の討論会をみていると、まるで別の国であるかのような印象さえ受けます。

今、対外政策的には共和党にとって追い風が吹いていると思います。しばらく内向きの状態が続きましたが、中国やイスラム国の問題が起こり、自分たちが実害を被りかねない状況となり、国民にはオバマ外交が弱腰にみえている面があります。

しかし国内的には、民主党に追い風が吹いているようです。経済状況も悪くなく、人口動態的にもマイノリティが増えていることは、民主党にとってプラスといえるでしょう。共和党候補の一部にみられる差別的な発言は、変わりゆく米国の最後に白人のクリスチャンがあがいているような古くさい印象を受けます。

次の選挙で民主党が勝つと3期連続となりますが、米国では第二次世界大戦以降、3期続いて成功したのは、88年にレーガンからパパブッシュに引き継がれたときが最初で最後です。あれほど景気がよく国民から人気の高かったクリントンでさえ、ゴアに権力を移譲することに失敗しています。この「3期目のジンクス」がどう作用するかは、ちょっとわからないところです。

また、アウトサイダーは政策的な知識が乏しく、その失言や暴言をメディアがピックアップして叩きます。従来はそれで潰れていくケースがほとんどでしたが、なにせアウトサイダーであることが魅力のため、叩かれれば叩かれるほど支持者は燃え上がるわけです。それがどのように働くかということも予測できません。

分極化しているのは大統領と議会だけでなく、議会そのものも重要な要素となっています。下院は、区割りの関係で共和党が引き続き多数派となり、もしヒラリーが大統領になった場合、ねじれ現象が続くことになります。上院は、2010年の選挙において反オバマ旋風で勝った議員が多いこともあり、今回は民主党が多数派に返り咲く可能性は残されています。

TPPについては、合意内容そのものを覆すよりは、解釈に幅を持たせるような形で落としどころを見つけていくようになると思います。選挙後に、各利益団体に背を向けてまで反対あるいは賛成に回ることは難しいため、表向きはTPPについてネガティブな発言が出ることはあっても、基本的な合意が覆されることはないでしょう。

質疑応答

Q:

米国は、TPPを中国に対抗する中核的な位置づけにしたいと考えているのでしょうか。

A:

オバマ政権の意識としては、領海問題など既存の国際的ルールを守らない中国を圧倒的な力をもって封じ込めようとはせず、TPPのような経済ルールであれば、中国が参加するインセンティブもあるので、中国を巻き込んでいけるのではないかと考えているように思います。

ヒラリーがオバマ政権の国務長官としてTPPを推進しておきながら反対に転じた背景には、AFL-CIOが今後、TPPおよびTPAに賛成票を投じた議員には選挙資金を一切提供しないと表明したことがあります。つまり、ヒラリーを応援してくれる民主党の議員が活動しやすいように、また自身も組合の支持が得られるように、とりあえずTPPに反対しておくという選挙戦術からきていると思います。

Q:

今回の選挙戦の中で、ユダヤロビーを含め、イランの核合意はどの程度意識されているのでしょうか。

A:

ユダヤ人勢力はもともと民主党支持の人が多く、共和党はブッシュ政権辺りでようやくユダヤ系の右派を取り込めるようになってきました。ですから今回のイラン核合意に対しても、必ずしもユダヤ系団体の対応は一枚岩ではなく、賛成と反対が割れています。クルーズがイラン核合意に反対しているように、共和党が保守系ユダヤ人団体の支持を集めるには好都合な政策課題だと思いますが、最終的に選挙の流れを二分するような争点ではない気がします。

コメンテータ:

AIPAC(米国イスラエル公共問題委員会)などはイラン合意に批判的だと思いますが、米国ユダヤ人協会などは、この問題について政治的立場を明確にしていません。ですから、「ユダヤ系だから反イラン」というシンプルな構図にはならないと思います。合意へ向け議会の票を取りまとめたチャック・シューマー上院議員はニューヨーク州選出のユダヤ系です。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。