内外経済の展望 ―アベノミクスの課題を検証する―

開催日 2015年2月20日
スピーカー 湯元 健治 (株式会社日本総合研究所副理事長)
モデレータ 松永 明 (RIETIコンサルティングフェロー/経済産業省経済産業政策局審議官(経済産業政策局担当))
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2015年度の日本経済を展望する。その前提として、米国、欧州、中国を中心に世界経済が抱えるリスクについて、幅広い角度から分析。同時に、過去2年間のアベノミクスの成果を3本の矢に沿って検証。今後、日本経済がデフレから脱却し、少子高齢化、人口減少の下でも持続的な成長を続けるための課題を成長戦略に焦点を当てて指摘。

議事録

日本経済:アベノミクスの成果検証

湯元 健治写真過去2年間のアベノミクスの成果を振り返ると、1年目を中心に円安・株高によって経済成長率が上昇し、雇用情勢は改善しました。消費者物価やインフレ期待も上昇し、2013年の実質成長率は1.6%となり、一定の成果を上げたといえます。

2014年4月の消費税率引き上げ以降は、実質成長率、鉱工業生産ともに2四半期連続のマイナスとなり、景気は一旦後退局面に入りました。しかし、それもテクニカル・リセッションに過ぎず、秋口から景気は再び回復基調となり、10〜12月期GDPは年率2.2%のプラス成長に転じています。

アベノミクスの誤算として、次の3つの点が挙げられます。第1に消費税の影響が予想を上回ったこと、第2は実質賃金のマイナスが持続したことです。消費税の上げ幅が1997年時より大きく、消費税増税前から円安により物価が上昇していたため、実質賃金のマイナスが消費の抑制要因となりました。

ボーナスは増加したものの年間の名目賃金は0.8%上昇に留まり、物価上昇の影響を吸収しきれなかったわけです。しかし雇用者数の増加に伴い、年後半の名目雇用者報酬の伸びは2%台に上昇し、実質賃金のマイナス幅も縮小しています。

第3の誤算は、円安が輸出数量の回復に結びつかなかったことです。その背景には、海外現地生産・販売の拡大、部品・資材の現地調達比率の拡大とともに、日本企業が現地販売価格を引き下げず、シェアよりも収益を重視する姿勢に転換するといった構造的な要因があります。しかし2014年12月、2015年1月には輸出数量の拡大がみられ、これまでの横ばいトレンドから抜け出しているようです。今後、円安の影響が少しずつ表れることが予想されます。

異次元緩和は市場の期待を変化させ、大幅な円安・株高、長期金利の低下をもたらしましたが、実体経済の刺激効果は限定的といえます。マネタリーベースを増加させてもマネーストックの増加は限界的で、信用乗数が顕著に低下しています。また異次元緩和による円安は、貿易収支の赤字を加速させるという副作用を及ぼします。

円安の数量効果は限定的で、価格効果が輸出入の両面で発現しています。これ以上の円安は日本経済全体にとってマイナスですが、この4カ月連続で貿易収支の赤字は縮小しており、望ましいシナリオの実現に向かっているといえます。

2015年度の日本経済を見るポイント

2015年度の日本経済を見るポイントとして、まず「賃金上昇率が加速するかどうか」に注目が集まっています。今春闘の賃上げ率は、昨年(2.28%)を小幅上回る2.3〜2.5%、ベアは0.5〜0.7%になることが予想されます。賃金水準の低いパートタイム比率の上昇が全体の賃金上昇率を抑制しており、パートの時給は上昇しているものの労働時間が減少し、月例賃金は伸びていない状況です。労働市場の二極化を是正することも、賃金上昇の重要なポイントになると思います。

一方、1人当たり雇用者報酬は1%台半ばの伸びとなっており、雇用者数の増加を加味すると、名目雇用者報酬の伸びは2%台前半と考えられます。2015年度の消費者物価は、消費税再増税の延期と原油価格の低下により0.6%(民間平均)〜1%(日銀)の上昇となり、その結果、実質雇用者所得は1%以上のプラス浮上が期待されます。これが2015年度の日本経済が上向く1つの要因になると考えられます。

また、構造的人手不足が賃金上昇圧力として作用し、失業率のレベルは17年4カ月ぶりの低水準、有効求人倍率は22年9カ月ぶりの高水準となっています。アベノミクスのプレッシャーに加え、労働需給面からの賃金上昇圧力が少しずつ高まっていくことが予想されます。

ただし、人手不足はパート・アルバイト、派遣社員などの非正規雇用が中心で、宿泊・飲食サービスといった一部業種では賃金上昇に結びつくのは難しい状況です。こうした業界のビジネスモデルを転換するような民間の努力を合わせることで、賃金上昇率の向上につながると思います。

次は、「原油価格低下の効果をどうみるか」というポイントです。仮に1ドル120円、原油価格60ドルが定着した場合、2015年度は原油安のメリット(年間6.0兆円増)がフルに浸透し、円安デメリット(同1.9兆円減)を大きく上回ります。その結果、ネットでは4.1兆円の所得流入(交易条件の改善)が見込まれます。

3番目は、「設備投資は本格回復に向かうか」ということです。設備投資を巡る環境は、企業収益改善に伴うキャッシュフローの増加、異次元緩和による実質マイナス金利の実現、期待成長率の緩やかな高まりなど、改善していることは事実です。設備投資の回復力が本格的に強まるためには、企業の期待成長率の引き上げが必要不可欠といえます。

4番目は、「インフレ期待は高まるか」という点です。家計のインフレ期待を計測すると、中期のインフレ期待は1%強で推移し、短期では0.6%程度に増勢鈍化しています。インフレ期待の高まりは、異次元緩和による合理的期待というよりも、現実の物価上昇を反映した適応的期待によるものと考えられます。

現在の状況下では、日銀の2%物価目標を2015年度中に達成するのは困難といえます。インフレ期待は日銀の金融政策だけで高めていくものではなく、求められているのは成長期待、収益期待を高めることであって、それはアベノミクス第1の矢ではなく、第3の矢に期待すべきものだと思います。

消費税再増税の先送り、経済対策の実施、実質所得のプラス転化、原油価格低下の効果によって、日本の実質GDP成長率は2015年度1.7%、2016年度1.4%となる見通しです。少なくとも、底堅い成長が2年間は続くものと考えられます。

グローバルリスク

日本経済にとってのリスクは、グローバルな経済あるいは金融資本市場の予期しない動きが及ぼすネガティブインパクトといえます。米国の実体経済は日本の輸出増加を促進しており、好影響が波及していることは間違いありません。問題となるのは、米国における利上げのタイミングやスピードをめぐって市場の観測が揺れ動くことだと思っています。

現在、市場の期待は安定しており、米国の雇用情勢の改善ペースはFOMC(連邦公開市場委員会)の予想を上回っていることは間違いありません。ただし広義失業率は11%台と高く、パートのシェア低下もリーマン前には戻らず高水準を維持しています。利上げのタイミングは賃金上昇率の加速が確認される時ですが、足下の失業率は自然失業率(5.4%と推計)に近づきつつあり、年央から秋口にかけて到達する可能性もあります。

今後、米国で年率3%成長が続いたとしても、需給ギャップがゼロに到達するのは2016年第3四半期となるため、物価目標2%にはまだ遠い状況です。しかし、物価上昇圧力が徐々に高まっていくことは事実であり、2%に届かないからといって利上げをしないとは思えません。米国の潜在成長率は、労働生産性の低下や設備投資の低迷を背景に、リーマン前の2%台半ばから足下では1%台半ばに低下しています。こうした状況を勘案すると、利上げ後の金利上昇ペースは緩やかであることが予想されます。

FOMCメンバーの政策金利予測は、バラツキがあるものの2017年末にかけて3%台半ばまでの金利上昇を予想しています。他方、フェデラル・ファンド金利先物市場の金利形成は、より緩やかな金利上昇を想定しており、両者の見方の乖離は、不測の長期金利上昇を招来するリスクの存在を示唆しています。過去、長期金利の上昇局面(2001、2007、2014年)では、株価の暴落など市場の混乱が増幅しました。

また、1994年あるいは1997〜99年のように長期金利上昇にドル高・新興国通貨安が伴う場合、新興国の通貨危機が引き起こされるリスクも考えられます。米国株価は一部でバブルの懸念が指摘されますが、概ね企業収益に見合ったレベルにあり、バブル崩壊のリスクは小さいとみられます。ただし利上げ開始に伴い、一定の調整が生じる可能性に留意する必要があるでしょう。

欧州経済は、米国に比べて極めて景気回復力が脆弱で、デフレ・リスクが大きいといわれています。その最大の要因として、リーマンショック後もマイナス3%弱の大幅な需給ギャップが残存しており、改善の兆しもみられません。失業率は概ねピークを打ったものの、ギリシャや南欧諸国は依然として高水準にあります。完全雇用には程遠く、2015年の実質成長率は0.9%に留まる見通しです。

ECB(欧州中央銀行)は実質的にオープンエンドの量的緩和に踏み込み、市場に大きなインパクトを及ぼしましたが、実体経済への影響は限定的だと思われます。住宅価格は、アイルランドなどで底を打ってはいるものの、イタリア、スペイン、ポルトガルといった南欧諸国を中心に回復力は脆弱といえます。イタリア、スペイン、ポルトガルなどでは、金融機関の不良債権比率がなお上昇傾向にあり、金融面のクレジット・クランチが継続せざるを得ません。景気回復が急加速するシナリオは考えにくい状況です。

ギリシャのユーロ離脱をめぐっては、EUとギリシャ新政府の金融支援見直しを巡る交渉が難航しています。ギリシャ国債利回りは上昇しているものの、2012年危機当時と比べ小幅に留まっています。ギリシャ向け債権残高の内訳をみると、前回金融危機時と比べ、EFSF(欧州金融安定ファシリティ)、ユーロ圏加盟国、IMFの支援により、民間部門の保有する債権残高が2011年末の63%から2014年末には22%に低下しています。両者の対立の溝は深く、交渉は債務返済期限が迫る7〜8月頃まで長引く可能性も考えられます。ドイツなどは、離脱して痛い目にあうのはギリシャ自身であろうという強硬な立場を示しており、ユーロ離脱やデフォルトのシナリオも一定の蓋然性があるといえます。

中国経済は、景気の減速傾向に大きな懸念はありませんが、不動産開発投資の抑制基調が当面続き、景気の下押し要因となっています。住宅販売の落ち込みには歯止めがかかりつつあるものの、住宅価格の下落は持続しています。住宅価格のコントロールは、中国といえども容易ではない難しい業のようです。人民銀行は今後さらに金融緩和を強化するとともに、財政面では鉄道などの交通インフラ、公共住宅建設などのテコ入れを強化。さらに民間投資を活発化する意向を持っています。2015年の成長目標を7%に引き下げる見通しですが、全人代において「7%以上」あるいは「7%前後」と発表するのか、表現が注目されるところです。それによって、中国が7%を下回ることを想定しているかどうかが示されることになります。

中国に関しては情報が限られるため、金融面のリスクが不透明といえます。経済全体の流動性を示す社会融資総量は、7月に6年振りの低水準まで低下しました。その後、2015年初めにかけて持ち直しに転じたものの、予断は許さない状況です。当局は、規制緩和によって銀行免許を広く解禁する構造改革を推進する中で、シャドーバンキングはそれまでのつなぎとして、銀行融資が隅々まで行き渡らない部分を補完する金融システムと位置づけています。

原油価格については、米国の石油掘削設備(リグ)稼働数の減少が下げ止まりの状況にあります。ただし米国の供給減少が顕在化するのは下期以降と思われるため、反発は小さく、比較的安定して推移することが予測されます。

デフレ脱却後の政策課題

1980年代には4%を超えていた日本の潜在成長率は、近年では0.5%まで大きく低下しています。これを政府目標2%まで引き上げる努力が必要です。それが成長戦略の役割ですが、その効果が表れてくるのは最低でも5年、場合によっては10年を要すると思われます。

潜在成長率が低下した要因として、労働力人口の減少に加えて、設備投資の長期停滞が大きく影響しています。とくに資本ストック・ヴィンテージ(設備年齢)が上昇し、設備の老朽化が進展している状況です。この潜在成長率の引き上げが、今後のわが国における大きな課題となっています。

90年代後半以降、日本企業のROA(総資産利益率)が改善してきた要因は、低金利・借金返済、人件費抑制、設備投資の圧縮といった縮小均衡の結果であり、リーマンショック以降、資産効率の低下は持続しています。ROEの引き上げには、財務レバレッジの引き上げが必要となります。アベノミクスとは、日本企業にROEを主軸に据えた経営への転換とキャッシュフローの有効活用を迫るものであって、最近の株価上昇は、それに対する企業のポジティブな動きが見え始め、市場が評価しているのだと思います。

アベノミクスについての見方(私見):成長戦略を加速せよ

アベノミクスの第1の矢(金融政策)は、市場の期待に働きかけて大幅な円安・株高を実現するなど、市場を通じて大きなインパクトを与えた一方で、円安は貿易赤字の拡大、中小企業のコストアップ、実質賃金の低下といった副作用をもたらしました。したがって、第1の矢にこれ以上依存することは、弊害が大きいと考えています。

第2の矢(財政政策)は、景気の下支えや格差是正といった一定の役割を果たしたものの、カンフル剤的な効果しか望めません。反動影響は不可避であり、持続性は乏しいといえます。そのため、デフレ脱却に目途がついた時点で財政健全化に舵を切る必要があります。

第3の矢(成長戦略)は、あまり実行されていないという批判も見受けられますが、私はそうではないと思っています。たとえば、すでに一昨年から40本以上の成長戦略関連法案が国会で成立しています。昨年は、とくに外人投資家目線の政策(コーポレート・カバナンス、GPIFなど)が主体となりましたが、持続的な株価上昇のためには、個人投資家育成策(日本版NISA拡大、401k年金の非課税枠拡大)が求められます。長期投資の優遇策を導入することも必要でしょう。

アベノミクスの効果が出ている分野として、エネルギー・電力、再生医療、農業、産業競争力強化法などが挙げられます。まだ一部ではありますが、着々と広げていくことが大事だと思っています。また、法人税については曖昧な言い方ではなく、5年以内に25%へ引き下げることを内外に公約し、実行していくことが必要でしょう。岩盤規制改革は、全面突破よりも現在の漸進的突破の手法が有効に機能していると思われます。

労働市場改革(女性、外国人、派遣法改正、ホワイトカラー・イグゼンプションなど)や労働市場の流動化は、産業構造を高度化する際、より付加価値の高い産業に人材を移動させるために必要であって、単に流動性を高めればいいというものではありません。ですから、労働市場改革、産業政策、積極的労働市場政策の三位一体で進める方向性をよりクリアに示すことが、一般国民の安心感にもつながっていくと思います。

アベノミクスの課題を検証する

3つほど、アベノミクスの課題を示したいと思います。1つ目は、「新たな賃上げルールの設定と労働市場改革」です。たとえば今年の賃上げ交渉において、原油価格の低下による交易条件の改善効果をどのように織り込んでいくかという視点は、あまり見受けられません。昨年の企業収益や物価上昇率をベースに交渉するのではなく、「実質賃金=生産性上昇率+労働分配率+交易条件」という新たな賃上げルールを労使で合意・実施することが、持続的な賃金上昇のメカニズムを生み出すことになると思います。

2つ目の課題は、「マイナンバーの民間活用」です。国内で新たな需要を生み出す産業を構築し、同時に財政健全化を推進する一石二鳥の政策を講じていくためには、マイナンバー制度を民間取引で活用していくことや個人情報保護法の規制緩和が必要です。

たとえば予防医療などにマイナンバーを活用できれば、健康・医療分野における新しいビジネスチャンスの拡大が期待されます。スウェーデンは、番号制度をすべての行政機関で幅広く利用し、納税から社会保障サービス、一般行政サービス、金融、不動産といった民間取引まで幅広くカバーしています。

3つ目は、「増税・歳出削減をルール化する財政健全化法の制定」です。わが国の財政は、フロー(GDP比マイナス7.7%)、ストック(同229.6%)ともに主要先進国中、最悪の水準となっています。そこで、スウェーデン型複数年度予算制度を参考とした財政健全化法の制定が不可欠であり、補正予算編成にも上限を設定すべきだと考えています。

質疑応答

Q:

インフレ期待あるいは成長期待を高める好循環を生み出すのは、なかなか難しいと思います。ブレークスルーになるようなお考えがあれば、うかがいたいと思います。

A:

物価が下がり続ける状況を是正するのがデフレ脱却であるという理解が一般的だと思いますが、とにかく物価が上がればいいという政策ではなく、企業の設備投資や家計の住宅投資など、思い切った投資を促す必要があります。そのためには、民間のビジネスチャンスとなる分野を次々と増やし、具体的な成功例を積み上げていく以外に解はなく、それはすでに出始めていると思います。

Q:

今後のデフレ脱却の背景にあるメカニズムとして、マネーストックの役割について、もう少し詳しくうかがいたいと思います。

A:

マネーストックが増加するためには、銀行貸出が増える必要があります。つまり日本では、貸出が期待ほど伸びていない状況なのだと思います。マネーストックは緩やかに増加していますが、金融政策で出ている効果はさほど大きくないといえます。

Q:

財政の健全化に向けて、増税と歳出をどのように組み合わせるのが望ましいとお考えでしょうか。

A:

大まかなイメージでいうと、GDP成長率あるいは税収の伸び率以上に伸びる歳出は、社会保障費です。もちろん抑制・効率化努力は必要ですが、高齢化比率の上昇を考えると困難な状況です。もちろん景気情勢次第で取りやめることも可能とした上で、将来、社会保障の支出としてファイナンスすべき部分については、消費税で賄うような法的枠組みが必要だと思います。最終的にどこまで消費税を引き上げるのか、いろいろなプランを示して国民の判断を問うことが大切です。私の計算では、消費税率を18%まで引き上げなければ、社会保障の財源をカバーすることは難しく、あとはどれだけ効率化できるかだと思います。

Q:

物価上昇2%の政府目標を諦めず、金融政策の弊害を除去する方法はあるのでしょうか。

A:

まず、これ以上の弊害を出さないために、追加緩和はすべきでないと思っています。しかしマーケットは常に追加緩和を期待し、その期待もあって株価が上昇しているという意味では、ポジティブな効果といえるかもしれません。ただし、出口戦略のプロセスを考えると、日本はFRBよりも困難な歩みになることは間違いないでしょう。

FRBでさえ国債の売却に至っていないわけですから、日銀は第一段階として、さらなる国債購入はやめるべきです。第二段階として金利を引き上げ、第三段階に国債売却となるわけですが、第三段階が2020年までに行われるとは思えません。

また個人的には、物価上昇率2%でなく1%でもいいように思うわけですが、一度発表してしまった以上、中止あるいは後戻りをすれば、せっかくの効果も帳消しになってしまうことが懸念されます。逆に、追加緩和をすれば副作用が大きいため、現状のまま市場の期待をつなぎとめ、原油価格の下落を最大限に生かし、景気を回復軌道に持っていく方向を目指していくしかありません。日銀としては忍耐を強いられる状況ですが、それが最善の道だと思います。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。