再生エネルギーを軸とする地域成長戦略『八策』~提言『八策』&その実現に向けた地域ビジョン『八策』~

開催日 2013年7月3日
スピーカー 田邉 敏憲 (埼玉大学大学院 経済科学研究科 客員教授)
モデレータ 桃井 謙祐 (経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業政策課 地域新産業調査官)
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東日本大震災を契機に、再生エネルギーの重要性が抜本的に見直されている。折しも、温帯モンスーン地帯としてわが国の恵まれた太陽光・水ゆえの豊富な自然資源・バイオマスを活かせる、高効率ガス化・オイル化技術が登場しており、初期投資額が大きいバイオマスエネルギー事業も10年以内に十分減価償却できる高い「事業採算性」が期待できるようになってきている。日本は豊かな自然資源と高度な技術により、持続可能なバイオマスガス・オイル革命を実現し、むしろ世界をリードするような立場を目指せるのではないか。

議事録

再生エネを軸とする地域成長産業創出に向けた4大政策

田邉 敏憲写真日本銀行での25年間にわたる訓練を経て、あらゆることを「値段(採算)と時間軸」で考える癖がつきました。10年で元をとるのか、20年で元をとるのか。時間軸がなければ、政策には意味がありません。

2012年7月、経済産業省の主導で再生エネルギー促進政策(FIT制度)がスタートしました。これによってさまざまな基準が示され、採算の判断が可能となりました。農林水産省を中心とした7府省では、2020年までに全国で概ね60のバイオマス産業都市(「バイオガス製造施設」と「木質バイオマス発電施設」が柱)を構築する動きが出ています。総務省では「地域力創造政策」、環境省では「地域低炭素投資促進ファンド創設政策」が、それぞれ進められています。

関係府省が連携し、バイオガス製造施設(バイオガス・電気)や木質バイオマス発電施設(熱・電気)等、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と、太陽光・小水力等を組み合わせた地域循環型エネルギーシステムの構築を支援するバイオマス産業都市が構想されています。これによって、バイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまちづくり・むらづくりを推進しようというものです。

提言「八策」

第1の提言は、「再生エネルギー関連4大政策を契機に、真の自然資源大国・日本を目指そう!国土の9割を占める田畑・山林を"ガス田・油田化"する技術を磨こう!」です。

廃棄物系バイオマスの年間発生量(2010年)は、下水汚泥7800万トン、食品廃棄物1900万トン、家畜排泄物8800万トン、家庭生ゴミ1100万トンとなっています。これによるメタン発酵ガス生産量は年間合計458万KL(発酵効率30~50%の原油換算)ですが、ナノ化グラインダー技術を用いると、年間合計916万KL(発酵効率80~90%の原油換算)に増加します。

森林資源に関しては、オイル化・メタンガス化技術によって森林年間増加量だけで年間生産量は0.4億トン(原油換算量)、年間輸入量の5分の1に相当します。この森林資源と廃棄物系バイオマスを合わせた発電出力は年間合計2500万kW、つまり100万kW級の原発25基分に相当すると考えられます。また、これら資源のバイオマスオイル化・ガス化による石油代替量は0.5億トンとなり、国内年間CO₂排出量の10%を削減できることになります。

バイオメタン発酵ガス化施設の画期的な技術・システムとして、"含水有機廃棄物"をナノ化し、土着嫌気性微生物によるガス生産効率を飛躍的に高める米国製の「ナノグラインダーMILL」や、"含水有機廃棄物"のガス発酵に伴う"液肥"を乾燥・顆粒化し肥料製品化できる日本製の「フレームジェット装置(空冷式衝撃波乾燥装置)」が登場しています。人口減少とともに放置される山林等、未利用間伐材を原料とするバイオマスメタンガス化技術を活用すれば、山がメタンガスのガス田となるわけです。

被災地再生中核都市型の岩手県釜石市モデルで、畜糞・下水汚泥などバイオマスメタンガス発電の採算性を試算(畜糞・魚残渣・下水汚泥等:94t/日ベース)すると、初期コスト14.92億円の償却年数は5.42年(IRR18.5%)となります。

木質系メタンガス化事業収支においても、償却年数は5.9年となります。売電ではなく都市ガスでの販売(価格167円/Nm3)としても、高い収益性が見込まれることから、原料としての未利用間伐材を事業として搬出するインセンティブが働くことになります。庭木や高速道路の植樹帯から出る剪定ごみなども原料となります。

第2の提言は、「地域成長策は"移入エネルギー地産化"による「純移出」増大にFOCUSしよう!1世帯当り年間20万円光熱費の"地消地産"は地域成長の確かな原動力!」です。

どの地域でも、最大需要の1つである光熱需要を自給・自賄いすることが、地域の「純移出」(「移出」-「移入」)の増大による域内経済成長力引き上げ、地域外への資金流出抑制などをもたらします。自然エネルギーが、地域を豊かにする「地域エネルギー」となるわけです。

第3の提言は、「どの地域にもある原料で、1・2・3次産業それぞれの高付加価値化を狙おう!製造業のニューフロンティア出現、小売・サービス業もエネルギー産業化へ!」です。

農林畜水産業の5F(Food, Fiber, Feed, Fertilizer, Fuel)市場のうち、最も価値の低かったFuel(再生エネルギー)市場でさえ、FITで採算乗せが実現することによって、戦後の安い石油の大量輸入とともに消え去った日本の農林畜水産業の「総合産業化」、「高付加価値産業化」がほぼ半世紀振りに復活することになります。

耕作放棄地の活用として、成長の高い未利用植物の商品化への挑戦も続いています。世界生産量14億トンのコーリャンは、日本では畜産事業補助作物(飼料)として120万トンしか生産していません。しかし北海道から沖縄まで栽培できるため、約40万haの耕作放棄地の潜在生産力として4000万トン/年が見込まれます。これをメタン発酵すれば、莫大な量の中間的な原料を確保することができます。

米国では、DARPA主導で機械産業(内燃機関・発電機等)の新たな燃料体系としてバイオマス燃料開発を位置付け、知財を確保しようとしています。米国の知財戦略は1次産業にも集中しているのです。

コープさっぽろでは、地域循環型再生エネルギー利用システム実用化モデルとして、バイオガスプラントを運用しています。"低圧ガスボンベ"も開発し、新たな都市ガス供給源としての実用化が見込まれています。このように、もともとは3次産業の事業者が、製造業あるいはHEMS、BEMSといった省エネ産業のサービスを課題とした取り組みを進めています。

第4の提言は、「人口減少・高齢化問題は、"消滅型創造"イノベーションの好機と捉えよう!農耕地の大規模集約化も時間軸の問題で、後継者難で確実に実現?」です。

第5の提言は、「地域・国全体の政策決定力を高める"合意形成"ノウハウを磨こう!南海トラフ・浜岡原発対応も"市民ファシリテーター"で臨む牧之原市に学ぼう!」です。

廃棄物処理に関しては、地域のステークホルダー(市民、企業など)の合意形成が鍵となります。静岡県牧之原市では、4~5年かけて確立した「市民ファシリテーター」制度を介し、浜岡原発問題など、あらゆるテーマに関する意見集約ができる場を構築。市内有力企業の会議室を利用し、企業も巻き込んだ合意形成のシステムとなっています。"忌避施設"たる一般廃棄物処理場とリンクする「バイオガス化&発電」施設に関しても、「地域成長戦略は再生可能エネルギーを軸に考える」という合意形成がポイントになっています。

補助金政策等には、関係行政組織(各府省・都道府県・市町村)間において多くの調整・調和が求められます。たとえば、バイオガス発電所の範囲は「メタン発酵槽以降発電機まで」とされ、FITと他の補助金等との「二重取り」回避の運用がなされています。

第6の提言は、"複式簿記"尺度の共有で、"行政・産業・金融"の3者連携を推進しよう!運営収支(P/L)黒字維持には、初期投資設備の資本勘定(B/S)構成が鍵!」です。

太陽光発電の場合、FIT制度によって、IRR6%となるよう固定買取価格が長期間にわたって保証されており、電力供給が比較的安定していることから、銀行ローンを呼び込みやすい状況にあります。そのため、太陽光プラントは民間出資可能な投資効率水準に達しており、民間部門のみで確立可能なビジネスとなっています。

木材系固形燃料バイオマス発電の場合、グリーン発電会津(国庫支援)では、「再エネ特措法(FIT法)」でも併用可能とされる「林業振興等その他の政策目的の補助金」として、初期設備投資の1/2に相当する部分に補助金が出ています。バイオメタン発酵ガス化発電の場合は、レベニュー信託債の活用が考えられます。

第7の提言は、民間金融機関もデリバティブなど金融機能進化の成果活用で貢献しよう!日本にも登場した"レベニュー信託債"普及の法的整備等を突破口にしよう!」です。

レベニュー信託債は、既に米国の地方自治体において、資金調達の6割を占める手法です。その一例として、NYヤンキーススタジアムの建設資金調達が挙げられます。地域の振興に貢献する市民参加型のプロジェクトファイナンスであるため、「プロジェクト成功」と「金融」の好循環が起こったわけです。

2011年6月、茨城県環境保全事業団「エコフロンティアかさま」が、レベニュー信託スキームによる資金調達を実施しました。産業廃棄物処理場の処理量が計画ほど伸びず、リスケジュールを余儀なくされましたが、レベニュー信託スキームによる100億円に関しては、2.51%(24年)返済となっています。

米国は、連邦制国家であるがゆえに「レベニュー債」が発達したのだと思います。連邦制国家ではStateが産業創出競争の主体であり、事業・産業創出にも中央政府支援(補助金・交付金)はなく、税収増加政策や主体的資金調達が必要となります。

第8の提言は、"霞ヶ関"で始まった"補助金から出資金へ"の発想転換を大きな潮流にしよう!地域・市民ファンド、SPC等に対し"国庫出資"を可能とする制度設計を目標にしよう!」です。

環境省は、平成25年度予算で「地域低炭素投資促進ファンド創設事業」をスタートしています。低炭素化プロジェクトにおいて、民間投資による投資の呼び水とすべく、地域・市民ファンド・SPC(Special Purpose Company)等に「出資」を行うというものです。資本金の50%未満まで出資することで20年間にわたってモニターを行い、利益に応じて配当を得ることができます。従来の単なる補助金ではなく、出資を組み合わせていくことによってガバナンスの向上にもつながります。

低炭素社会創出ファイナンス・イニシアティブでは、「建築物の低炭素リニューアル」、「低炭素まちづくり」、「二国間オフセット・クレジット制度」、「低炭素技術の対策強化・市場化・研究開発」を対象分野に、より大きな効果を目指しています。

"バイオマスガス・オイル革命"で日本経済は蘇る!

発想の転換による"1石8鳥"の政策効果として、1)どの地域内でも森林ガス化・オイル化、生ゴミ等ガス化で確実な成長がつかめる!2)山仕事による年収2000万円基本給化で後継者が続く儲かる農林水産業に!3)オイル化・低圧ガスボンベ等日の丸技術輸出でモンスーンASEAN諸国に貢献を!4)地元建設業、小売サービス業、医療・福祉業もエネルギー産業化で展望が描ける!5)廃棄物・福祉2大事業のエネルギー産業化で地方自治体財政収支も大きく改善!6)地域市民の"成長への合意形成"、"消滅型創造"でイノベーションは可能!7)10年未満の高採算事業実現で、地域金融機関の融資、高利回り金融商品が出現!8)国・地域で"行政・産業・金融・市民投資家"4者連携による政策決定・遂行力の向上!――の8つが挙げられます。

そして、日本の多岐にわたる政策課題に貢献するものとして、ここでも8つを掲げたいと思います。「地域成長」、「雇用創出」、「再生エネ普及」、「低炭素社会実現」、「森林再生・花粉症対策」、「TPP対応」、「安全かつ高利回り金融商品提供」、「道州制(産業政策を自己資金調達で推進)対応」といった諸課題解決に向け、地域市民・国民の心にスイッチが入ることが期待されます。

日本の成長戦略の方向性として、環境(3R)と経済成長(雇用)の両立を狙うべきだと思います。環境とは、資源(有機物、石油化合物、無機物)を3R(Reduce、Reuse、Recycle)によって「廃棄物レス・有価物化」することです。とくに腐敗の早いバイオマスを有価物化することは決定的に重要です。

日本経済成長のエンジン役として、頼りになるのは「純輸出(輸出-輸入)」の拡大です。輸出が落ち込んでも、輸入品を国産化することが成長に寄与します。国産化できる輸入品として最も大きいのは燃料であり、再生可能エネルギー産業化の推進がポイントとなります。

質疑応答

Q:

バイオマスのオイル化について、実現性をうかがいたいと思います。また環境面など、バイオマスのガス化のよさはわかりますが、発電に比べて競争力はあるのでしょうか。欧州の動向も含め、教えていただきたいと思います。

A:

カロリーの6割がオイルになることは、NEDOやJFEの装置で実現しています。ただし、それをバイオジェット燃料等として精製するためには、高価な触媒が必要です。オイルを実用化するには、まだ時間がかかる状況です。また、水蒸気発電は大規模な割に効率が悪いため、ガスの競争力はあると考えています。

ドイツでは、バイオマスに関しても先進的な取り組みを行っています。硫化水素を除去する小型装置などがこれまで日本にはなく、もともとディーゼルエンジンの自動車が多いドイツでは、BDFといったバイオマス燃料に慣れているといえます。しかし温帯モンスーン地域といった環境に恵まれていることもあり発酵効率は日本の方が優れており、関連装置の規模を小さくするところに新しいフィールドがあると思っています。

サーマルとしての利用が大きい北欧もバイオマスエネルギー利用が進んでいますが、メタン発酵・発電のプロセスを組み合わせることで、日本では電気としてのバイオマス利用がより普及するものと予想されます。今後、温帯モンスーン気候という日本の強みも生かしていけると思います。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。