東アジア圏域における資源循環について

開催日 2005年6月7日
スピーカー 細田 衛士 (慶応義塾大学経済学部教授)
モデレータ 田辺 靖雄 (RIETI副所長)
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議事録

はじめに

資源は、大事に繰り返し使うことが望ましいのですが、使い方を間違えると色々な問題を引き起こすことになります。自動車リサイクル法が本年1月1日から施行されました。それを受け、使用済み自動車は順調に集まっているようですが、その循環に異変が起こりつつあるようです。従来、使用済み自動車は、整備業者や販売業者から解体業者等に流れ、処理されていました。しかし、最近は少なからず、オークションの市場へと流れるようになってきました。オークションで落札された車の多くは輸出されるため、資源が海外へ流れて国内には残らないということになります。また資源には、使われ方や解体の仕方によっては、環境問題を引き起こしかねないという側面があります。本日は、資源を採取して設計・生産し、物流を経て消費される「動脈経済」と、使用済みの製品や残余物を回収して資源に戻すか適正処理をする「静脈経済」の接点で起きているさまざまな問題について、典型的なE-Waste(電気・電子廃棄物)を中心としてお話ししたいと思います。

資源・再生資源は循環しています。たとえば国内では、ペットボトルを繰り返しペットボトルに再生し、半永久的にリサイクルする取り組みを行っています。しかし、再生ペット資源は中国へ流出し、日本の優秀なリサイクル技術が活用されていないという状況もあります。また、ペットボトルは繊維にも再生されていますが、化学繊維をリサイクルするのは大変難しく、その場合、資源の再利用はワンサイクルで終わってしまいます。このように、資源がうまく循環するのは、なかなか難しいのです。ミクロ経済学的にみれば、市場の機能を必要以上に政府が統制するのは望ましくないのですが、こと資源循環に絡む問題については、市場に勝手に任せておくと環境問題につながってしまうことになります。資源・再生資源の循環は、複雑な層構造をなしており、それぞれの層がインターフェースを持っています。とりわけ、東アジアの資源循環をどのような形で利用するかが大きな問題となっています。

動脈経済の背景

まず、動脈経済の背景について、ご説明します。

(1)日系企業の海外進出
1985年のプラザ合意以降の円高を受け、日本企業は海外拠点をアジアに求めるようになりました。特に中国では、トウ小平による1992年の「南巡講話」以来、日系企業の現地法人が増加しました。こうした日本企業による生産拠点の海外移転の結果、海外生産比は、1993年度7.4%から2002年度17.1%に急増しています。

(2)アジア域内貿易の増加
1990年代を通じて、一般機械や電気機械のアジア圏域内貿易量は拡大しました。アジア域内における一般機械の総輸出額は、1990年359億ドルから2000年1204億ドルに増加。電気機械の総輸出額は、1990年436億ドルから2000年1929億ドルに増加しています。

(3)大国としての中国
中国は、国際相場に影響を与える大国として、経済成長・経済発展を続けています。消費率は著しく伸び、世界の「有効需要」の牽引役だといえます。同時に供給面においても、高い生産力で工業生産量は増加しており、需要と供給の両輪でバランスよく成長している姿は、かつての日本の高度成長を思わせます。素材需要も増加していることから素材相場への影響も大きく、こうした状況は北京オリンピックや上海万博までは継続するものと予想されています。

(4)中国の経済力の推移
中国のGDP成長率は、1997年8.8%、1998年7.8%、1999年7.1%、2000年8.0%、2001年7.3%と高い経済成長率を維持しています。一方でCPI上昇率は、同じ5カ年の推移として2.8%、-0.8%、-1.4%、0.4%、0.7%と、物価上昇率は非常に低く抑えられ、安定した経済成長を遂げていることがわかります。

静脈経済の背景:E-Wasteの現状

続いて、本日の本題である資源循環にかかわる静脈経済の背景についてご説明したいと思います。

(1)日本の家電リサイクルの状況
2001年4月以前には、使用済み電気機器は、市町村ごとに粗大ごみや産業廃棄物として処理されていました。フロンや鉛、難燃性プラスティックといった有害廃棄物も適切に処理されず、リサイクルもほとんど行われていませんでした。

(2)家電リサイクル法の実施
2001年4月から、家電法リサイクル法が実施されました。テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の4品目が家電メーカーの責任でリサイクルされることになりました。現在では、質の高いリサイクルが行われ、リサイクル率も定められた率を上回っています。ただし、処理費用は排出時にユーザーから徴収されるという特徴があり、テレビなどの不法投棄は若干増加しましたが、順調に実施されているといえます。一般廃棄物は年間およそ500万トンが排出されていますが、平成9年度の家電4品目の総排出重量は、65.4万トンとなっています(出典:平成9年度通商産業省委託事業「廃棄物処理再資源化推進事業」)。

(3)PCリサイクルの現状
事業系PCのリサイクルに関しては、メーカー自身による回収、リース・レンタル会社による回収、販売会社や販売店による回収、専門業者による回収という4つのルートが用意されていました。現在は、「資源有効利用促進法」のもと、メーカーが自主的に目標リサイクル率を設定し、回収するようになりました。2003年度の目標リサイクル率は、デスクトップ型PC本体が50%、ノートブック型PCは20%、ディスプレイ装置は55%となっています。日本国内では、効率的なリサイクルがようやく始まったといえます。

(4)携帯電話のリサイクル
携帯電話は、いまだに効率的なリサイクルの循環が確立していません。販売店から通信事業者に回収される使用済み携帯電話は、排出量の約40%とみられています。それ以外の使用済み携帯電話は、ユーザーのもとに放置されているか、回収されたとしても海外へ流出するものとみられています。一方で、国内で非鉄製錬業者の手に渡れば、ほぼ100%のリサイクルが可能で、有害物質は適正に処理され、金・銀等の素材別に回収されます。

E-Wasteの潜在資源性と潜在汚染性

いよいよ本題に入ります。E-Wasteをはじめとする再生資源は、有用な貴金属などを含んでいる一方、適正に管理されない場合は、環境を汚染する有害物質を含んでいます。すなわち再生資源は、潜在的な資源能力と潜在的な汚染能力という2つの相反する性質を持っています。これは静脈経済特有の性質であり、たとえばペットボトルの本体そのものは資源のかたまりですが、大量に回収された時、ペットボトル本体のみが綺麗に集まることは非常に稀です。多くの場合は、他のものと混ざったり、ジュース等の腐敗物やタバコで汚れていたりします。また鉛は、最近は国際相場が高いために資源性の面ばかりが注目されていますが、相場が下がると廃棄量が増え、鉛バッテリー等による汚染性の問題が起こってきます。このように、静脈経済は動脈経済とは異なり、市場に任せておくと汚染性が無視され、資源性に着目したビジネスだけが行われてしまいます。

潜在資源性について、まず家電4品目の主な素材構成をみると、鉄の割合は冷蔵庫49%、エアコン54.0%、洗濯機52%、テレビ12%です。アルミの割合が多いのはエアコン9%、洗濯機4%等です。銅などはエアコン18%、冷蔵庫4%等となっており、十分にリサイクル資源として通用する水準となっています。また、プラスティックは冷蔵庫43%、洗濯機33%等で、途上国では十分に資源としての需要があります。なお、テレビの53%がガラスとなっていますが、テレビのブラウン管のガラスには鉛が含まれています。そうした鉛などは、資源リサイクルの過程の中で他の素材の中に紛れ込んでしまう恐れもあり、鉛や銅などの非鉄金属と鉄の適正な処理が問題となっています。

PCの潜在資源性については、デスクトップ型、ノート型、CRT型表示装置、LCD型表示装置、プリンタに、それぞれ鉄、アルミ・銅などのその他金属、プラスティック、ガラス、プリント版、ユニット版といった資源が入っています。また、携帯電話1台あたりの非鉄金属の含有量は、金0.028g、銀0.189g、銅13.71g、パラジウム0.014gとなっています。使用済み携帯電話を大量に回収できれば、貴重な金属資源を有効活用することが可能となるわけです。

一方で、潜在汚染性の側面について考えてみましょう。家電4品目では、冷蔵庫やエアコンにはフロン類、テレビには特定臭素系難燃剤が入っています。これらの扱いを間違えると、環境に多大な悪影響を及ぼすこととなります。携帯電話には、鉛や砒素、カドミウム、六価クロム、臭素系難燃剤が入っています。

このように、潜在資源性と潜在汚染性を兼ね合わせた性質を持つE-Wasteの取り扱いには注意を要します。鉛のように国際相場に大きく影響されるものを市場取引だけに委ねていると、価格が低い時には廃棄量が増え、環境問題につながってしまいます。また、小型2次電池などのように業界自主回収ルートがある場合でも、回収されない電池の方がまだまだ多いとみられます。現在でも生産されているニッカド電池による飛散カドミウムの問題なども、注意すべきだと思います。

E-Wasteの海外流出

それでは、回収されないE-Wasteは、どうなっているのでしょうか。使用済み家電製品の回収率は50~60%です。残りは、中古品としてリユース市場に出回るものもありますが、大部分は中古品として、あるいは鉄スクラップといった雑品の形で東アジアを中心とする海外へ輸出されます。海外で適正なリサイクルが行われていればよいのですが、なかなかそうは思えないのが現状です。発展途上国に多くのE-Wasteが流れた場合、汚染を引き起こす恐れが非常に大きいといえます。

私は2000年頃を前後して数回にわたって中国視察に訪れましたが、実際に、日本やアメリカから大量のE-Wasteが中国に輸出されています。中には、破砕された基板類なども大量に出回っています。2002年頃には、中古品がコンテナ積みで入っていましたが、現在は雑品として平積みの船で搬入されることが多くなっています。

そこで、日本からどのような使用済み製品が輸出されていたのかを、中国の港湾設備で見られた粉砕物から推測すると、テレビやエアコン、PC、配電盤、トランス、メーター類、バッテリー、レール、OA機器、コンプレッサー、解体車両などでした。そこから、鉄、銅やアルミなどの非鉄金属、金などの貴金属、プラスティックなどがリサイクルされるわけです。しかし、日本の優れた産業廃棄物処理業者では、処理場の入口ゲートに放射線探知機が設置され、さらに、トランスの場合は型番を調べ、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有しているものは受入れを拒否します。そこで拒否されたものがどうなるかを考えた時、もし中国へ流れているならば、非常に怖いことです。中国では、産業廃棄物による環境汚染を懸念して地方政府に注意を促しているようですが、最近になっても、日本から輸入したPCやOA機器、ゲーム機の残渣が田畑の近くや野山に雨ざらしで放置され、野焼きなども行われています。有害物質が雨で流れ、あるいは野焼きによって有害ガスが発生し、汚染が進んでいることは容易に想像できます。

本来、破砕された基盤類をはじめとする多くの雑品は、バーゼル条約対象物だと考えられます。しかし、それらがバーゼル条約に従って日本から輸出されたとは思えません。つまり、潜在汚染性を持った雑品が管理されずに途上国へ輸出されているということは明らかです。今後、日本やアメリカは、汚染物質の輸出国として国際的非難を浴びることが予想されます。既に、アメリカのBAN(バーゼル・アクション・ネットワーク)という市民団体が非常に優れた報告書を発表しており、日本やアメリカ、ヨーロッパ諸国をE-Wasteの排出国として非難しています。

東アジアの資源循環

しかしながら、E-Wasteをはじめとする再生資源を、日本のみで適正にリサイクルするのは難しいことです。たとえば需給バランスの問題で、CRT(ブラウン管)などは日本での生産が非常に限られており、国内でリサイクルするのは、もはや不可能な状況です。やはり、資源の有効利用には広域資源循環が必要です。また、鉄や非鉄などは、経済成長を続け素材需要の高い東アジアに流れざるを得ません。一方で、潜在汚染性の高い使用済み物質を海外でリサイクルするのは危険ですから、日本に輸入してリサイクルすることも考えるべきです。資源性と汚染性の両面を、どのように考え合わせてレジームを作っていくかというのが大きな問題だといえます。

日本から輸出される廃プラスティック量は、2002年に50万トンを超え、そのほとんどを中国と香港で二分している状況です。現在、廃プラスティックは中国本土で輸入禁止となっていますが、香港経由では引き続き輸入量が増大しています。日本での廃プラスティック発生量に対する輸出量の割合は、2002年に4%を超えていますから、現在では5%を超えるものと予想されます。

日本からの古紙の輸出量は、2002年には発生量の10%弱が海外へ輸出され、ほぼ半分が中国、次いでタイ、台湾が主な輸出先となっています。同じく鉄屑の輸出量は、2002年に発生量の20%に上っており、主に中国と韓国、次いで台湾に輸出されています。銅屑の輸出量は、2002年に発生量の30%弱となっており、そのほとんどが中国へ輸出されています。アルミ屑は、2002年に発生量の1.8%強が、やはりほとんどが中国へ輸出されています。先ほども触れましたが、動脈経済において著しい発展を遂げた中国は、生産と需要の両方でバランスのとれた成長経路で伸びています。すると当然、派生需要としての素材需要が増え、スクラップ品の需要も増えます。必然的に、中国は素材の吸引力となるわけです。ですから、潜在汚染性には注意が必要ですが、再生資源が中国へ流入することを、止めることはできません。

広域リサイクルの可能性

中国は、プレス加工された自動車や廃プラスティックの輸入を禁止しました。静脈貿易に伴う汚染の顕在化に対する恐れが、このような再生資源に対する輸入規制をもたらしたわけです。現在のところ、静脈貿易はバーゼル条約に基づくしかありません。しかし、経済の重要なポイントとして、とにかく規制すればいいという単純なものではなく、あまり厳しく規制すると、かえってブラックマーケットに流れて制御できなくなってしまいます。

もし、将来的にバーゼル条約修正条項が批准された場合、相手先国の同意があろうがなかろうが、日本はE-Wasteの広域リサイクルができなくなります。そうなれば、ブラックマーケットをさらに助長することにつながり、経済的にも理不尽ですから、私は反対です。しかし、反対しているだけでは意味がなく、資源循環はどうしても必要ですし、汚染は最小限に留めなければなりません。そのためには、やはり透明で管理されたE-Wasteの流れを作り、役割分担をしながら東アジア圏域で資源循環を行うことが望ましいでしょう。日本では今まで、日本国内のことを考えて質の高いリサイクルシステムを作ってきました。日本国内で循環させれば、汚染性は最小限に食い止めた上で資源性を引き出すことができるのですが、再生資源は海外へ逃げてしまうわけです。その逃げる部分についての日本の位置づけを明確にしておかなければ、今後が大変になると思われます。本年5月には、日本のリードによる3R(Reduce:減量、Reuse:再利用、Recycle:再資源化)のための国際会議が開催されました。このような流れを一層強化し、東アジアにおいて早期に、使用済み製品の適正資源循環の流通システムを作るべきだと思っています。これは民間では不可能ですので、政府主導による東アジア圏域の資源循環レジームのフレームワークを構築すべきでしょう。その際のポイントは、信頼性、透明性です。そのためには、業者とプラントの受け渡しといった静脈物流のインターフェースを透明にし、資源が外へ流れてしまうようなことがあってはいけません。良質な競争を保証するような制度を作るために、レジームに参加するアクターを制限することも必要かもしれません。たとえば日本、中国、韓国、台湾を含めて、ある特定の品目についてパイロットプランを策定・実行するという方法も考えられると思います。とにかく、早急に健全な資源循環レジームを作らなければ、汚染性が拡散し、かつ顕在化する恐れがあります。日本が海外の環境を汚染したということで、中国との摩擦が生じることも危惧されます。

おわりに

最後に繰り返しとなりますが、要点をまとめたいと思います。東アジアの経済成長は目覚ましく、有効需要は著しく伸び、資源需要(再生資源需要)も増大しています。日本から大量の再生資源が東アジア圏域に輸出されていることは、広域資源循環・利用の観点からは望ましいといえます。しかし、海外に流出した再生資源には、潜在汚染性という性質があり、汚染の顕在化の恐れがあります。それを防ぐためには、透明で管理された再生資源の流れを形成しなければなりません。そして日本は、東アジアにおける適正広域資源循環レジームのリーダーとなるべきだと思います。

質疑応答

Q:

東アジアでの地域的な回収を目指す前に、やはりリサイクルを国内で完結させるという方向で進むべきではないでしょうか。国内でも不法投棄があるぐらいですから、それが外国へ流れてしまった場合、本当に適正広域資源循環レジームというものが可能なのかが懸念されます。

A:

大変いい質問だと思います。どういうステージでリサイクルを考えるか。たとえば、使用済み製品のレベルなのか、そこから取り出した素材のレベルなのか、ということになると思います。古紙の場合、海外を含めた資源循環を考えない限り、需給バランスをとるのは不可能だと思います。一方で、使用済み製品レベルでは、国内資源循環を第一に考えるべきだと思います。たとえば、ある非鉄製錬所からは金の延べ棒が製錬されますが、そのうち3分の1は使用済み製品から取り出した金だということです。特に、携帯電話には金、燃料電池にはプラチナ、自動車の三元触媒にはプラチナ、パラジウム、ロジウムが使われています。それらが海外へ流出するということは、長期的な貴重金属の資源戦略を考えたときに素材としても問題ですし、汚染性を考えたときに製品としても問題だと思います。そして、その上でなお国際的に広域循環させた方がいいものに関しては、スムーズで透明な流れを作るべきだと考えています。

Q:

かつて霞が関は、経済成長している時には、いくら環境問題といっても成長が優先してしまい、結局は豊かにならなければ空気もきれいにならなかったということがいわれています。中国も同じように、著しく開発が進む只中に資源対策といっても膨大な需要を背景に、やはり倫理的な理想よりも日々の生活が優先されてしまいます。そして、「先進国だって、世界を汚染してから成長したではないか」と考えている途上国に対して、先生の言われる「適正広域循環レジュームのリーダー」として、日本は何ができるのでしょうか。たとえば、アジア地域における分業体制のシステムを作るための経済協力を行うにしても、日本は、人類のためというコンセンサスのもとで行う度量が果たしてあるのでしょうか。それとも、日本のためという大義名分が通る範囲で行うということなのでしょうか。また、日本のOA機器メーカーの中には、自分のマーケットをカバーできる回収工場をタイに設置するような殊勝な企業もあります。このまま企業に任せておけばいいのか、どこまで政府が関与するべきなのか、また、バーゼル条約の改正について何か提言するべきなのか、もう少し具体的に、日本がリーダーとして行うべきことについて、ご意見を伺いたいと思います。

A:

貢献の一例として、ある非鉄製錬企業は、日本の技術を伝播することを前提に、中国で現地の雇用を吸収しながら、順調に静脈企業として展開しているようです。また、古紙と廃プラスティックを扱うある商社は、中国で資本を投下し、現地企業と提携しながら静脈ビジネスを展開しています。ただしポイントとして、現地の既存の静脈業者との関係には注意を払う必要があるでしょう。このように、「日本の静脈企業は、行政が見守っている優良業者である」というお墨付きを与える政府の間接的な支援のもとで、現地へ技術を伝播し貢献するという方法は、有効だと思います。

モデレータ:

今のお話は要するに、まずは、日本政府がバックアップする優良企業によってbest practiceを広めていくということですね。中国等の発展途上国へ日本の企業が新規参入する際に、日本政府のお墨付きがあるということは、非常に良い応援材料になる。いわば、日本の循環ビジネスにおける「日本ブランド」を、官民連合でアジアに広めていくというアプローチだということでしょうね。

A:

そうです。また数年前には、日本が非鉄製錬等のノウハウを使い、処理しにくい素材を取り出して処理したという経験もありますので、日本が受け手となってもいいと思います。そうした双方向での取り組みもあり得ると思います。

Q:

アジア諸国とWin-Win関係を築くことが非常に重要だと思いますが、中国やベトナムにとっての “Win”とはどのようなものなのか、ご示唆をいただければと思います。

A:

経済環境がまったく異なりますから、たとえば、家電リサイクルに際して日本は排出時支払いですが、それは途上国ではあり得ないことです。一方、日本では廃棄物でも、途上国では有価物として捉えられます。途上国にとってのWin-Win関係というのは、やはりビジネスにつながらなければならないわけです。そういう意味で現実的に考えられるのは、技術的なフォローをしていくことぐらいです。非常に難しい問題です。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。