資生堂中国ビジネスの戦略展開について

開催日 2003年12月17日
スピーカー 原 良一 (資生堂国際マーケティング部本部長)
モデレータ 戸矢 理衣奈 (RIETIリサーチアソシエイト)

議事録

資生堂の紹介

資生堂は1872年に調剤薬局として創業し、130年を超える歴史があります。「資生堂」という名称は中国の古典の一節からとったもので「あらゆる資源から生まれ出る価値」という意味です。

●商品開発の基本思想
・「美意識」すべてのことはリッチでなければならない。
・「高品質」商品をしてすべてを語らしめよ。
・「グローバル」世界中に受け入れられてこそ本物のブランドである。
これは130年間ずっと言い続けてきた原点です。「商品をしてすべてを語らしめよ」が原点であり、顧客満足が第1のメーカーです。現在、年間1000品以上の製品を開発しています。

●現在の資生堂の強み
【感性的資産~アート~】
「日本」の文化性、精神性に「東洋」「フランス」と掛け合わせて発展してきた独自のハイブリッド文化
【知的蓄積~サイエンス~】
130年の優れた研究・技術・美容開発力とそれに裏付けられた確かな品質

●ブランドマーケティングの歩み
1872年から戦前は、ハイクラス層がターゲットでしたが、その後、時代性を強調したマーケティングで広く一般の人をターゲットにしてきました。海外においては、1990年代より現地生産を開始し、国内と一線を画したプレステージマーケティングを展開していました。2000年からはグローバルSHISEIDOブランドを核とした国内外融合プレステージマーケティング展開を開始しました。

●グローバルSHISEIDOブランドの海外展開
現在、ヨーロッパ圏37カ国・アジア圏14カ国・アメリカ圏10カ国・中東圏8カ国・オセアニア圏4カ国の計73カ国に展開しています。73カ国というのは結構多いと思っていましたが、競合欧米大手メーカーは130カ国以上に展開していますので、資生堂はグローバル化という点ではまだ道半ばです。

●資生堂のポジション
現在の世界シェアは、ロレアルグループ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバに次いで、第4位です。アジアにおいては、中国・香港・シンガポール・タイ・台湾で第1位、ヨーロッパ(ノンフレグランス部門)においては、イタリア・ドイツで第2位のシェアを占めています。

包括的連携研究の概念

1978年-中国、改革・開放路線を決定
1979年-中国、中外合資経営企業法を制定・・・合弁企業の承認
1981年-北京市の「友誼商店」・「北京飯店」などの大型商店・ホテルでの輸入販売開始
1983年-北京市の要望により、北京市と第一次生産技術提携契約を締結・・・シャンプー、リンスの生産販売開始
1985年-北京市と第二次生産技術提携契約を締結・・・メーキャップ、スキンケア製品の生産販売開始
1986年-中国、外国資本100%の「独資企業」を承認
1988年-中国、合作企業を承認
1989年-天安門事件勃発
1991年-北京市政府企業(北京麗源公司)と化粧品の開発・生産・販売を行う合弁会社「資生堂麗源化粧品有限公司(SLC)」を設立・・・合弁生産販売事業スタート
・それまでの技術協力を通して、北京政府から信頼を得ていました。
1992年-トウ小平「南巡講話」・・・改革開放経済の加速、「社会主義市場経済」の宣言
・資生堂にとっては、ある意味では追い風となりました。
1994年-「合弁生産品・AUPRES(オプレ=欧珀莱)」の販売開始
・進出時から中国を輸出拠点としてではなく、あくまでも純粋な消費地として考えていました。そのため、昨今の為替変動の影響はほとんど受けていません。
1998年-「ISO9002」認証取得、第二期工場竣工、企業文化展「資生堂&SLC展」開催、ミドル商品の生産・販売を行う合弁会社「上海卓多姿中信化粧品有限公司(SZC)」を設立
1999年-「合弁生産品・AUPRES DX」の販売開始
2000年-「ISO14001」認証取得
2001年-「オプレ化粧品」アテネオリンピック中国選手団の公式化粧品に指定

産学連携活動の資金源

法人化後の特許関連費用など資金確保は最大の悩みです。現在国立大学発の知財は、企業や国もしくは教授個人の物になっていますが、国立大学が法人化しますと、大学で発明され権利化される知財は原則として大学の所有になります。権利化、特許化する費用は急増し膨大なものになる事が確実ですが、これを全て大学が手当てするのは相当困難です。現在の財源は1.学内捻出予算、2.国からの補助金、3.知財本部事業予算等ですが、上記の理由から今後は4.技術移転ロイヤリティ、5.共同研究・受託研究のオーバーヘッド(1~2割の固定費用)を確保したいと考えています。さらに、6.各種コンサル活動やブランドビジネス、そして産学連携有料会員組織というような、大学リソースを活用したもので財源を増やしていくよう検討しています。

中国におけるマーケティング展開について(1990年~現在)

●3高マーケティング
最初の海外進出から45年間、一貫した考えです。かなりシンプルに行動・思考形態を推進してきています。
・高形象 HIGH IMAGE・・・カウンター、商品全体、ブランドのイメージ
・高品質 HIGH QUALITY・・・「商品をしてすべてを語らしめよ」
・高服務 HIGH SERVICE・・・お客様に対する丁寧な応対、挨拶、笑顔
HIGH QUALITYは、現地生産といっても日本本社が中身・パッケージのコントロールはしますので原点として含めています。問題は、HIGH IMAGEとHIGH SERVICEです。この2点を中国では徹底しました。といいますのも、私は約15、6年前、商品開発に携わっていましたので数回中国を訪れました。当時は国営の店ばかりなのですが、そこでの販売員の応対には驚きました。商品は袋に入れて放り投げ、おつりも投げる、カウンターでラーメンを食べたりしている光景もありました。また、販売員に笑顔はありませんでした。化粧品産業はイメージやファッションと連動していますので、そこだけは油断できない、許されない、ということで、店頭でお客様と向き合う美容部員の教育にはかなり力を入れてきました。

●プレステージマーケティング
・発売当初-1%マーケティング(600万人の中国女性)
・1990年代後半-3%マーケティング(1800万人の中国女性)
・現在-5%マーケティング(3000万人の中国女性)
日本の女性化粧品稼動人口は3000~4000万人ですので、現在ほぼ同じ人数を中国でターゲットとしています。

●AUPRESについて
「AUPRES(オプレ)」はフランス語で「あなたのそばに」という意味であり、中国語では「欧珀莱」と表しました。AUPRES製品のパッケージには正面に「AUPRES SHISEIDO」、裏面に中文表示で「欧珀莱 Specially formulated by Shiseido Laboratories, JAPAN」と表示しました。このように両面に日本の技術の象徴である「SHISEIDO」のブランド名を表記することで、現地生産品といっても、日本の資生堂の研究所で生産された製品であることを中国の消費者に保証しています。中国で展開している約350店舗のうち9割の店でインストアシェアNO.1を獲得していますが、この保証がAUPRESの成功要因であると思います。その後、美白、サンケアシリーズの販売を開始しましたが、美白はアジア女性の憧れでありますので、売上を伸ばしています。また男性用化粧品ですが、中国においても男性のおしゃれ意識があがってきていますので、これから売り上げも伸びていくでしょう。また、広告のデザインやコピーワーキングには中国女性の感性を組み込んだ形でマーケット展開を戦略的に行います。

●100元マーケティングの意味
オプレの価格は100元(=1500円)ですので、現在の日本女性の価値感覚では「安いけれど大丈夫なのか」という不安がある価格帯です。90年代初頭、中国の都市部1人当り所得500元であり、100元は給料の1/5に相当します。市場では価格が5元、10元、30元の製品が当たり前の時代でしたので、相当勇気のいるマーケティングでしたが、敢えて高価格帯で、ターゲットを絞った1%マーケティングをしてきました。日本の感覚では1本4万円相当(大卒初任給20万円として)の製品ですが、かなりのスピードで売り上げを伸ばしました。現在の都市部1人当り所得は1000元ですので、100元は給料の1/10、日本の感覚では、それでも1本2万円の化粧品です。また、1品3000元、4000元(約5万円)という商品も恐る恐る上海で売り出してみたところ、1~2個/日で売れています。化粧品の業界を見ただけでも、中国国内の所得格差には相当な幅があるということを実感します。

●北京合弁会社(SLC)社是:「合弁会社の社員1人ひとりが『お客様の喜び』に目を向け、『世界』に目を向け、『新たな価値づくり』活動を通して、自己実現を目指していきます」。
当時は「顧客満足」の概念が抜けていました。当時、美容部員1人の採用枠に対し、300~400人の応募がありました。書類選考や筆記試験等を経ての最終面接時に、私は必ず「みなさんの制服、コストや給料は一体誰が支払いますか」と質問しました。9割の人は「会社」、残りの1割は「自分」と答えました。採用後も朝礼などでも、お客様の経済行為が最終的には給料や備品購入に当てられるという当たり前の循環について、かなりくり返し話をしました。また1カ月の新入社員集中研修ではサービスの概念・笑顔・挨拶・礼儀もくり返しくり返し理解してもらうよう努力しています。

●市場開拓1店、1店、「牛のよだれ型」
・資生堂のphilosophy、理念・・・顧客第一主義
・販売条件・・・リベートなし、横流しが明らかな場合は即刻取引停止
・売掛金回収・・・3回目の警告で即刻商品回収
上記のことを1店1店にくり返し言い続け、徹底してきました。回収は、ビジネスリスクとよく言われますが、資生堂は現在99%回収できています。これから中国で事業を開始される方は、ブランド力がないと難しいかもしれませんが、回収については相当シビアにする必要があります。インストアシェアでトップを確保していけば、その店になくてはならないブランドになり、資生堂の出店が最終的には取引先の利益となることがよく理解されるようになります。

◆プレステージ領域:インストアシェアNo.1率
1996年-65%
1998年-80%
2000年-85%
2001年-90%
WTO加盟以降、欧米メーカーがかなり進出してきていますので、それに対抗して、この値をいかに落とさずにいくかが勝負です。

●中国女性に対する肌測定
14、5年前の中国では、口紅などの化粧品は「資本主義の走狗」と言われ、化粧習慣が少なかった。商品開発のため、現地工場で働いていた女性約200名を対象に肌測定を実施しました。その結果、冬だったこともありますが、肌荒れが目立っていました。しかし、肌のきめの細かさはすばらしいということもわかりました。私は、この結果に「市場の無限の可能性」を感じました。

今後の展望と将来構想

●事業の基本理念
「我々資生堂グループは、単に売上・利益だけを追求するのではなく、恒久的に「美と健康」を目指す、中国に根付いた生活創造カンパニーとして、化粧美と健康に関わる文化を中国大陸に広めることを基本理念とします」

●ミドル&マス・マーケティング
これまでは百貨店350店を中心にマーケティングを行ってきましたが、ミドル&マスも併せて展開していくことになりますと、南方を中心に急増している個人店(雑貨店)やスーパーマーケット、コンビニエンスストアに対してどのように展開していくか、が重要になります。商売をやるだけではなく、化粧と健康の文化を広め、「100年の大計」ということで完全に現地化していきたいと考えています。個人店に対してのマーケティングは、デパートビジネスよりも前からわが社が最も得意とするところですので、積極的に展開していく予定です。ミドル&マス市場を対象としたブランド「Za(ジーエー)」・「PMC(ピュアマイルドチャイナ)」・「FITIT(フィティット)」も展開しています。その一環として9月に上海に1店目、つい先日には北京にも1店目のチェインストアをオープンしました。今後、ボランタリーやフランチャイズという形でいろいろなお店を全国から募っていくという戦略展開を考えています。

●店舗数
・オプレカウンタ-・・・350店
・SHISEIDOグローバルカウンター・・・60店
・ZAカウンター・・・300店
・PMCカウンター・・・2500店
中国全土には1000~1500店の百貨店があるといわれておりますが、現在オプレはかなり絞り込んで、その内の350店に展開しています。その他の百貨店はわが社が出店する条件がそろっていない店です。店頭には製品保証として「Authorized by SHISEIDO Co., Ltd.」と表記した認証看板を設置しています。客にとって、個人店には親しみやすく、入りやすい、という利点がありますが、また一方で商品は本物であるか、期限切れではないか、などの不安もあります。また、百貨店は華やかできれいであるが、入りづらい、買わないと居づらい、という点もあります。百貨店、個人商店とは異なる戦略が必要です。

●チャネル展開
我が社の取引先のチャネルを区分しますと、プレステージクラスには超優良百貨店(外資系)・優良百貨店(国営ではあるが「顧客満足」概念がしっかりしている)、ミドルクラスには一般百貨店(国営)・化粧品(雑貨)店・薬局、マスには大型量販店・地場系チェインスーパー・CVSとなります。世界でも唯一、中国では一般百貨店以外は今後の発展が期待されます。一般百貨店は意識改革や構造改革が進まないと淘汰されると考えられます。また、化粧品(雑貨)店は化粧品専門店や、あるブランドと融合したスペシャリティストアへと発展していくと考えられますが、2008年には5000店に増やしたいと考えております。

●中国における事業活動の特異要因
<貿易関連>
・一般企業には輸入権は認められない
・高関税
・煩雑な中国からの外貨送金手続き
<薬事申請関連>
・高い申請費用(1品当り15~30万円)
・長い申請期間(9~15カ月)
・多数必要な申請見本(1品に付き最大120本要請)―たとえばメーキャップの場合、年間約50~60色の新製品がありますので、数千万円の費用がかかります。
<販売権>
・外国投資会社は自社生産製品しか販売できない
・輸入品販売会社は中国国籍を持った人間でのみ設立可能
<模造品関連>
・摘発しても氾濫状態が続く(もぐらたたき状態)―まだ取引のない百貨店に下見に行ったところ、すでに資生堂のカウンター(偽物)があり、横流し品や模造品を販売していたケースがありました。偽物を本物として売ろうとしている業者もあり、精巧に作られていますのでなかなか本物と見分けがつかないという状況です。
<人間関係>
・地縁、血縁、職縁
<法律>
・不透明且つ地域によって運用状況の異なる法律
・さらに一夜にして突然改正、施行される国法、省法、市法
・人治国家→法治国家
<歴史>
・過去の歴史認識(教育)と国民感情の問題

●ビューティーセンターの開設(上海・北京)
多額の投資をして直営店を開く目的は、ブランドイメージの向上です。女性には、どこにでも売っている商品は買いたくなくなる、という行動傾向があります。ある特別な場所でのみ手に入るというイメージ戦略に投資していく必要があります。化粧品は日常生活品ではありますが、シャンプー・リンスとは異なるマーケティングをしていかなければなりません。拡大路線をとってあらゆる店で販売を始めたところ超優良百貨店から取引をやめられたプレステージブランドがありましたが、一度取引がなくなるとプレステージに戻ることは不可能です。

●研究所「資生堂(中国)研究開発中心公司」設立
・ハード研究:中国ならではの未開発ingredient探索、効果・使用感・安全性
・ソフト研究:美容法、ファッション、民族意識研究
同じ「赤」といってもたとえばラテン民族とゲルマン民族では好きな「赤」は違います。中国でもおそらく南北で違います。ただ物だけ作るのではなく、信条や心理など民族意識研究がなくては成功しないと思います。

●中国化粧品市場規模
中国の化粧品メーカーは現在3000~4000位あるといわれ、市場規模は現在5600億円です。2012年には1兆2000億円の市場規模となる見込みです。資生堂グループとしては10年後シェア10%、1200億円を目指します。

最後に、市場には中国脅威論、中国崩壊論がまだまだあり、中国桃源郷論というのが最近増えてきたようでありますが、いずれにせよチャレンジ精神を持って飛び込む必要があります。少なくとも我が社は23年前から進出してきたわけですが、お客様に向けた活動の原点について相当しつこく、牛のよだれのようにやってきた、その成果が今出ているのだと思います。しかし、その成果は現時点のものであって、今後の5年間、10年間良いという保証はまったくありません。今、その保証をより確かなものにするためにさまざまな戦略を練っているところです。ある意味で「生真面目にあたりまえのことをしつこくやる」ことが一番の戦略であると思います。

質疑応答

Q:

広告には中国女性の感性を含めるということですが、製作はどのような人が担当していますか。

A:

英語の場合は本社の宣伝部を中心に担当します。中国語の場合は、現地の日本語の堪能な優秀なマーケッターとマーケティング本部が合同で行います。まず、日本語でどのようなメッセージを伝えたいかを両者間でやり取りします。それに現地のマーケッターが中国語のさまざまな言い回しやフレーズを当てはめて数パターンを作成して、民族や宗教、ジェンダーなどに抵触していないか確認します。その後、現地の広告会社とコラボレーションして製作にあたります。あまり饒舌にならず、かつシンプルすぎない、「わかりやすさ」がキーポイントです。いろいろな階層・職業の人々が総じて一見してわかる、過度な説明もいらず、といって短すぎることもない、コピーであることが重要です。また、グローバルな息吹が感じられるような絵、西洋の息吹が感じられるような言葉のつながりを使うようにしています。ポスターはシンプルに、パンフレット・新聞広告はより詳しく、と広告媒体によってバージョンを変える必要があります。コピーワーキングは相当慎重に行っています。

Q:

中国に設立された研究所の規模を教えてください。また、今後の戦略として、研究事業やノウハウ等は今後日本から現場(中国)に移転していく予定はありますか。

A:

中国の研究所はまだ30人規模です。日本からも優秀な研究員が2人ほど派遣されていますが、残りは現地の理工系の優秀な人を採用しています。今後、中国ならではの原材料・ソフト・民族意識の研究のために規模を拡大していく予定です。また技術移転は今後も進めていきますが、ただ特許の解放の仕方は慎重にやるつもりです。しかし、中国市場で欧米大手メーカーとの競争に勝ち、「2008年までに中国だけで1000億円」の目標を達成するためにも、かなりの部分は現地に移転していくことになると思われます。

Q:

現地生産品は現地で原材料を確保されるとのことですが、製品の高品質を維持するため、原材料の確保で気を付けていることは何ですか。

A:

原材料のうち材料についてですが、現在9割は現地で調達可能です。紙・プラスチック・金属については日本メーカーが中国に進出してきていますので、かなりのレベルのものが容易に調達できますし、コスト的にも有利な面もあります。そのような点で、材料の現地調達度はかなり高いです。もう1点の原料ですが、我々が最も重要視していることは、クレーム度(肌の疾患)につながらないよう純正度99.9%以上をめざすよう心がけています。中身の安全性・クレーム率・鋭敏性などを非常に重要視しています。そのため、コストが多少高くなっても、中国で安全性が確立していないものは日本から輸入したり、一旦日本で精製し直して再度中国へ輸出したりしているケースもありますので、現地調達度はまだ低いです。今後、合弁等で良い技術が浸透してくると予想されますので調達率も高くなると思われます。

Q:

「西欧のイメージ」を強調されましたが、最近では、アジア文化もファッション面などでも力をつけてきていますが、今後、西欧とアジアの関係をどのように商品開発に反映させていきますか。

A:

資生堂は調剤薬局としてスタートしましたが、当時から日本的・アジア的根源のなかに西洋の技術や香りをどううまく融合させていくか、というようにやってきました。「グローバル・商品をしてすべてを語らしめよ」が基本理念ですので、日本だけのオリジンを特化していくというような考えはありません。中国においてもアジアと西洋との一体化の中に活路を見出したブランドが数多く出てきています。これからは、西洋とアジアの対立ではなく、この2つの融合がより強く起こってくると思います。

Q:

最近、たとえば鉄鋼会社等の場合、中国事業の成功が株価に反映されていますが、資生堂の場合は、あまり反映されていないように思われるのですが、ご意見をお聞かせください。

A:

北京での最初の合弁の営業利益率は極めて高い状況にあります。一方、先日、上海や日本で、中国事業にもっと本腰を入れて取り組む、と今後の方針について発表した翌日の株価は10数円上がりましたが、その後はあまり変動はありません。市場は中国での事業はそう甘くないと見ているのでしょう。ただ、これからも宣言通り100年の大計でしっかり取り組んでいきますので、実績が出てくれば、必ず株価は上がると思います。上海の工場・販売会社も今年度はすでに利益ベースになっています。我が社のウエイトのうち、海外が占める割合は25%ですが、西欧大手メーカーの場合は全体の40%超が海外ですので、資生堂はまだまだグローバル化していません。現在早急に40%を目指しているところです。

Q:

現地採用の社員には優秀な人材が集まってきているのでしょうか。また、彼らのアイデンティティは資生堂、北京麗源公司のどちらにありますか。

A:

現在、事務1人の採用枠に200人、美容部員2人に600人の応募があり、そこから選別しますので、自然と優秀な人が残ります。定着率も9割を超えます。当初の給与・評価体系(年功序列+若干の能力給)を少しずつ能力給ベースに変えてきていますが、アジアで、欧米メーカーほどシビアな体系が受け入れられるかどうか、を考える必要があります。アイデンティティについては、北京麗源公司出身の役員6人は北京麗源公司がよりどころとなっていますが、その他の一般社員から北京麗源公司という言葉はほとんど出てきませんので、合弁会社そのものにアイデンティティがあると思われます。今後も中国に根をしっかりと張った会社になり中国社会に貢献をしていきたいと思います。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。